第81話 ヴィクテムとフォルティス
列車を全て両断したルクシオンは対粒子シールドの内側に潜り込む。
既に戦闘を開始していたヴィクテムの隣に降り立ち、互いの背中をカバーする。
「……やるぞ、影郎!」
「……勿論だ、フォルティス!!」
ルクシオンは高く飛び上がり、放たれたミサイルと銃弾を最小限のスラスター噴射で回避する。
それと同時に付けられた慣性を利用して右足を大きく振り回すと、敵機に足を巻き付けるようにしてブレードを展開。
着地する寸前に左足のブースターを全開にして上半身と下半身を真っ二つに両断した。
対するヴィクテムは堅実に攻撃を耐え凌ぎチャンスを待つ。
飛びかかってくるような相手は斬り裂き、足元から絡みに来る相手は踏み潰し蹴り飛ばす。
完全に撃破する数は少ないが、ルクシオンと共に次々と敵を集め一山を作ると左手を構える。
「アセンションッ!!」
竜の口腔から放たれた光は敵の山を吹き飛ばす。
二度目に空中へと放ち敵航空機も撃墜するが、燃費が悪い上に機体特性的に対空戦はあまり得意では無い。
フォルティスは使用する手段を変えた。
「ドラゴンブレス!」
「フォルティス、そっちに蹴り落とすぞ」
「良いだろう」
小型機であれば高機動型のルクシオンが捕まえられる。
処理はヴィクテムに任せる事で大多数は撃破出来た。
だが地上格闘戦に特化した二機では大型輸送機などを対処しきれず、少なくない数の打ち漏らしが発生している。
「不味いな……」
既に取り逃がした輸送機はグルムを放出し、包囲網を破壊しようとしている。
ルナクスはその状況を見逃す事が出来ない。
「フォルティス、僕は援護に――」
「――そーらよッ!」
戦闘から離脱しようとしたルクシオンの前に一筋の光が差し込んだ。
「この炎、いやこの剣は……ジンか! 貴様何故ここに来た、作戦を守れ!!」
「ア゛ァ~!?」
ルクシオンは自身より高い高度へと目を向ける。
空を自由自在に飛び回る青い機体は、近場の敵航空機へと剣を突き刺さすとルクシオンの隣に勢い良く着地した。
「お前らがだらしないから手助けしてやるってんだぜ? ちったぁ感謝しろよ」
「流石にその言い分はどうかと思いますけど……」
「まぁ事実よね」
続いてオキシゲインも着地するが、こちらは土埃すら立てない程に静かな着地である。
空中にはBCユニットに乗ったレジーナも姿を表していた。
「飛ばれちゃ手の出しようが無いだろう?」
「だから、僕たちにもお手伝いさせて下さい!」
「それはそうだが……まぁ良い、無傷で敵を殲滅出来れば文句は言うまい」
「そう来なくっちゃな!!」
ルナクスも無茶苦茶な事を言うようになってしまった。
だがその手腕があるだけ余計に質が悪いと言える。
「ブレイズ・Rとレジーナは航空戦力の撃破を頼む。僕とヴィクテムは引き続き地上戦力の対処、オキシゲインは後方から支援してくれ」
「「「了解!!」」」
ESFの3機は素早くルクシオンから離れる。
彼らにはそれぞれの得意距離があるからだ。
特にブレイズ・RとBCユニットの関わりは薄くなる傾向にあるが、スナイパー機であるオキシゲインだけは違った。
「フォルティスさん!」
「む」
オキシゲインからの射線がヴィクテムに被っている。
警告を出した時には既にトリガーを引いてしまっていたが、フォルティスは殺気を感じただけで回避した。
そうすれば弾丸は狙い通りに敵機へと命中出来る。
「さ、流石ですね……」
「お前の腕も中々だ。誤射は気にせず援護してくれ」
「はい! ……え?」
フォルティスにしてみれば、ユウト程に正確な射撃であれば一周回って回避しやすい。
暗に示したその意図は行動で体現し、ヴィクテムが背後から放つ援護射撃を全て通し上手く活用した。
だがユウトの使える手段は狙撃だけでは無い。
戦況を俯瞰出来る彼は直感的に状況の悪さを感じていた。
「上空はクレナさんとジンさんが相手をしてるから良いけど……ツグミ、地上の殲滅率はどうなってる?」
「想定よりは若干遅れてるかも!」
対集団戦を得意としているアルゴンは使用出来ない。
BCユニットからも片手間の砲撃が降り注いでいるがメインは対空戦闘であり、残りの3機も対少数戦闘に有利な性能をしている。
「なら……ルナクスさんとフォルティスさんに敵を誘導するよう連絡して!」
