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―3―

しかし、彼女との再会は意外にも早く訪れた。




週末の土曜日――。


親友の大橋一平と久しぶりに会い、飲みに行った居酒屋に彼女がいた。




だが、俺は彼女と一緒にいる相手を見て声を掛けるのを止めた。


朱里さんと同い年くらいの、びしぃーっとスーツも着こなしていて、


いかにも仕事できますって感じの男と一緒だったのだ。




(もしかして……デートか? てか、デートだよなー?)


こっちは野郎二人。


一方、あっちはデートおそらく




(本当は声でも掛けたいところだけど、気付かない振りをしとく方がいいよなぁ……?)




朱里さんが座っている席からは相手の男性と数人の客、それに一平の肩越しに


俺の姿が視界に入るか入らないかというところ。


デート中なら俺なんて視界には入らないだろう。






     ◆  ◆  ◆






しかし、一時間程が過ぎた頃――。




「本多先生?」


……と声がして、顔を上げると翼くんママが少し驚いた顔で立っていた。




「あ……どうも」


見つかってしまった。




「こんばんは」


翼くんママはにっこりと笑った。




(相変わらず可愛いなぁー)


「こ、こんばんは、偶然ですね。佐山さんもこのお店にいらしてたんですね」




「はい、今日は同僚と一緒に来てるんです」


一緒に飲んでいる男性に視線を移す翼くんママ。




「そうなんですか」


(“同僚”ね……)




「先生は?」




「僕も友達と飲みに来てるんです」




「そうだったんですか」




結局、翼くんママとの会話はそれだけで終わってしまった。


彼女と一緒に来ていた男性が怪訝な顔をしていたみたいで、すぐに戻ってしまったのだ。


それでも俺は予想外の再会が嬉しかった。




「今の誰?」


翼くんママが同僚の男性のところに戻った後、一平が興味深そうに訊いてきた。




「俺が受け持ってる園児のお母さん」




「へぇー、あれで人妻かー、見えないな?」


それはそうだろう。


だって、翼くんママは子持ちだけど“人妻”ではないのだから。


……と、言うより、もっと言えば“子持ち”にすら見えない。




「俺もあんな可愛らしい奥さんが欲しいなぁー」


そう言うと一平は何やら妄想モードに入った。


しばらく放っておこう……。




俺はちらりと翼くんママを横目で見た。


楽しそうに同僚の男性と喋っている。




(やっぱり、彼氏なのかな……?)


何も根拠はないけれど、なんとなくそう思った――。

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