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元魔王先生のスパルタ勇者塾  作者: 浦賀やまみち
第七章 集う四人

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第42話 街道掃除、開始30秒で終了




「へっへっへっ……。こんな所で何を、ぐえっ!?」

「なかなかの上玉だな。俺たちと楽しく、ぬふっ!?」

「えっ!? つ、通行料を払って……。ぶべっ!?」



 盗賊たちがお約束の台詞を並べ立てる前に、三人が三人とも地面に転がっていた。

 タリアさんの嵐みたいな肘と拳と蹴りで、まとめて吹っ飛ばされた。


 無謀だと笑われても仕方ないと思う。

 いや、タリアさんについてじゃない。私たちのことだ。


 だって、街道を行く私たちは、この世界の基準で言うと、成人したばかりの若造三人。

 それも女二人に男一人という組み合わせでは、盗賊に狙ってくださいと言っているようなもの。


 案の定、森に入ると、茂みからぞろぞろと奴らが現れた。

 あの手の連中は、まず私たちを『カモ』だと決めつける。

 財産はそこまでなさそうでも、女二人は目を引く容姿をしている。


 私は自分でいうのも悲しいが、可愛くも美人でもない。

 暗くて大人しそうに見える。実際その通りで、街中を普段着で歩いていれば『ただの気弱な女』にしか見えないだろう。


 だからこそ、盗賊にとっては格好の的だった。


 一方のタリアさんは、明るく元気で華がある可愛い女の子だ。

 虎族特有の耳や尻尾は遠目には気づかれにくく、それ以前に彼女自身の容姿が目を惹く。


 悔しいけど、特に胸。私より大きい。


 つまり、メインはタリアさんで、私はついで。

 盗賊たちは私たちを取り囲んできた。


 だが、それが間違いの始まりだった。

すでに三人が地面を転がり、残りはざっと見で10人ちょっと。



「ちょ、調子に乗りやがって!」

「まずはあの眼鏡を捕まえろ!」

「おい、うっかり殺すなよ! 人質は生きてりゃ使えるんだ!」



 その数の暴力が盗賊たちを強気にさせたのだろう。

 呆気に取られていた彼らが我に返り、狙いを変えたのは、私。暗くて、大人しそうな女だった。



「アオニャン、そっちに行ったニャ!」

「はい、任されました!」



 だが、少しはおかしいと思わないのだろうか。

 今の私はハーフプレートに身を包み、背には常人なら持つことすら難しい大剣を背負っている。

 それを見てもなお『弱そう』と判断するあたり、やはり盗賊は浅はかだ。


 実際、興味を持ったタリアさんが私のハーフプレートを着てみたところ、やっぱり重いらしい。

 タリアさんは『こんな重いのを着て歩けるなんて、凄い力持ちニャ!』と笑顔で褒めてくれたけど、私の場合は勇者の『刻印』のおかげにすぎない。


 本当の力じゃない。ただのズル。

 本来なら、何年も厳しい鍛錬を重ねて、血のにじむような努力を経なければ、戦いに使えるような代物じゃない。



「良いか! 当てるなら足だぞ!」

「分かってるよ!」

「おいおい、漏らしたらどうするんだ?」

「だな! そっちの趣味はねぇえぞ!」



 下卑た笑いが街道に響いた。

 私は静かに剣を抜き放つ。


 三方向から矢が放たれる気配を、私はすでに見切っていた。

 息を吸い、ただ一振り。



「えっ!? ぐぎあああああゃっ!?」



 私の剣は、分類的に『バスターソード』と呼ばれる剣で、どちらかといったら両手で扱うのが普通だ。

 大柄な戦士ですら振るうのに苦労する、重く、長く、鈍重な武器。


 それを片手で一閃。

 空気を裂く衝撃とともに、飛来した矢はすべてはじき飛ばされる。


 そして、そのまま返す刃で、棍棒を振り下ろしてきた盗賊を右切上に斬り払った。



「な、なんだ?」

「ど、どうなってやがる?」

「い、今の、見えたか?」



 完全に盗賊たちが怯み、足を止める。

 何人かは口をぱくぱくさせるだけで、声すら出せない。


 私はタリアさんと無言で視線を交わした。

 同時に地を蹴り、盗賊たちとの間合いを一気に詰める。



「ええい! この程度の雑魚に何を手間取っている! 退け! 邪魔だ!」

「ニャんと!」

「もう! 勝手なんだから!」



 しかし、ここでレイモンドさんが動いた。

 すぐさま私もタリアさんも直感的に巻き込まれると判断して、盗賊たちを素通りしながら距離を取る。


 盗賊たちの最大の間違いは、レイモンドさんを見誤ったことだ。


 一見すると、レイモンドさんは貴族の坊ちゃんだ。

 気品ある顔立ちに整った服装。むしろ、街道を歩いていること自体が場違いに見える。


 しかも背中には、野営道具をぎっしり詰め込んだリュックサック。

 知らない者からすれば、ただの荷物持ちにしか見えない。


 盗賊たちが貴族と見たか、荷物持ちと見たかは知らないけど、どう見ても戦うための人間には見えないだろう。


 もちろん、レイモンドさんは荷物持ちを大いに嫌がった。

 でも、私は剣を背負っているし、タリアさんは身軽さが売りの武闘家。

 結論として、旅立ち以来ずっと彼が担うしかなかった。


 その上、昼食のお肉を鳶にさらわれて機嫌が悪い。

 よりにもよって、盗賊たちは最悪のタイミングを選んでいた。



「ドラゴニック・ファイヤーブレス!」



 レイモンドさんの怒りの咆哮が響き渡った。

 次の瞬間、その口から轟音と共に紅蓮の炎が吐き出される。


 それは、力ある言葉通りに龍の息吹のように放射状に広がり、前方の盗賊たちと森の木々を焼き尽くしていく。

 熱風が押し寄せ、私は思わず腕で顔をかばった。



「うぎゃああああああああああっ!?」


 

 盗賊たちが姿を現してから、30秒も経っていなかった。

 こうして、街道の平和はあまりにもあっけなく守られた。




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