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8話 忍耐の間 後編

3日目の試練。一体ノアは何を見たのか

今日は早めに目が覚めてしまった。

コーヒーを飲みながら窓がない部屋を一瞥する。隣のベッドには寝ているトレスがいる。

同じ部屋に女がいるのに何もしないのはヘタレとも言えるだろうし、トレスらしいとも言える。ほかの女ならおそらく悲しくなったり怒ったりするのだろう。幼馴染に性別は関係ないのだ。私はトレスを恋人とかそういう目では見れない。というより見ないようにしているのだろうか。トレスといると安心するしそこに恋心は不要と考えているのだろう。恋人になりたくない訳ではないがトレスの気持ちが優先だ。


そんなめんどくさいことを考えているとトレスが起きてきた。

「おはよー」


起きたばかりで服が乱れており上半身がほぼ見えていたので咄嗟に目を逸らす。


「トレスおはよ」


「今日は最終日か。どんな試練が来るんだろうな。三大欲求終わったし想像もつかねえ」

「まあご飯食べてから考えましょ?」



────────────────────



それからしばらくして9時になり声が聞こえ始める。

 「今日の試練の内容を伝える。今日の試練は……忍耐だ。どちらか片方が今までの人生のトラウマの一部を主観で体験する。尚、それが試練の一部であることを忘れる。戻ってきたら記憶は戻す。失敗条件は……なしだ。だがこの試練で気が狂ってしまう者や堕ちすぎたが故、戻れなくなってしまうものも……やめるなら今のうちだが、どうする」


「「……」」

「まあいい。試練の直前にやるかどうかとどちらが受けるのかを聞く。時間まで悩んでいろ」


────────────────────


「多分だけど俺が試練受けたら出てくるトラウマは小学校のときのいじめの殺傷事件だろうな」


おそらくここはトレスに行かせるべきじゃない。もし痛覚があればおそらく死ぬほど辛い。

けど私のトラウマはたぶんあ(・)れ(・)だ。痛みはないけど精神崩壊はあり得るかも。


「私が行く」

「ほんとか? 別に俺が行くぞ」

「私が行く。代わりに……」

「代わりに?」

「戻ってきたらちゃんとメンタルケアしてね」

「当たり前だろ」



────────────────────



「では聞く。試練を受けるか?」


「「うける」」

「了承した。では試練はどちらが受ける」

「私が受ける」

「では始めるぞ────────」




あれ?


ここどこだろう。


私何してたんだっけ



「ノア~、今日も探検行こうぜ」

トレスの声が後ろから聞こえる


「トレス? トレスなの?」

「ノアは泣き虫だな。なんでいきなり泣いてるんだよ」

「何でもない。なんか懐かしい感じがしただけ」

「まあいいや。今日は親にダメって言われたけど裏山行こうぜ。ノアの能力でザリガニさんとか捕まえに行こう」


「うん。こっそり行こうね」


────────────────────


「ああ、ザリガニさん逃げた!ノア、バリアで止めて」


「うん」

ザリガニの逃げた先にバリアを設置し止める


「捕まえた! ノア! 後で一緒に食べようぜ」


「うん」

そのとき後ろから白い髪が見えた気がして後ろを見る。


「あっちは野草多そう! 行こうぜ」

気のせいだったかもしれない。

トレスを見ると立入禁止のテープを跨いで野草を探しに行こうとしていた。

「トレス! そっちはだめだよ!」

「ノアが言うなら。違うとこ探しに行くか」



その時立入禁止のテープの向こう側から人の声が聞こえトレスと私はとっさに隠れる。


「くそっ! あの女もダメか! どいつもこいつも! プライドだけ高いカスが! 体がいいからって調子乗んなよ! 減るもんじゃないんだからいいだろ!」


男が一人で声を荒げている。どういう意味の話なのだろうか。


私たちが隠れている草むらの中からネズミが出てくる。


金髪の男が振り向く。



バレた



「おいガキども、盗み聞きとはいい度胸じゃねえか。俺様は今虫の居所悪いんだ。殺すぞ」


殺意のある目で見た後、男が私の体をなめるように見る。


「そこの女、発育いいじゃねえか。おいクソガキこの女置いてどっか行け。そしたら見逃してやる」


「そんなことするわけないだろ!」


トレスの声が震えている。


「トレス! やめて! 殺されちゃう」


「おいクソガキ。カッコつけるじゃねえか! まずはお前からだ」


トレスの頭上から高濃度の魔力反応がする。


咄嗟にトレスの頭上にバリアを張る。






────────強い光が目に入る。

「ドーン」と耳鳴りするほど大きい落雷の音と「パリィ」と小さいバリアが割れる音がする。



「………………え?」





トレスは丸焦げになっていた。


「トレス……ねえ、冗談でしょ?」


「さあ嬢ちゃん、俺様についてこい」

「嫌!」


男が眉間にしわを寄せる


「じゃあお前もだ」



轟音と共に強い光が目に入る





トレス……今行くから




その時、空中で雷が止まる

「………え?」


背後には白い髪の男がおり、雷を見つめていた。


「怪我はないか? 今雷を止めている。早くそこから逃げて。雷が当たらないところに行って」


頭の中は混乱でいっぱいだったがまずは従うことにした。

「は、はい。ありがとうございます」


「くそ! 相性悪いヤツと戦うほど野暮じゃねえ」


雷の男が帰って行った。


「追うのは後でいい。そんなことより彼だ」


焦げているトレスを見る。


「トレス!」


「おそらくだが今から病院に行っても間に合わない。」




──────間に 合わない?──────




それって、どうしよう、なんで、トレス、死んじゃうの、お別れなんて、まだ一緒にいたいよ、ダメだよ




──────間に合わない?───────



心臓の鼓動が早くなっており、焦りから耳は聞こえなくなってきた。


「じゃあ、私が間に合わせるから」


身体の中から何かが溢れ出そうとしていた。

言葉にはできない。ただ、今までずっと自分の中に眠っていた何かが、無理やり殻を破ろうとしている感覚だけがあった。


「落ち着け。開花したタイミングで感情を暴発させるな。目の前の少年を助けることだけ考えろ」

「はい」

ゆっくりと魔力をこめ、トレスに開花した魔法を付与する

「トレス……お願い」


「火傷が治ってきてるぞ。そのまま魔法を止めるなよ」


「はい」


「おそらく直撃したら即死だっただろうに。何かが雷の勢いを吸収したのだろうか」

白髪の男がつぶやく。


「う……ここは?」


「トレス! 良かった。もう戻って来ないと思った……」


「君は、誰?」



トレスの目がいつもと違っていた。トレスなのにトレスじゃない感じがした


「嘘でしょ? トレス……忘れちゃったの?」


「おそらく記憶が曖昧になっているな」


男が私を見て言った


「そして今君が使った火傷を治す神聖魔法は外傷の回復だった。精神の状態を戻す神聖魔法を探そう。彼は大丈夫だ。絶対に元に戻る。だから泣くな」


「どうしてそこまでしてくれるんですか」


「うーん。子供に教えたり助けたりするのが仕事だし、生きがいだからかな。お節介だと思ってくれればいいよ」


「私も、頑張ります」


「その前に、まず顔拭きな。せっかくの綺麗な顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃだよ」


不思議と重く陰惨な雲はなくなり空からは光が差していた。

投稿遅れてしまって申し訳ないです。

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