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076⚫️張り合わない貼り合わせ

工廠に戻ると、部下たちが不安げに集まってきた。

「技術長、将軍は何と?」

アーレンは短く答えた。

「岩礁に当たっても壊れない船を作れ、だそうだ。」

一瞬の沈黙。

次の瞬間、工廠中がどよめく。

「無茶だ!」

「そんな船、聞いたことがない!」

「鉄で作るのか? いや、鉄では沈む、のか?」


アーレンは手を上げて皆を収める。

「無茶だ。だが、やる。我々は技術屋だ。無茶を形にするのが仕事だろう。」

その言葉に、工廠の空気が変わった。

恐れと興奮が入り混じった、あの独特の熱気が満ちていく。

アーレンは黒板に大きく書いた。


    岩礁に負けない船体構造


そして、チョークを握りしめながら呟いた。

「常識を捨てろ。岩が砕けるのか、船が砕けるのか。そのどちらでもないものを、我々は創るのだ。」

工廠の誰もが息を呑む。

アーレンは続けた。

「岩に勝つのは’硬さ’ではない。しなりだ。」

黒板に、しなる枝の絵を描く。

「岩は硬いが脆い。船は柔らかいが壊れやすい。ならば、柔らかくて壊れない素材を作ればいい。」

技術者たちがざわつく。

「そんな素材、存在しませんよ!」

「鉄でも岩には勝てません!」

「厚くすれば重くなり、沈みます!」


アーレンは工廠の奥から、貴重な巨大海獣の皮膜 を持ってきた。

「これを見ろ。刃物でも傷がつかん。」

技術者たちは息を呑んだ。

「まさか・・・船体をこれで覆うのですか?」

「そうだ。船体の内側に、しなる木材で’肋骨’のような衝撃吸収構造を組む。さらに、船体にこの皮膜を三重に貼り付ける。外層は破れず衝撃を吸収し、内層は変形して力を逃がす。岩礁に当たっても、船体は’たわむ’だけで済む。」

「そんな・・・生き物の皮で船を守るなんて・・・。」

アーレンは静かに言った。

「自然は、我々よりはるかに優れた設計者だ。海獣は岩礁にぶつかっても死なない。ならば、その生態を真似すればいい。」

さらに、アーレンは黒板に船首の図を描いた。

「船首には衝角、ラムを付ける。ただし金属ではない。海獣の骨を加工し、しなる角を作る。」

描かれたのは、

しなる衝角を持ち、柔らかい外皮で覆われた船。

「岩礁に当たれば、船首がしなり、皮膜が衝撃を吸収する。岩と張り合う必要はない。」

工廠の空気が震えた。

驚きと興奮が混ざり合い、誰もが言葉を失っていた。

アーレンは最後にこう締めた。

「これは’船’ではない。海を泳ぐ’生き物’だ。我々は、海獣を模倣した新しい艦を作る。」


その’結論’は

ラグナ王でさえ言葉を失うほどのものとなる。

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