第18話 出発までの時間
今日は祝日でしたので投稿することにしました。
風呂から上がった俺が部屋に戻るとツバサしかいなかった。
「あれ、他のみんなは?」
「皆さんはもう出発の準備を済ませて、荷物を荷馬車に取り込んでますよ」
「荷馬車?そんなもの買ったのか?」
「あれ言ってませんでした?蔵鬼さんがファージに行くならついでにこれを届けてくれって荷馬車一つ分の荷物を預かったんですよ」
「聞いてないぞ。そんなこと……」
「まぁ荷物を届けた後は、荷馬車は好きに使ってくれということなので無駄になるというわけではないと思いますが」
「はぁ、まあいいや。とりあえず俺達も下に行こうか」
多分、騎獣スキルでなんとかなるだろういや、何とかなればいいが……。
宿の外に行くとそこには荷物を積み終わり、小休憩をいれているヒョウがいた。
「主よ、後は荷馬車にマフユとマナツをつなげばいつでも出発できるぞ」
ツバサのカラジシがマナツ、身体の色が黄色ということでお日様に例えたからマナツと名付けた。もちろん漢字で書くと真夏だ。
そしてマフユはキツナのカラジシだ。マナツとは逆に身体の色が真っ白のため、マフユと名付けた。名前を決めた際、キツナが「雪様の分身が良かった」と呟いていたが、聴こえなかったことにした。ちなみに真冬と漢字では書く。
「ヒョウ、御苦労さま。荷物を積んでいた時に足りないと思ったものとかない?」
「ああ、特にはなかったぞ。あ、そういえばこれを主へと蔵鬼から預かっていたぞ」
ヒョウから受け取ったのは小さな木箱だ。
俺は木箱をあける。
中に入っていたのは黒い羽根を象ったイヤリング5個と手紙だった。
俺はイヤリングを手に取り鑑定してみる。
「対魔の耳飾り」というアイテムらしい。効果は魔族相手にブーストと瘴気の無効化か。
俺やキツナ、ヒョウは無効化できるから意味はないが何故こんなものをくれたのだろうか?
俺は手紙を見る。
雪の嬢ちゃんへ
直接渡しかったんだが、ヒョウの背中で寝ちまってたからヒョウにこの手紙と「対魔の耳飾り」を預けておいたぜ。
さて何故俺がこんなことをするのかというとな理由は二つだ。
一つ目は、ヒョウを受け入れてくれたことだ。
驚くかもしれないがヒョウは黒の英雄の時代まさに神話の時代から生きている。とても長生きだろ。
だが、長生きはこいつを不幸にさせちまった。長く生きた分だけ友が死に、長く生きた分だけ強くなっちまったんだ。多分こいつの相手ができるのは、古き一族か魔王くらいだろう。あるいは、新たな英雄か。
こいつが雪の譲ちゃんと戦っていた時、笑ってたんだぜ。正直目を疑った。
だから、こいつといい勝負をしてくれたこととこいつを受け入れてくれたことについては礼を言う。
ありがとう。
二つ目は、修羅の嬢ちゃんの件だ。
今回の件で修羅の嬢ちゃんはだいぶめいちまったみたいなんだよな。
そのことは俺も気づいてたんだ。だがら昨日アスラ軍の会議で自分は第一軍隊長の器はでかすぎるから、それに見合う強さが手に入るまで軍を休むと言ったことには別に驚いちゃいねぇ。
でもよ、修羅の譲ちゃんの性格上言ったはいいが、その後が問題なんだ。何をすればいいか分かっちゃいねえ。
だから修羅の嬢ちゃんの事をしばらく頼まれちゃくれないか?
修羅の譲ちゃんが抜けた分はなんとか俺がカバーできるから軍の方は気にしないでくれ。
ちなみに、「対魔の耳飾り」は知っているかも知れないが瘴気を無効化できる。
雪の嬢ちゃんの強さなら必要ないかもしれないが一応保険だ。ある分だけ木箱に入れておいた。
ファージは今瘴気に包まれているらしい。
話したと思うが瘴気を浴びた獣は魔獣となり、獣の時より獰猛性が増す。ファージの近隣に生息する獣は大体レベル80~200くらいだが、魔獣と化してる可能性が高い。十分に注意してくれ。
それじゃ、旅の無事を祈ってるぜ。
PS.荷馬車は中々良い品物だぜ。ファージへの救援物資の運搬が終わったら好きに使っていいからな。
全くあのおっさん全て見通してるのかよ。
これが、RPGゲームだったら主人公は「一番敵にしたくない相手だぜ」とでも言うんだろうか?
まぁいいか。
修羅姫の件は何とかなるだろう。多分付いてくるだろうし。
「ヒョウ、キツナは?」
「半獣の娘か?なら荷馬車の中にいるぞ」
「ありがとう」
俺はそう言って荷馬車の中に入る。
「なんじゃこりゃ!?」
外から見るとこの荷馬車は大きさ3メートルくらいの木製のアスラの街でもよく走っていそうな荷馬車だ。
だが、中に入ると家だ!!
乗り込むと二階に上がる階段があり、ダイニングキッチンがある。更に壁には壁を覆い尽くすくらいの本棚と引き出し、そして大きな丸窓。床にはカーペットが敷いてあり8人がけだろうかL字型のソファーまである。ただ凄いのはソファーがそれなりの大きさなのにまだ床には余裕があるということだろうか。しかも上にはシャンデリア……。
「これは……」あまりの驚きに俺が目を丸くしていると
「空間拡張魔法、耐震魔法、対物理攻撃耐性、対魔法攻撃耐性、しかも車輪は水の上でも走ることができ、カラジシの負担を減らすために浮遊魔法、中の音を外に漏らさない防音魔法、調理する際に火事にならないように火の代わりに熱魔法、疲れた騎獣を休ませるための納屋つき、二階7部屋の個室付きらしいですよ。雪様、さすがに驚きますよね」
そこには苦笑いを浮かべているキツナがいた。
「さすがに、ここまでのものは引くよな」
先ほど鑑定スキルを使用したが、額が半端ない。0の数が……。
それに使用されている魔法も80種類ある。小物や装飾品にも。
しかも全ての使用されている魔法は最上級クラスらしい。
まさに、万能としかいいようがない。
シャワーやトイレ水洗魔法でしっかりされてあるし、1階の一番奥の部屋からは異界に転移できるらしく、そこで取れたての野菜や果物なども取れるみたいだ。そして異界は常にゴーレムが管理している。
引き出しには調合に必要な薬草がぎっしり入っており、本棚には調合所から絵本までと様々なジャンルの本が置いてある。ラノベは……さすがにないが。
「これほどの設備、正直言いにくいのですが雪様の宝物庫より凄いかもしれません」
「ああ、俺の常識がどこかに飛んで行ったよ。……魔法の便利さの前で」
「はい。私達のいた世界とは全く似つきません」
「ほんとだよな」
あとで転移部屋に新しい魔方陣を書き込んでおこう。もちろん転移先は俺の宝物庫だ。
何かと便利が効くだろう。
さてと残る問題はアイツか。
「キツナ、ヒョウに後1時間後に出発するって言っておいてくれ」
「かしこまりました。雪様はどこへ?」
「少し、宝物庫にな」
「分かりました。ヒョウにはそう伝えておきます」
「ああ、頼むよ」
俺はそう言って荷馬車を出て。
「出でよ!!我が宝物庫」
そして出てきた黒い獅子を象った門をくぐった。
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