第43話 緊急ミッション
アルゴンの修理が完了してから数日後、ログインしたジンがユニオンルームでのんびりしていた頃。
全リンカーにある通知が飛ばされた。
内容は“メンディ鉱山という拠点がグルムに襲撃されている”という物である。
「何だ……緊急連絡?」
その拠点はクァドランキューブやクァドラン粒子の原料である、イニティウム鉱石を産出している重要拠点だ。
重要であるが故にこうして緊急クエストが発注されており、HITSへ受諾の旨を伝えればユニオン単位での参戦も出来るらしい。
「ジン!」
「コレ、どうするよ?」
「行くしか無いでしょう」
「だよな!」
「ユウトとタイトへの連絡は私からやっておくわ」
「頼んだぜ!!」
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ミッション参加者の機体は全て輸送機に詰め込まれ、メビウスを離れた。
決して数は多くないが、即座に集まった戦力としては申し分ない数である。
『緊急連絡に応じてくれたユニオンの諸君には感謝する』
今回の作戦で指揮を執るのはシルフ総司令官である。
普段表に出ない彼の存在が、ミッションの重要度を際立たせていた。
『今回の目標は緊急連絡でも書いていた通り、インディ鉱山の防衛だ』
既に先発隊としてファントム・エクスのエクリプスが向かった他、一人のリンカーが現地で戦闘を行っている。
余程の事が無ければ負けないと予想してはいるが、勝利を確実な物とする為の増援がジン達のようだ。
「かの拠点はメビウスにとって、そして君達リンカーとCAにとっても重要な場所だ。……作戦の成功と、君達の無事を祈る」
メビウスからの通信は終了し、代わりにユニオン回線が開かれる。
「で、どうするの?」
幸いな事に、ESFは全員が揃った。
ユニオンの所属人数が少ないデメリットもあるが、少ないが故に合流しやすく確実な連携が取りやすいというメリットも存在する。
「いつも通りの遊撃で良いだろ」
「了解」
「了解です」
作戦会議を終えた彼らが輸送機に揺られて数分。
インディ鉱山上空には数機の輸送機が待機し、機体を降下させていた。
「アルゴン、出撃するッ!!」
アウルムアルクスを背に、ルナブレードを持った白い機体が降下する。
それこそがジンの乗り込むアルゴンであり、視線の先では既に戦闘が起こっていた。
「おーい! 大丈夫かー!!」
「援軍でゴザルか!?」
「おう」
「かたじけないゼヨ……!」
戦況は膠着状態となっているそうだ。
エクリプスだけでは防衛に手一杯であり、彼らの中でも特に大きな力を持つルナクスは運の悪く参戦出来ていない。
防衛任務で来ていたリンカーも敵戦線を崩そうと奮闘しているが、火力不足故にそれも成されていないというのが現状のようだ。
「何度かは試してるみたいでゴザルが……」
「帰ってきたゼヨ!」
戻って来たのは金色の装甲にボロボロのマントを羽織った機体、名前は“ソル・フレア”と言うらしい。
エクリプスの到着によって戦線を維持出来るようになり、ようやく補給を受ける余裕が生まれたようだ。
「すまん……本当にすまんッ!!」
「良いんゼヨ、ヘリオス殿が遊撃に出てくれるだけで凄く助かってるゼヨ」
「それに援軍も来てくれたから、形勢逆転の時はすぐそこでゴザル!!」
「お二人さん、ほんまありがとう……!」
コックピットの中で顔を俯かせていたヘリオスはようやく前を見る。
そこに映る機体は彼女の予想より一機多い。
「なっ……なな、ななななぁ!!」
「ん?」
「なんでアンタがここに居るんやぁぁぁぁぁああ!!!!」
明らかな面倒事の気配。
ジンは即座に逃げようとしたが呼び止められてしまい、少しコックピットから降りて話をする事になった。
「良くもノコノコとウチの前に立てたな、このチート野郎が……!!」
「あっそ」
「「「えっ?」」」
話が出来る距離にまで近づいたのなら手が出せる。
ジンは何の躊躇いも無くヘリオスをビンタした。
「打ったな!? 親父にも打たれた事あらへんのに!!」
「打たれた事がねぇからそんなクソガキに成長するんだよ。無駄に叩くのはどうかと思うが、多少の軌道修正に暴力は必要だろ……ったく」
何の準備も無くビンタを受けたヘリオスは尻もちを付いてしまう。
ジンは何度か似たような絡みをされており、それを思い出してムカついたらしく顔から怒りが滲み出ている。
「弱者でも強者でも、どんな立場であってもその人物に適用されるルールは守る為にある。分かるか?」
「……」
ヘリオスは立ち上がる事が出来ない程に圧倒され、無言で目の前の青年を見続ける。
一方のジンも彼女に語り続けた。
「誰かがそれを破って利益を得ると、守っていた人達もルールを破るようになる。だから処罰があるんだ」
つまりそれを受けていないジンは完全なシロ、もしくはクロを完璧に隠したシロということである。
「でも結局、皆記録を求めすぎなんだ。ゲームはゲームらしく、全力で楽しめば良い。……例えそれが現実でもな」
ジンはヘリオスに昔の自分を重ね、手を差し出す。
ヘリオスも本当は分かっていたのかもしれないが、心がそれを受け入れられなかったのだ。
「さっきからゴチャゴチャと……うるさいわッ!!」
そして今の彼女に、それを掴み受け入れる程の余裕は無い。
「ウチはルナクスの強さに……力に憧れたから、あの弓が欲しかったんや。なのに……なのにぃぃぃぃぃぃぃいいい!!! うわぁぁぁぁあああああああん!!!!!!」
ヘリオスは泣き叫び、どこかへと走って行った。
取り残された機体に宿る彼女のバディはESFに通信回線を開く。
『お騒がせして申し訳ない……。普段はあんな子では無いのだがな』
「まぁたまにはこんな事もあるだろ。気にすんな」
『そう言って頂けると助かる』
「……憧れに手が届きそうで届かない、それほど悲しい事は無いわ」
ジンが自身を重ねていたように、クレナもまたヘリオスに自分自身の過去を重ねていた……のかもしれない。
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少しの足止めを食らったジン達だが、すぐに鉱山から麓の戦線へと向かった。
既に増援によって戦線がかなり押し戻されているものの、グルム側の増援も多い。
それらはカテゴリー1と2の機体がほとんどであり、クルス系は特に数が多く存在している。
単純な構造故に生産性と汎用性が高い事が起因なのだろう。
「さて……どう動いたものかね」
メビウス陣営は高所からの飽和射撃を行い、グルムはただひたすらに数でそれを乗り切ろうとしている。
互いに単純な戦略を取っているが、単純が故に効果的であり侮る事は出来ないだろう。
「恐らくですが、我々はヘリオスの後釜に収まるのが丁度良いかと」
「遊撃ね。オッケー、射線とかの管理は任せるぞ?」
「了解です。頑張って避けて下さいね」
「それ管理する気無いだろ絶対!?」
アルゴンは草木の生えない、土と岩だけの斜面を滑空する。
すれ違いざまに黄色い刃を振るえば、周囲のグルムが一斉に切り刻まれた。
ジンの目は少し先で孤立する味方機を捉えており、周囲のグルムを殲滅すると近くに着地した。
「大丈夫か?」
「助かった! 出来ればそのまま遊撃を頼みたいが、出来るか?」
「合点」
再び飛び上がったジンは高速で飛び回り、敵を切り刻む。
これだけ派手に動けば敵にマークもされるが、ジンであれば問題無く迎撃出来るだろう。
「さぁさぁ!! もっと来いやァ!!」