「了解っ!!」
オキシゲインは狙撃を中断して高台に移動する。
平野部で戦うルクシオンとヴィクテムも素早く動きを変え、無数の敵機を蹴り飛ばし一ヶ所に固めた。
「ブーストアンカーセット完了、エネルギーチャージ完了、照準合わせ完了……ツグミ!」
「はいはーい!」
ユウトはサブモニターを操作して周囲に射撃警告を発令する。
射線上に居たルクシオンとヴィクテムは弾かれるようにして飛び退き、オキシゲインは防御フィールドに包まれた。
「射線クリア!」
「ドラゴニック、バスターッ!!」
トリガーを引くと同時に背部ブースターが起動する。
竜の頭のように変形した銃口からは膨大な量のエネルギーが溢れ出し、敵機の山を貪り食う。
「防御フィールド解除、エネルギー転化開始……姿勢制御は任せたよ!」
「はいはーいっ!!」
機体を包み込んでいた粒子がエネルギーの濁流へと混ざり合い、巨大な竜を象ってうねり始めた。
ルクシオンとヴィクテムは退避後もそのうねりに敵機を投入し続ける。
敵機の爆発が収まる頃にはオキシゲインも着地し、各部から排熱を行っていた。
「照射終了、再チャージまで30秒!」
「了解した。時間はこちらで稼ごう」
「あぁ。……だがアレは良い技だな、真似させて貰うとしよう」
「えっ、出来るんですか!?」
「完全一致は無理だが、真似程度ならな」
フォルティスは機体の左手を竜の口へと変形させる。
同時にドラゴニックバスターと引けを取らない量の粒子をまとめ上げ、ヴィクテムの周囲に配置して剣を構えた。
その中の一体は竜の形になり機体に寄り添うような動きを見せる。
「お前も戦うと言うのか……」
声は聞こえない。
だが頷くような動作を見せ、フォルティスにその意思を示した。
「そうか。ならば俺に力を貸せ、ヴィクテムッ!」
剣の腹から出現したホログラム照準で敵に狙いを定める。
粒子の竜は先行して敵へと食らいつき、ヴィクテムは残った粒子とホログラムを絡め取るように剣を回し両手で構える。
「ドラゴファング!!」
鋭い横薙ぎの一撃は空気を斬り裂き、粒子を勢い良く放つ。
直線上に存在した物は全て両断された。
「フォルティス! 大技を使う時は警告を飛ばしてくれ!!」
「あぁ、それはすまない。一人で戦っていた時の癖は中々抜けないな……」
今回は状況を注視していたユウトと千景のおかげで何とかなった。
反省したフォルティスは左手の竜に剣を掴み噛みつかせ、残された粒子を強制圧縮する。
切れ味は叩き斬っていた状態から滑るように斬る状態に変化し次々とスクラップを作り出した。
「あの技、最終的な効率は悪くないが粒子消費量が多すぎるな……」
「フォルティス、後ろ!!」
「む?」
一段落して息をついているヴィクテムを後ろから狙う影がある。
クレナの警告を受けたヴィクテムは剣を地面に突き刺しての回し蹴りを行い、蹴り飛ばされたバロンはBCユニットに捕まれ大型アームが握り潰した。
「凄まじい出力だな……」
「ライズリアライザー12基分の力は伊達じゃないのよ!」
「ならば、その力を少し借りるとしよう」
BCユニットの背中に相乗りしたヴィクテムは対空戦闘に参加している。
強制圧縮した粒子を左手で引き剥がして斬撃に乗せつつ、ドラゴンブレスでも何機かを撃墜した。
だが剣のコーティングは長く続かず、物の数分で離散している。
「少し反動が強い技を使う。機体を右側に傾けて旋回させてくれ」
「えっ、アンタもしかして……」
「アセンションッ!!」
「このバカっ!」
それは竜の口腔から放たれる膨大な粒子の濁流。
左腕から放たれるようになった今は以前よりも自由度が高い反面、機体が小型になり踏ん張りが効かなくなっている。
反動はヴィクテムの脚を通じてBCユニットへ向かい、高度を大きく下げる結果となった。
「無茶してくれるじゃない……っ!!」
姿勢制御スラスターをフル稼働させて墜落は回避した。
「中々やるな。だったら次はもう少し出力を上げるとしよう!」
「やめなさい。いや、本当に危ないから止めてって!」
「遠慮は無用!!」
「遠慮じゃなーい!!!」
「……これじゃ攻撃に回す余力が無いよね」
BCユニットはすり鉢状に強引な飛行をするのが限界だった。
だが背中に乗るヴィクテムは周辺の航空機を殲滅しており、戦果はそのリスクに見合う物だろう。




