第64話 ファージの街決着戦4 遮那王
土煙とカラカラと乾いた音を上げながら目の前のそれは現れる。
生き物っぽさを感じさせない、無骨な骨の塊。
確かにこれを龍というのは難しい。というより生物というには歪だ。
骨格のベースは中国や日本で見られる蛇に似ている龍だと思う。
ドラキラの竜種、特にお正月に追加される龍にもよく使われる骨格だ。
ただ、この龍の特に頭の形は変わっている。
大きい。不自然なくらいに体の大きさに対して大きい。
そして、その見た目。
頭から下の部分は生物の脊髄らしい構造があるが、上のほうはまるで石像だ。
鱗なんてなく何というかコンクリで固められたようなゴツゴツとした顔つき、そしてその中央に位置する唯一の顔を形成するパーツの一つ目。
迷宮龍 《アトランカルタ》
level:600
skill:迷宮創造 超硬化 念力
レベル600。
ゲームとして、プレイしていた頃のオレの見分だと中途半端なレベルだな。
格段に高くないし、かといって、低すぎるって訳でもない。
ただ、アスラの街で遭遇したヤマタノオロチもオレ知ってるものとは違った。
だからオレの経験、ドラキラというゲームを物差しにするのは危険だ。
骨という共通点だけを上げるとしたら、スカルドラゴン系列に当てはまるが、迷宮龍、迷宮創造共にドラキラでは見たことも聞いたこともない。
情報量が少な過ぎる。
まぁそれはいい、初見攻略ほどワクワクすることはないからね。
問題はここだ。
魔力が尽きたこの状況でどう戦う?
幸いにも自己再生EXのおかげで体力は全回復したが、攻撃を出すには魔力が必要だ。
魔力を回復するポーションは、持ってきてた分は魔王の《原初の光》で鎧と一緒に吹き飛んだ。
かといって街まで取りに行っていたら、この大きさじゃ取りに行っている間に街に着く。
ただでさえ、被害が凄いのに追い討ちを掛けるような尋常な被害がもたらされる。それだけは避けないといけない。
『ギロリ』という擬音が似合いそうな龍の瞳がオレをとらえた。
龍は這うのをやめ、体の半分を反り立たせる。
その際に肋骨にあたる部分を開きカラカラと軋ませる。
威嚇行為、オレを敵と認識した。
長期戦となるが、魔力が回復するのを待ちながら戦闘を行うしかない。
幸いこの刀は切ったものを魔力に変換し吸収するみたいだ。
武器に常に魔力が流れている状態なら魔王の時みたいに刃が折れる心配はしなくてもいい。
危機感知スキルが反応する
――来る。
迷宮龍から骨が射出される。
数は1,2,3,4,5,5,6,7。
最初の三本を受け流し、残りの四本を正面から斬る。
すると骨はあたり次第、勢いよく弾けた。
この衝撃、徹甲榴弾だ。ドラキラの徹甲榴弾が命中した時のエフェクトのままだ。
ただでさえ、プレイヤーにとっては必殺の武器ともいえる徹甲榴弾を打ってくるなんて実に厄介だ。
直撃してもこの『自己再生EX』が発動してくれる限りは何とかなるが、一発でも食らえば腕は吹っ飛ぶ。
傷は治るが痛みは感じる、気を引き締めないと。
再び、骨が発射される。
今度は六発、これを全て避け迷宮龍の懐に入り一太刀浴びせる。
ただ、これだけでは大したダメージにはならない。それに向こうも一応は龍、龍の生命力ならば瞬く間に回復するだろう。
決め手に欠ける。魔法が使いたい。
まぁここで弱音を吐いても仕方ない。攻略法を探せ。
とりあえず奴の攻撃方法は、徹甲榴弾という名の骨を飛ばす。
じゃあ、まず骨の対処だ。いつまでも躱すだけじゃ埒が明かない。
奴の攻撃を断つ方法・・・・・・。
あの無数の骨と繋がっている個所もといあの骨と神経が繋がっている個所。
――脊髄か。
脊髄だ。脊髄と頭を切り離す。
が、この大太刀じゃ長さが足りない。
じゃあ、どうする?
考えろ、考えろ、考えろ、考えろ。
あぁ、こんな時漫画とかの主人公なら斬撃を飛ばしたりとかするんだろうな。
が、生憎、魔力がない現状そんなこと……、待て、確かにオレには魔力がない、だがこの大太刀、先程の戦いで仮にも魔王の翼を斬ってそれを魔力として吸収した。つまり、この大太刀の魔力を使って斬撃とか飛ばせたりしないかな?
イメージしろ。この大太刀とオレは繋がっている、大太刀はオレの体の一部。
大太刀から右手から腕にかけて魔力を纏わり着けてくる。
気持ち悪い、未知の物に体をベタベタ触られている感触。
だが、これを拒まず、オレの体そのものだと思え、魔力の回路を繋げるんだ。
右腕と大太刀が一つに重なる。
『腹減った』
は?
『結びたきゃ結べ、その代わり何か食わせろ』
は?
突如として頭に響くこの声、アトラスやティターニア、ましてやもう一人のオレとも違う。
『で、どうするんだ。結ぶのか結ばないのか?』
『おまえは誰だ? それに結ぶって何を?』
『誰って? オレには名前はない、産まれたてほやほやだからな』
は?
何言ってんだこいつ?
『まぁ、オレは幸いにもアンタの経緯はある程度理解しいるつもりだ。何せ、この世界に来てからずっと一緒にいたからな。恐らくアンタがこの深さの波長を合わせることができているのは右腕のオレの分身のおかげだろうけどよ。本来ならここまで来るには中々時間がかかるんだぜ?』
『おまえは誰だ?』
『察しが悪いな、アンタの武器だよ』
はぁッ!?
いやいやありえないだろ。武器がしゃべるなんて。
動物はまだわかるよ、自分の意志を持ってるからな、でも武器は、そもそも生物じゃない。
いや? あり得るのか? 異世界だから知性のある武器があってもおかしくないのか?
『ま、とりあえず、アンタはオレと回路を繋げたかったんじゃないのか?』
『あ、ああそうだ、突然のことに驚いたが、これで繋がったと思っていいのか?』
『いいや、まだ繋がって無い。まだ波長が合わさっただけ、オレの名を呼べ。それで終わりだ』
『でもお前、名前ないんだろう』
『好きなように呼べ。その代わり、切ったものは食わせてもらうぜ』
『お前そんなのでいいのか?』
『いい。早くしないとさっき食った分の魔力は無くなるぜ』
名前か。
なんでもいいって言われたけど、逆に困る。
見た目からつけるのが無難か、だとしたら和風で強そうなの……。
「――遮那王」
――チャキン
鈴のような音が響いたと思ったら、刀から紫っぽいオーラが出てくる。
『振りな、飛び切りの一撃を見せてやるよ』
言われるがままに大太刀を振る。
――ビュン
瞬間、感じたことのない魔力が刀身から放たれた。
風を切り、空さえも切り裂くような黒い斬撃、弦を引くような漆黒の斬撃が迷宮龍にぶち当たる。
一刀両断まさにその一言に尽きる。
迷宮龍の首から上とその下が切り離された。
『へぇ、中々いいネーミングセンスしてるなアンタ。これでオレとアンタの回路は繋がった。まぁ、なんだ、これからよろしく頼むわ』
あと少し、ファージの街編早く終わらせて、次の章に早く行きたいぃいいい。




