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永遠対立関係  作者: P-Rin.
10章 牢獄
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10-8 脱獄

 「アルルが下にいるのか?!」

 「ええ。ハシゴが壊れちゃってね。レンにしかアルルの心は動かせない!」


  レンが見下ろした時にはカーターが近くまで歩いてきていた。アルルには手を伸ばせば届くかもしれない。そう思ったレンはアルルに向かって手を差し出した。


 「アルル!!」

 「……レン・グレイ……」

 「掴まって!一緒にここから出よう!」

 「駄目……だって、私には……」

 「アルル思い出して!俺だよ!レンだ!俺とアルルは同じチームメンバーじゃないか!」

 「……ううっ」

 「再会する約束をしたのは俺だ!レンだ!カーターじゃない!」


  酷い頭痛がアルルを襲う。何かもやもやとしていたものが、少しずつ晴れていくような、そんな気がした。

アルルはゆっくり手を伸ばした。しかし後ろからカーターが叫んだ。


 「アルル!俺のことを置いていくのかよ!レン・グレイは君の殺すべき相手だろう?!」


  アルルは手を引っ込めようとしたが、そこでようやく自分に手を伸ばすレンとしっかり目が合った。偽られていた記憶が元に戻っていく。

  要塞で手を伸ばして引っ張ってくれた人と重なる。


 「もう一人になんかさせない、約束だ」


アルルの瞳に自然と涙が溢れる。しかし、アルルの頭にはカーターと過ごした記憶までもしっかり残っていた。その時、アルルはやはり自分はフェアリーの人間なのだと再認識した。ナターシャはなんてずるく、罪な天使なのだろう、と思っていた。それは自分も同じだった。

どうか、私を許して欲しい。でもきっと、貴方は私を許してくれないだろう。貴方の幸せを願うことを、貴方は許してくれないだろう。

私は結局、貴方を選ぶことが出来ない。貴方の全てを知ったとしても、私の気持ちは変わらなかった。だからせめて、私のことを嫌いになって欲しい。

アルルは振り返って叫んだ。涙を我慢することができなかった。


「……私は貴方なんか、知らない」


カーターがぽかんと口を開けている。何で、と彼は言っている気がした。その表情が悲しみに染まっていく。

  アルルがレンの手を握った時、レンは空いている方の手で魔術を発動させた。カーターが最後の足掻きで止めようと毒術を発射したが、少しレンの方が早かった。闇術はロープ状になりアルルの腕にぐるぐると巻かれると、そのままアルルの体はひょいと持ち上がった。毒術がロープ状の闇術に当たりロープが切れたが、問題は無かった。

  また魔術をかけるとアルルの体はふわふわと速度を落として地面へと落下した。既にアルルはボロボロと涙を流していた。


 「私、レンに酷いことした。許されないくらい酷いこと。ごめんなさい、レン」

 「……許すよ、アルルだから。思い出してくれて本当に良かった……でも今はここから脱出することが先だ」

 「ええ。……行きましょう」


  その頃ツバサ達は悪魔達と戦いを繰り広げていた。悪魔と魔術士の戦いを楽しそうに眺めていたのはアルトゥールだった。ツバサはアルトゥールのことを見てつぶやいた。


 「あいつぶっ飛ばしたい。手下に戦わせるだけ戦わせやがって」

 「ツバサ、キリがないわ。融合魔術とかできない?」


  するとカーティスがにやりとしてツバサに手で合図した。ツバサはうなずくとカーティスの隣に立った。親子は意識を集中させて魔術を発動した。

  ちょうどレンがアルルを連れて外へ出た時だった。ベティもリッチェルも黙って一部始終を眺めつつ、ワープの扉を呼び出す作業にあたった。

  ツバサとカーティスの黒術が重なり合って一つの大きなエネルギー源となった。


 「悲劇乃戦(トラジディープグナ)!!」


  2人から発射されたいくつもの黒術は方方に広がり、やがてそれらは一つの真っ黒い怪物となった。怪物に飲み込まれ、どんどん悪魔達は侵食されていった。

  アルトゥールの元に一気に全ての怪物が襲いかかった。アルトゥールは鼻で笑い、一言つぶやいた。


 「消えろ」


  一瞬で怪物が崩れ落ちた。アルトゥールは右手を振りかざした。


 「呪われた息子よ」


  何かが猛スピードで飛んできた。それはあっという間の出来事でバリアを張る暇すらも与えてはくれなかった。いきなりぶつかってきたカーティスの体にツバサは耐えきれずそのまま地面に倒れた。手に生温かいものを感じて、ツバサが手のひらを見ると赤く染まっていた。


 「……っ!!」

 「……うっ……」

 「父さん」


  カーティスの背中には太い矢のようなものが突き刺さっていた。その矢はみるみるうちに消えていく。それと同時にカーティスは苦しそうに声を上げた。ツバサの足元に広がっていく血溜まり。心拍数が速くなり、ツバサは慌てて治癒魔術を父親の傷口にかけた。


 「何でだよ!!何で治癒魔術が効かねえんだよ!効けよ!!何で!」

 「……」


  カーティスは肩で息をしながらツバサの腕を掴み、首を振った。


 「ふざけんな!まだ会ったばかりだぞ!こんなすぐに……俺が許さない!そんなの!」

 「……ツバサ」

 「俺が……俺が……仇を打ってやる」


  ツバサの目が銀色になり、魔術が発動された。さっきまでの黒術とは比べようもないくらいの強い魔力だった。ツバサの頭に角が生え、片腕の皮膚が硬くなり鋭い鉤爪が生える。ツバサはアルトゥールに向かって突進した。


 「君の悪魔化は初めて見たよ」


  そう言うアルトゥールの頬がツバサの鉤爪によって切れ、血が流れ出した。アルトゥールは傷に気がつくと満足げに笑った。


 「君随分強いんだね。少し関心した。鍛えればもうちょっと強くなれるんじゃないか?人間の手足を一度に全部切り落とせるほど」


  その一言でツバサの脳内にある記憶が過ぎった。地球で女魔術士と戦った時、片腕を切り落とした事があった。その時ドクンと心臓が脈打った。


 「そろそろ危ないんじゃないかい」


  アルトゥールは膝でツバサの腹を殴った。体はよろめいたが、すぐにツバサは体勢を整えた。


 「君じゃ私は倒せない」


  そう言った途端、片足が深く切れた。アルトゥールは今度は思い切りツバサの体を蹴った。ツバサはカーティスが倒れている位置にまで吹っ飛んだ。


 「なかなかやるじゃないか、ツバサ。お前も父親と同じだ。サングスターの仲間は誰一人居ない」


  ツバサの体は元に戻っていた。ゆっくり起き上がりながらアルトゥールに向かって言った。


 「そんなもの要らない。あんたが俺の祖先だってこと、俺は一生恨むよ」

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