051⚫️ランドパワーとシーパワー
国家には基本的に軍隊が存在する。
しかし、その軍事力の構成要素は国によって異なる。
これを理解するうえで有効なのが、ランドパワーとシーパワーという二つの概念である。
ランドパワーとは、大陸国家が広大な領土・人口・資源を基盤として形成する力であり、陸軍を中心とした大規模動員能力を特徴とする。
一方、シーパワーは海洋国家が海軍力と海上交易を基盤として築く力であり、外洋航路の支配と貿易による富の蓄積が国家の生命線となる。
だが、この二つを同時に高い水準で維持することは容易ではない。陸軍と海軍の双方に莫大な資源を投じる必要があり、戦略文化も異なるためである。
歴史上、この両立に成功した国家は限られ、むしろどちらかに偏るのが一般的である。軍事力の違いは単なる装備の差ではなく、地理と歴史が形づくる国家の性格そのものを映し出すのである。
ゼルド・ファルマ王国は、’ランドパワー’の国である。
それを熟知しているラグナ王は、北の大陸への再侵攻で、海での戦闘を避け陸戦での決着を考えている。
だが、それには二つの課題があった。
ひとつ。あの’巨竜’。得意の陸戦に持ち込めば優位は間違いない。だが、北の大陸が、あのカードを切れば戦況はかわる。また、’巨竜’の攻撃能力も、何頭いるのかも不明だ。
ふたつ。ラベンダー公国を中心とした海軍力。すでに警戒を始めている公国は、正式に大陸諸国家のみならず、西の大陸の国家とも同盟を結んでいる。
前回は容易に上陸したファルマ王国軍も、もし公国艦隊が動けば海戦を避けては通れない。
ラグナ王は命じた。
「海軍力を増強せよ。我が大陸統一国家の力を注ぎ込め。」
昼夜を問わず、軍船の建造が始まった。戦艦、輸送艦。
水兵の訓練が続き、陸兵の鍛錬も強化される。
ラグナ王の眼は、爛々と輝いていた。
今度こそ、北の大陸を掌中に収めるのだ。




