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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
8章 第二次侵攻戦
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第85話 時間稼ぎ






 ヴィクテムにシヴァを任せてアルゴンは仮拠点へと帰投した。


 そこで機体状況をスキャンした結果、アルゴンは左腕のオーバーホールを必要とするが他への被害は比較的少ない。

 ブレイズ・Rは大技(ブレイズブラスト)の反動でジェネレーター以外の大部分が焼き付いてしまった事が分かった。


「まさかブレイズ・Rの装甲が破壊されるとはねぇ……」


 一足先に到着したヘンリー博士は既にブレイズ・Rの状況確認を行っていた。

 実際には破損箇所から内部構造を観察していたのだが、この際そんな事はどうでも良いだろう。


「博士、どっちかの機体だけでも修理出来ないか?」

「そうだねぇ……一番現実的プランはアルゴンの修復だろう」


 全身がボロボロになっている機体と片腕だけが壊れている機体。

 そんな物は並べて比べれば、後者の修理を優先すべき事が簡単に分かるはずだ。


「けど仮にアルゴンの修理が完了したとしても、ドラゴニックシヴァを倒すにはパワーが足りないんじゃないか~い?」

「だよなぁ。武装も刺さるモンが無かったし……あぁ~、一体どうすりゃあ良いんだ!!」


 開発者とエンドユーザーは頭を抱える。

 そんな二人を救ったのは中間技術者、つまり整備士のタイトだった。


「……なぁ、アルゴンとブレイズ・Rを共食い修理させれば良いんじゃないか?」

「「どういう事だ?」」


 メビウスホライズンにデータをコンバートした際、ジンの操る機体で蓄積された戦闘データは全てアルが統合した。

 つまりソフトウェア的には問題無く、機体OSを書き換える用意もある既にしてある。


「まぁメビウスホライズンを調整するのに準備してたやつなんだけどな」

「いや、でもブレイズ・Rは装甲が硬すぎて加工出来なかったんだろ? なら工房でもねぇここでどうやるってんだ……」

「そうか。君はシヴァの作った亀裂を利用してブレイズ・Rを解体しようって言うんだね?」

「そういうことです!」

「いやどういう事だよ!!」

「「俺達はこれから作業に取り掛かる。お前は少し休んでてくれ」」

「おっ、おう……」


 そうは言われても、する事が無いジンは改修をただ見物し続けるしか無い。


 解体されたブレイズ・Rは損傷の少ない腕部パーツを組み上げて左腕となり、アルゴンに移植された。

 他にも一部に装甲やスラスターユニットがアルゴンの外装として固定され、ジェネレーターもアルゴンの背部に追加されている。

 変化した重心はオートバランサーの調整で対処を行った。


「えぇ何この……何?」

「いや~、ブレイズ・Rのパーツ想像以上に小さいから何とかなったよ。予備パーツは全滅したけどね!」

「スペックは推定二機分、これはパイロットの手腕以外で負ける気がしませんよぉ!!」

「扱いづらさは推定二倍以上だろうに……!!!」

「「ハッハッハッ!! いやぁ何の事だか!!!!」」


 機体のシルエットは極めて歪な形になっている。

 それでも何とか起動した機体は、戦場へとその足を向けた。






――――――――――――――――――――






 ヴィクテムはアルゴンを逃してシヴァと対峙する。

 それはある意味でエルの狙い通りな美味しい展開であった。


 シヴァは畳み掛けるように接近戦を仕掛ける。


『古きモノは新たなモノに淘汰され消滅するが、その理由を知ってるかい?』

「……それは古くても“優れている”から淘汰されずに生き残っているんだ」


 それはかつてフォルティス自身がエルに話した言葉である。

 斬り合いの最中にも精神攻撃を狙われるのは厄介だが、それも硬い決意があれば意味は無い。


「俺は優れているモノを残す為に戦う。だがそれは優れないモノの為に戦わない訳じゃない!」

『理想論だね』

「理想の何が悪い!! 理想を追い求めたからこそ、誰もが今ここに居るんだ!!」


 ヴィクテムは左手で素早く剣を噛み粒子を飛ばす。

 飛ばされた斬撃はレーザーシールドを突き破る事は出来るが、所詮はその程度でしか無い。

 装甲を突破する事は出来ずシールドも即座に再展開されて終わる。


 その事に苛立ちを感じつつあるフォルティスは、一気に肉薄して殴りかかった。


『悪いね!! キミ達が今ここに居るようにボクが居る、それも理想を追い求めた結果だろう!!!』

「貴様さえ暴走しなければ!!」

『人間が愚かでなければ!!!!』


 シヴァはヴィクテムを蹴り上げる。

 単純な力勝負では分が悪かったのだ。


『あんな古代兵器も持ち出さずに済んだと言うのに!!!!!』

「ぐぅっ!!」


 蹴り落とされたヴィクテムは地面を大きくへこませる。

 辛うじて剣を盾にする事で防御したが、殺し切れない勢いがコックピットを襲う。

 それでも機体が崩壊していないのは持ち前の耐久力があるからこそだろう。


「ここは……っ」


 ヴィクテムが落ちたのは第一次侵攻でアルゴンと対峙した場所。

 元々出来ていたクレーターの壁へと寄りかかり身体を支える。


 シルフ総司令はそんな相手に通信を開いた。


『おい聞こえるか! 今救援部隊を送る、だからそれまで――』

「俺に構うな!!」

『しかし……』

「良いんだ。俺はまだやれる!」


 彼は自身の想像以上に戦えた。

 時間も十分に稼げただろう。

 アルゴンの戦線復帰も間近に迫っているはず。


 だからあと少し。

 ほんの少しの時間を稼ぐために、ヴィクテムは立ち上がる。


『……分かった』


 シルフ総司令もその言葉に甘えるしか無い事は分かっている。

 だがボロボロになったコックピットに必死で見ないふりをし、通信を終了させた。


「ふっ、あの泣き虫王子様が立派になったと思ったが……騙されやすいのは相変わらずだな」


 剥がれ落ちたいくつかの装甲は土煙を上げて地面に落ちている。

 コックピットでもアラートが鳴り止まず、機体は停止寸前だ。

 そんな状態が大丈夫な訳が無い。


 空を舞うシヴァはヴィクテムを見下している。

 それを見上げる目はまだ何も諦めていない。


「なぁ老兵(ヴィクテム)。俺もお前も、まだ出来る事があるだろう……?」


 ブースターは残り数回しか使えないであろうレベルでダメージを受けている。

 それでもジェネレーターは呼応するようにして僅かに出力を上げた。


 引きちぎられた配線からは漏れ出したエネルギーが燃え上がり機体を彩る。


「これは先人の撒いた種であり、俺の残した罪だ。なら――」


 時折地面を擦りながら、そしてブースターを溶かしながらもヴィクテムは加速する。


「――俺が償うしか無いッ!!」


 両手に構えた剣は一切のブレを見せず、一気に飛び上がりシヴァへと近づく。

 そそて確実に命中する距離で大剣を振るった。


『そういえば、キミは粒子雲下での戦闘をした事が無かったね』

「外しただと……!?」


 グルム見る世界とリンカーの見る世界は違う。

 そのギャップに対応しきれなかったフォルティスは、目測を誤ると言う初歩的なミスを犯した。


『不便な存在だよね、人間ってのはさ!!』

「くっ!」


 シヴァは再びスラスターで慣性を乗せての踵落としを行う。

 左腕で防御するが勢いは殺しきれず、二度目ともなれば被害も大きくなっている。


「粒子雲がここまで厄介とはな……」


 機体の損傷は更に酷くなった。

 だが時間は確実に経過している。






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