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第101話 絶叫

 「戦支度だ!」


 秀吉が打倒柴田を掲げた。


 「歴史的にはだいぶ異なる結果となったな」


 「そうだね」


 秀吉のその言葉を河合と水上の2人が冷静に判断していた。


 「どう異なったんだ?」


 俺は、このあたりの詳しい歴史が分からないので聞く。

 俺にとっての歴史は、本能寺の変、清須会議、賤ヶ岳の戦いだ。

 清須会議から賤ヶ岳の戦いの間の詳しい歴史について俺は理解していない。


 「うーん、端折って説明するけど、清須会議のあとすでに羽柴派と柴田派で対立は起きていて両陣営それぞれ多くの武士を味方に引き寄せようとするんだよ。その後、北陸に戻った勝家は秀吉と表では和平しつつ裏では春の決戦を目指して行動するんだよ」


 「そのあとは、勝家の甥の勝豊がいる長浜城を攻めていたよな。勝家は北陸の雪で動くことができずにいた。その後、岐阜城、滝川一益とも戦っていて最後に勝家との決戦賤ヶ岳の戦いという流れですよ」


 水上、河合が教えてくれる。


 「と、なると今から決戦って無理なんじゃないか? もう冬だし」


 そう、季節は冬。

 柴田勝家は、こないだ柴田邸に行った後、すぐに本陣である北ノ庄城に戻ったらしいということを聞いた。

 北陸は冬になると雪で攻めることができなくなる。なのに、秀吉はどのように考えているんだろうか。


 「……」


 秀吉は考えていた。


 「秀吉様?」


 「ああ、すまん。どうやって勝家を倒そうか考えていたんじゃ」


 秀吉も悩んでいるようだ。


 「冬の北陸に逃げたからでしょうか?」


 「ああ、北陸道は冬になると軍を動かしづらくなる。勝家は時間稼ぎをするために慌てて北ノ庄城に戻ったのだろう。冬なら、上杉の心配もないだろうからな」


 秀吉は冷静に判断していた。

 悩んでいるようであった。


 「でしたら、秀吉様。まずは、京に近い柴田方の武将を討つことから始めたらどうですか?」


 黒田官兵衛が秀吉に策を伝える。


 「ほお、なら、どこから攻めるのがいいと思うか?」


 「もちろん、長浜城でしょうか?」


 「なるほど、勝家の甥がいる城、か」


 あれ? 秀吉と官兵衛の話はどこかで聞いた覚えがある。


 (おい、河合、水上普通に史実通りに進みそうだぞ)


 俺は、河合と水上の2人にこそこそと小さい声で話しかける。

 

 (そうみたいっすね)


 (そうみたいだね)


 2人は冷静だった。


 (え? 何で、そんなに冷静なんだよ)


 (そうな、簡単に歴史を変えることなんてできませんよ)


 (そうですよ、歴史を変えるなんて俺は自惚れてないですから)


 2人は、現実的だった。

 まあ、そうなんだけどさ。歴史を簡単に変えることなんてできない。そんなことは俺だってわかっている。だが、どうにか変えることができた歴史もある。俺はそのことを知っている。だからこそ、諦めたくはないんだ。2人は秀吉の側にいるから史実通りになぞらえるのが一番なのかもしれない。だが、俺にとっては史実通りに進むことはいいことではないんだ。

 どうにかして歴史を変えなくてはいけない。変えたい。変えるんだ。

 俺は、2人とは覚悟が異なっている。それだけ分かればいいか。


 「そういえば、小田様」


 官兵衛が急に俺に声をかけてきた。


 「はい?」


 急に声をかけられたので高い声で変な風に発してしまった。

 驚いたから仕方ないことだ。


 「その、大変申しづらいのですが、その歌川殿ですが、柴田殿と一緒に北ノ庄へ向かわれたそうです」


 ……。

 …………ん?

 言葉を理解することができなかった。反応が遅れた。そして、言葉の意味を理解した時に俺は叫ぶ。


 「勝家えええええええええええええええええええええええええええええええ」


 俺の絶叫が秀吉邸で響きわたった──

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