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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第四章 御剣仁と妖怪喫茶店

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051番合わせ




 番合わせ?

 一体、なんだそれは。


 それに、スーツの男が懐から出して、テーブルの上に置いた数十枚のカードは……………トランプだよな?

 パッと見、絵柄はトランプに似てるのだが、トランプではない?


 「これは…妖札」


 楓がテーブルに置かれたトランプのような物を見て、妖札と言う。

 トランプでは無いのか。


 「楓…妖札って?」

 「表と裏があって、表には数字と模様が描いてある。数字は1から13の札が4つずつ。さらに札のそれぞれには、4種類の模様がある。計52枚の札に、2枚の化け札っていう特殊な札を追加して、54枚の札で構成されているのが、妖札」

 「あ、うん。完全にトランプだな」

 「まぁ…トランプね」


 なるほど、妖札と言うのは、妖怪版のトランプなのか。


 「それじゃあ、番合わせってのは?」

 「番合わせは、妖札の代表的な遊びの一つ。全ての札を裏にして、セットする。4種類の模様は関係なく、一人ずつ妖札の裏を二枚捲る。捲った表の数字が違ってたら、2枚とも同じ場所に裏にして置く。同じなら、その2枚を得られる。得られた札の数が多い方が勝ち。これが番合わせ」

 「あ、うん。完全に神経衰弱だな」

 「まぁ…神経衰弱ね」


 つまり、これからトランプの神経衰弱をやる訳ね。

 何と言うか、シンプルだな。


 神経衰弱は概ね、頭の良さと言うか、記憶力に直結する。


 「この番合わせに俺らが勝ったら、店を譲る。てめぇらが勝ったら、俺らは素直に引き下がる。どうだ?」


 店を掛けた勝負と言う訳か。


 だけど、冷静に考えてみたら、その勝負はこちら側にデメリットしかない勝負である。

 受ける価値があるとは思えない。


 「さあ、どうする?」

 「断るんじゃないだろうな?!」


 2人は頑なに神経衰弱で勝負を仕掛けようとする。

 よっぽど記憶力に自信があるのか。


 「店長、どうする?」


 家内が聞く。

 店長は少し悩む。


 「お受けいたしましょう」


 2人からの番合わせによる勝負を受け入れる。


 「ただし、こちらも条件があります」

 「はん?!」

 「こちらが勝ったら、もう2度と、この店を明け渡すと言った要求はしないでもらいたい」

 「ちっ!分かったよ!」


 こうして、喫茶店の明け渡しを掛けた神経衰弱…改め、番合わせの勝負が始まる。


 早速、妖札が何度も切られ、裏にされた状態でテーブルの上に並べられる。


 「3回勝負だ。先の2回勝った方が勝者だ」


 一回目の勝負は、店長と銀色の指輪を嵌めた男である。

 先行は店長。


 54枚の内、2枚を捲っていく。

 外れである。


 次は、銀色の指輪を嵌めた男の番。

 しかし、こちらも2枚とも外れである。


 店長の番に移る。

 また外れである。


 神経衰弱である限り、始めは外れの連続だろう。

 段々と、テーブルの上の札の数字が明らかになっていくのだ。


 それを、しっかりと記憶しているかどうかで勝敗が分かれる。


 はたして、一回戦目の結果は……。




 「俺の勝ちだ!」

 「うぐ!」


 銀色の指輪を嵌めた男の勝利だった。

 残念ながら、店長には優れた記憶力は無かった。


 「店長、記憶力低い」


 家内は呆れる。

 だが、相手の男も中々、秀でた記憶力を持っていた。


 とはいえ、こちらが負けてしまった。

 あと一回負けると、こちらの完全敗北である。


 ここで、前に出る者が現れる。


 「2回目は私にやらせて」


 ここで、2回戦目は楓が名乗り出る。


 「へん!女だからって、手加減しねぇぞ!」

 「望むところ」


 楓の相手は金色の指輪を嵌めた男だった。


 「楓、頼んだ!」

 「頑張れ、かえちん!」

 「お願い、柊さん!」


 斗真たちが楓を見守る中、二回戦目の結果は……。




 「うぐ!俺が負けた!」


 金色の指輪を嵌めた男が崩れ落ちる。


 二回戦目は見事に、楓の圧勝だった。

 流石は、学業においても優秀さを高校で発揮する楓である。


 記憶力は抜群。

 後半は、ほぼ楓の連続ヒットだった。


 これで、1勝1敗だ。


 残すは、3回戦目。

 これに勝てば、こちらの勝利である。


 3回戦目を始める時に、


 「おい、銀吉」

 「なんだ、金吉」


 金色の指輪を嵌めた男が、銀色の嵌めた男…銀吉を呼ぶ。

 銀色の指輪を嵌めた男も、金色の指輪を嵌めた男を金吉と呼ぶ。


 金色の指輪だから金吉で、銀色の指輪だから銀吉。


 何とも分かりやすい。


 2人は少し話あった後、


 「ちょっとトイレに行く」


 金吉が喫茶店のトイレの方に行く。

 その間に、銀吉が妖札をテーブルに広げる。


 今度の相手は、銀吉のようだ。


 「始めるぞ」


 金吉がトイレから戻る前に、始まってしまう。


 ………ん?

 斗真は何か違和感を覚える。


 何かを感じた斗真は周囲を見渡す。

 けれど、特に変わったことはない。


 3回戦目は金吉と楓。


 こちら側は、今度も楓だ。

 楓の記憶力の良さは、さっきの銀吉との勝負で分かっている。




 勝負は始め、捲っては数の違う札を引き、戻して、捲っては戻すを繰り返す。


 けれど、徐々に楓は全体的な札の数字を把握していく。

 楓の頭の中には、既にペアになる札は、ある程度掴めてきた。


 後は、自身の番になった時に、捲るだけである。


 「これと…これね」


 楓が2枚の札を捲る。

 それは確かに、数字がペアのはずの札同士で合った。


 「…………………え?」


 けれど、楓は少し驚く。


 数字はペアでは無かった。

 少し驚きつつも、札を戻す。


 きっと自身の記憶違いだったのだろうと、楓は考える。


 「俺の番だ」


 銀吉は2枚の札を捲る。


 その2枚の札は、遠くで見ていた斗真でも、ペアで無いはずの2枚である。


 だが、


 「よし、ペアだ!」


 何と、その2枚はペアだった。


 その後、銀吉は次々に札を捲っては、ペアを作っていく。

 ペアの数はどんどんと増えていく。




 そして、


 「俺の勝ちだ!」

 「そ、そんな」


 銀吉は勝利を宣言し、楓は落胆する。

 何と銀吉は、3回戦目にて、半分以上の札を得たのだ。


 まさかの、3戦1勝2敗である。

 こちらの負けだ。


 しかし、斗真は楓の横に来る。


 「斗真?」


 不思議がる楓の横で、斗真は妖札を指差し、宣言する。


 「イカサマだ!!」




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