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026⚫️真似
彼の番は、最後だった。
課長に促され、それぞれが転属にあたっての感謝と決意を述べていく。
退職を選んだ者は、彼ひとりだけだった。
「わたしは、こちらへ越させていただいて、井戸から出て大海を見たような気がしております。 これからは妻とふたり、元の居場所よりもさらに狭い井戸に戻ります。」
控えめな、温かい笑いが広がった。
彼は穏やかに続けた。
「皆さんもご存じのあの諺には、実は後から付け加えられた一節があります。
―― 井の中の蛙、大海を知らず
されど、空の青さを知る ――
これからわたしは、妻を支え、いえ、本当は妻に支えられながら、その空の青さを見つめて生きていこうと思います。本当にお世話になりました。ありがとうございました。」
このとき、彼は世界線をためらいなく越えていた。
ラベンダー公国のソレイユたちから教わったあの言葉を、
彼は臆面もなく――そして何より誇らしげに――真似してみせたのである。




