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元魔王先生のスパルタ勇者塾  作者: 浦賀やまみち
第八章 蠢動

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第52話 鼻血で誓う仲間入り




「随分と遅かったな」



 村長宅前に戻ってきた私とタリアさんを待っていたのは、レイモンドさんのデリカシーのない一言だった。

 やぶ蛇になりそうだったので、思わず言い返したくなるのをぐっと堪える。



「ニャはっ! でっかいの出たニャ!」



 でも、タリアさんは違った。

 タリアさんは元気いっぱいに応え、満面の笑顔を見せた。


 私の秘密まで喋られたら堪らない。

 慌ててタリアさんの口を塞ごうと手を伸ばすが、動きを止める。



「そ、そうか……。」



 凄く、凄い。レイモンドさんが引いている。

 頬をヒクヒクと引きつらせているのを見て、私は素直にタリアさんの元気さに感心する。


 それに、レイモンドさんがちゃんと服を着ているのを見て、少し安心した。

 きっとアドソンさんが窘めてくれたのだろう。


 レイモンドさんだけなら、水浴びを済ませてもまだパンツ一枚でいたに違いない。

 今まで何度もその光景を見てきたし、私が怒鳴ってやっと服を着るのがいつものことだった。



「レイモンド殿、お願いします」



 アドソンさんが静かに咳払いをして、場の空気を変えた。

 私とレイモンドさん、タリアさんの三人には、こうした対応力はなかった。

 素直に感心しつつ、何が起こるのかを少し緊張しながら見守っていると、レイモンドさんが指をパチンと鳴らした。



「来い! メアリー!」



 レイモンドさんの前に魔法陣が描かれ、白く輝き出す

 その中から、ゆっくりと一人の貴婦人が浮かび上がってきた。


 青白い肌に、真っ赤な口紅。

 胸元を大胆に見せる黒いドレスを纏い、手には手綱を握る。

 その先には、巨大な黒馬が厳かに佇んでいた。


 一人と一匹が立ち上らせる黒くてオーラの禍々しさに、私は思わず息を呑んだ。



「マスター、お呼びでしょうか?」



 貴婦人が膝をつき、恭しくレイモンドさんに頭を垂れる。

 だが、次の瞬間。頭がポロリと落ちた。



「ああっ!? 私の頭っ!?」



 それも慌てるあまり、頭を取ろうとして蹴ってしまう貴婦人。

 間違いない。このドジっ娘ぶりは、メアリーさんだ。


 メアリーさんはあたふたと両手を伸ばしながら頭を追いかけて、また蹴っては追いかけるを繰り返し、村の彼方へと去っていった。



「なら、この馬はっ!?」



 残された馬に視線を向ければ、タリアさんが巨大な黒馬とじゃれている。



「立派になったニャ! ほ~ら、ニャっしっしっ!」

「ヒッヒッヒッーン!」



 やっぱり、あの仔馬が成長した姿だった。

 タリアさんに眉間をこちょこちょと掻かれ、黒馬は大喜び。



「ニャはっ! 行くニャー!」

「ヒヒーン!」



 タリアさんはヒラリと黒馬に跨ると、そのまま村の彼方へと去っていった。



「うーーーん……。」



 自然と唸り声が漏れた。

 鎧も着ていないし、メアリーさんはドジっ娘だし、黒馬には愛嬌があった。


 しかし、最初に現れた姿は、威圧感たっぷりだった。

 アドソンさんが語ってくれた『都市落とし』の異名にふさわしい、禍々しさが漂っていた。



「レイモンド殿ぉぉぉおおおおおっ!?」



 すると突然、バターンと倒れる大きな音が響いた。

 何事かと目を向けると、アドソンさんが五体投地していた。



「私は! ……私は、猛烈に感動しました!

 あなたの、その気高き姿に、我が仕える神の教えの真髄を見ました!

 何卒! 何卒、お願いします! 私を臣下の端に加えてください!

 貴方様の往く道を、この目で直に見てみたいのです! ……我が勇者よ!」



 その最後の言葉『勇者』に、心臓がドキリと跳ねる。

 一呼吸置いて、レイモンドさんがこちらをチラリと見た瞬間、胸が再び高鳴る。


 妙に意味深な間と視線だった。

 『まさか……。』と不安が渦巻き、鼓動がどんどん速くなる。



「ぷっ!? 俺が勇者だと? よりにもよって、俺が勇者とは面白い!

 くっくっくっ……。あ~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」



 しかし、それは杞憂に過ぎなかった。

 レイモンドさんの大笑いは、私の不安を一瞬で吹き飛ばすほどの迫力だった。


 レイモンドさんの性格を考えれば、『勇者』と持ち上げられたことで、単純に調子に乗ったのだろう。

 それでも、私に視線を向けたのは、レイモンドさんにしても、やはり『勇者』が特別な存在だからだ。胸をホッと撫で下ろす。



「良かろう! 丁度、荷物持ちが欲しかったところだ! 俺の側に仕えることを許す!」

「はっ! ありがたき幸せでございます!」



 こうして、私たちの旅は四人目の同行者を迎えることになった。

 なお、本人は五体投地でぶつけたせいだろう。顔を上げると、鼻血をダラダラと流していた。




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