孤児院長のカミングアウト(1)
「預言の刻印板には預言の聖女の記述もあるがそれ以外にもいくつか記述がある。それを元に君の能力の可能性を見出してみようと思う」
「い、いやいや、そんな預言の刻印板ってこの国で大事なものなんですよね?! それをどうやって手に入れるんですか!」
「私の本職は『預言の刻印板』の研究者。だから本物ではないが預言の刻印板を書き写したものやそれにまつわる資料も多数持っている。問題ない」
「は? はあああああああああ?!!!!!」
孤児院長の唐突なカミングアウトであった。
「『預言の刻印板』⋯⋯の研究者?」
「そうだ。故にそれにまつわる資料はほぼ網羅している。だから心配せずともすぐに⋯⋯」
「ちょ⋯⋯タンマタンマ!?」
「タンマ?」
「ちょっと待ってください! 私が気にしてるのはそこではありません。孤児院長が預言の刻印板の研究者だなんて初めて聞きました!」
「ん? 言ってなかったか?」
「言ってません!」
すると孤児院長がおもむろにマイルスさんに顔を向けた。
「ああ、言ってないな」
どうやらマイルスさんに「どうなんだ?」と聞いてた様子。
マイルスさんが返答すると今度はクイッと顎を動かした。すると、
「はぁぁ、それくらい自分で言いなよ⋯⋯ったく。えっとねアナスタシア、実は孤児院長⋯⋯クロは『預言の刻印板』や『預言の聖女』の研究において第一人者でね、それで⋯⋯」
どうやら孤児院長の『顎ゼスチャー』は「マイルス、君から説明しろ」というものだった様子。恐らく自分のことを語るのが嫌なのだろう。そしてそれを指示されたマイルスさんも嫌そうな顔をしている。
それにしてもこうして孤児院長とマイルスさんのやり取りを見ていると、俺が思っていた貴族の主従関係とは少し違うように感じる。なんかもっと主従がはっきりしているくらいなイメージだったのだが。
何となくだけど、たぶん孤児院長がマイルスさんとはそういう関係を望まなかったんじゃないかなって感じる⋯⋯⋯⋯知らんけど。
それにしても孤児院長が『預言の聖女』や『預言の刻印板』⋯⋯? に対してもその研究の第一人者だなんて。
ん? 第一人者?
「ああ、道理で! だから孤児院長は私のことを最初から《《そういう目》》で見てたんですね!」
「《《言》》 《《い》》 《《か》》 《《た》》⋯⋯!」
「痛い、痛い、痛いぃぃ!!!!」
いつもの⋯⋯いやいつもよりも当社比1.5倍の『ホッペむにむに』をされた。
余程今の言い方が気に障ったようだ。ていうか痛いってばぁ!
「まぁそういうことだ、アナスタシア。とりあえず私の情報を更新しておきなさい」
「いや雑ぅ!」
「問題ない。今はそんなことより君の能力確認の話だ」
そういって孤児院長が続きを話し始める。
今のが逆だったら、絶対孤児院長くどくど10分は説教してただろうな。
この棚上げ孤児院長めっ!
「私は自宅に研究室を構えている。なので明日は朝からそこに行き資料を元に君の能力をいろいろ確認する。これは絶対事項だ」
「そ、それは、いいですけど、でも《《自宅》》ってそれって⋯⋯」
「うん。フィアライト侯爵家になるね」
マイルスがニコニコしながら俺が予想した答えを先読みで答える。
何だろう、マイルスさんも何だか少し楽しそうだ⋯⋯解せぬ!
「そういうわけで明日また朝早く出るのでそのつもりでいるように」
「わ、わかりました」
「うむ。では次は君がいなくなった後のジュリアン第二王子についての話をしよう」
「⋯⋯(ごくり)」
冒頭の孤児院長の話はあくまで俺の話であって、俺にとってはここからが本題。
俺は気持ちを引き締め孤児院長の言葉に耳を傾けた。




