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「おい、さっさと来い!グズ!」
「す、すみません!勇者様」
僕は背中の荷物を背負い直し、慌てて駆け出した。前を歩くのは勇者ジャスティン様。
王国が認めた勇者パーティの一つを率いる英雄だ。魔王討伐を目指す複数の勇者パーティの中でも、最も有力とまで言われている。その後ろには聖女様と魔法使い様。そして、最後尾を歩く盗賊兼雑用係の僕、ルード。
勇者様も聖女様も魔法使い様も全員優秀な方だ。けれど、僕は凡人で戦闘ではいつも足を引っ張てしまう。
だから、少しでも役に立つために身の回りの雑用や様々な事務手続きなど任されたことは全てこなしてきた。
どれだけ馬鹿にされても、雑に扱われても必死に頑張った。
でも、それももう少しで終わる。
もうすぐで魔王を倒せる。
そうすれば僕の夢も叶うんだ……
今日最後の魔王軍幹部を倒した。あとは魔王だけだ。
夕焼けが王都の城壁を赤く照らす中、僕は希望を胸に勇者様たちの後ろを必死に追いかけた。
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「お前、追放な」
「……えっ」
勇者パーティに与えられた専用の執務室。その椅子に深く腰かけた勇者様はあまりにも軽く、残酷な宣言をした。
「魔王倒したときにお前みたいなごみが混じってるなんて恥だからな。とっとと消えろ」
僕は頭が真っ白になって
動けなかった。
「荷物も全部置いていけよ。お前みたいな役立たずにくれてやるもんなんかねえからな!はは!」
勇者様の笑い声が響く。つられるように、聖女様と魔法使い様も笑う。
その声を聞いてだんだんと意識が戻ってくる。
納得できるわけがなかった。
……あと、少しだったのに。こんな、こんなところで。
僕はとにかく何か言おうと 口を開いた。
しかし、それを遮るように勇者様が僕を鋭く睨み付けた。
「ーっ!」
「もし、逆らうんなら半殺しにしてサインさせるぞ」
勇者様の右手に光が集まる。冗談ではない。この人はやる。
力勝負で平凡な僕なんかが勇者さまに勝てるはずない。魔王を討伐するまで残っていたかった。
でも、諦めるしかなかった。
最後に僕は勇気を振り絞って一つだけ頼み込んだ。
……これだけはしておかないと。
「い、一日だけください。僕が管理しているパーティの口座や書類を整理します。それが終わればすぐに出ていきますので、どうか時間をください」
「最後まで俺たちに尽くしたいなんて、物分かりがいいじゃねえか!」
勇者様は機嫌良さそうに笑った。
「そうだな。ご褒美に少しくらい金を恵んでやってもいいぞ。それで惨めに生活してろよ。はっはっはっ!」
僕は口を必死につぐんで、震える手を握りしめて部屋を出た。外まで、勇者様たちの笑い声が聞こえてくる。
笑い声から逃げるように歩いた。
歩いて。歩いて。歩いて。気付けば王都の外れの林まで来ていた。
周りを見回す。
誰もいない。
念のためもう一度見回す。
やっぱり誰もいない。
「……」
震える手を握りしめて俺は叫んだ――
「ふっざけんなぁーーーーー!!!!」
鳥が一斉に飛び立った。
そんなもんに構ってられねえ。
俺は近くの木を思い切り蹴りつける。
足がしびれる。それにも構わず、何度も蹴る。
「あのくそ勇者ぁ!!!」
「十年だぞ!」
「十年我慢したんだぞ!」
「何回暗殺してやろうかと思ったか!」
「毎日毎日こき使いやがって!」
「あと少しだったのに!」
「王都の屋敷が!」
「不労所得が!」
「美女に囲まれた悠々自適な生活がぁぁぁ!!」
静かな森に俺の魂の叫びがこだました。
暴れまわって息が切れる。
――いや、こうしちゃいられねえ!
夢と希望に満ちた第一プランは崩れたが、まだ第二プランが残っている!!
俺は天を仰いで考え事を始めた。
くっくっく……。俺様をコケにしたあのクソどもに目にもの見せてくれるわ!
まずは、役所だ!!
◇◇◇◇
翌朝、勇者は騒がしい足音で目を覚ました。
「おい、ジャスティン!大変だ!俺たちの装備がなくなってる」
勇者は二日酔いの頭を押さえながら、慌てる魔法使いを睨む。
「おい、うるせえぞ。朝からなんだよ」
聖女も部屋に入ってくる。
「皆様、手紙が置いてありましたわ!ルードからです!」
勇者は手紙を奪うと雑に開けた。魔法使いと聖女も横からのぞき込む。
『拝啓
勇者様、聖女様、魔法使い様。
長らくお世話になりました。突然の追放という形でお別れすることになったのはまことに残念ではありますが、心機一転、新しい人生を歩んでいこうと思いますのでどうかご心配なく。つきましては、退職金についてですが昨日、勇者様から餞別をもらえると言質をいただきましたので、有難くこのパーティの全財産を頂いていきます。手続きに関しては全てすませておりますのでご安心ください。
それでは、皆様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。活躍できるもんならな!!
うきゃきゃきゃ!!
敬具
ルード』
『P.S.
酔った状態でサインはしない方がいいですよ。』
「……」
誰も言葉を発しない。しかし、怒りがふつふつと立ち上っていた。
勇者は手紙を破り捨てた。
「あいつを探せぇー!!」




