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第五話 制御されし力


 桃太郎と神庭は、無言のまま吉備団子きびだんごを口にした。

 ――次の瞬間。

 体の奥底で、“何か”が弾けた。

「――ッ、うひょぉぉ……!なんだ、こりゃ……!」

 神庭の折れた腕が、音を立てて再生する。

 骨が鳴り、肉がつながり、血が巡る。

 そして――

 その姿は、もはや猿ではなかった。

 人の形。

 しなやかに引き締まった肉体。

 白い気配をまとう、神性しんせい顕現けんげん

「……覚醒したか」

 桃太郎が静かに言う。

「それが“命の力”。お前の本来の姿だ」

 神庭は拳を握る。

 ――ビリ、と空気が裂けた。

「……すげぇな、これ」

 軽く跳ぶ。

 それだけで、大地が沈む。

「力が……湧いてきやがる……!」

 笑う。

 獰猛どうもうに。

「まずは――腕試しだな」

 神庭が消えた。

 一瞬で象頭鬼ぞうとうきの懐へ。

 振り下ろされる腕。

 うなる鼻。

 だが、その全てを紙一重でかわす。

「遅ぇんだよ」

 拳が突き刺さる――が。

 硬い。

(……効かねぇ!?)

 直後、鼻が叩きつけられる。

 神庭は地を転がり、即座そくざに起き上がる。

「……チッ、かくが違うか」

 血をぬぐう。

 だが――目は死んでいない。

(それでも――やるしかねぇ)

 一方――

 桃太郎は動かない。

 牛頭鬼ごずき馬頭鬼めずき

 二体のあつが、空間そのものを押し潰す。

 踏み込めば、死。

 だが――

 ――ドクン。

(壊せ)

(速く)

(叩き潰せ)

 あの声が、内側でささやく。

 しかし桃太郎は――目を閉じた。

「……違う」

 息を整える。

「力に使われるな」

 一歩。

 踏み出す。

 牛頭鬼の金棒かなぼうが振り下ろされる。

 だが――

 動かない。

 極限まで引きつけ、

 最小の動きで流す。

 ――轟音ごうおん

 地面が砕ける。

「なに……?」

 無傷。

 そこに立っている。

(なぜだ)

(もっと速く動け)

「……全部、見えてる」

 馬頭鬼が突進する。

 だが桃太郎の視界では――

 全てが、遅い。

「焦るな」

 自分に言い聞かせる。

「一つずつでいい」

 受け流す。

 いなす。

 崩す。

 無駄がない。

 乱れがない。

 ただ最短。

(……それが最適解さいてきかいか)

 声が、わずかに揺らぐ。

 桃太郎は踏み込む。

「でもな」

 牛頭鬼の懐へ。

「オレは――壊すために戦ってるんじゃねぇ」

 関節かんせつを制す。

 じくを崩す。

「守るために戦ってる」

 その瞬間――

 内側の“暴力”が、静まった。

 荒れていた力が、一点に収束しゅうそくする。

(……制御せいぎょしたか)

「これが――」

 拳を握る。

「オレの力だ」

 一撃。

 静かな拳。

 だが――

 内側から弾ける衝撃。

 牛頭鬼が吹き飛び、地に沈む。

 絶命ぜつめい

「……制御して、初めて力になる」

 その言葉が、戦場に落ちた。

 その背後で――哲西は獣人の姿で群がる鬼をぎ払い、吠えながら戦線を支えていた。

 さらに上空では、矢掛が巨大な鳥鬼と交錯こうさくし、閃光せんこうの矢で翼を撃ち抜き、落下する巨体すら足場にして再び射を放っていた。

 ――そして、その全てを。

 離れた岩陰いわかげから、“それ”は見ていた。

 音もなく。

 気配もなく。

 ただ、観察かんさつするように。

 桃太郎の動き。

 神庭の力。

 矢掛の精度。

 哲西の本能。

 その全てを――“理解するように”。

 ゆがんだ影の奥で、

 口元だけが、遅れて笑った。

仇討あだうちは終わりだ!」

 神庭が飛び込む。

 金棒を奪い、叩きつける。

 牛頭鬼の亡骸なきがらが砕け散る。

「……すげぇな、オレ様」

 だが――

 残る一体。

 象頭鬼。

 圧倒的な“格”。

「オレ一人で――」

 踏み込む。

 だが。

 止められる。

 弾かれる。

 届かない。

 何度も踏み込むが、その全てが弾かれる。

「……無理だ」

 神庭が吐き捨てる。

「近づけねぇ……」

「オレに考えがある」

 桃太郎が言う。

「二方向から攻める」

 刀が、淡く光る。

「注意をらせ。オレが斬る」

「斬るって……あれをか?」

「問題ねぇ」

 静かに構える。

「――このわざに、斬れないものはない」

 戦闘再開。

 神庭が引きつける。

 矢掛が撹乱かくらんする。

 象頭鬼の意識が逸れた。

「今だ!」

 桃太郎が跳ぶ。

 滝へ。

 一直線。

 息を止める。

 世界が静まる。

「――仙術せんじゅつ

 刀が燃える。

火焔刃かえんじんざん

 一閃いっせん

 炎がを描き、

 象の鼻と牙を断ち切る。

「斬れた……!」

 だが――

「再生するぞ!」

「分かってる」

 桃太郎が息を吸う。

 矢掛が叫ぶ。

羽光術式壱うこうじゅつしきいち――朱雀すざく!」

 炎が顔面を包む。

「今だ……呼吸を止めた!再生が遅れる!」

 桃太郎が構える。

 踏み込む。

 炎が収束する。

 音が消える。

 時間が止まる。

「――仙術」

 一閃。

「火焔刃・だん

 首が落ちた。

 巨体が崩れ落ちる。

 完全なる終焉しゅうえん

「……やったか」

 その瞬間。

「――そこだ」

 桃太郎の突き。

 岩陰から、“がれるように”現れる影。

「我をとらえるか……」

 歪んだ存在。

 形が、定まらない。

 先ほどまで、そこに“あった”はずの気配。

 ――最初から、見ていた。

「我が名は――黄泉継鬼(よみつぎき)

 ーーその“遅れた笑み”が、今度ははっきりと形を持った。

「この程度で全滅とはな」

 視線が桃太郎に刺さる。

「……面白い」

 黒い光。

 空間が歪む。

「次は確実に殺す」

 消失。

 静寂。

「……まだ終わってねぇな」

 朝日が差し込む。

 帰路。

 空気は穏やかだった。

「もうすぐ村だよ!」

 哲西が笑う。

「桜がずーっと並んでてさ!」

 その無邪気さが、戦いを遠ざける。

「……桃太郎」

 矢掛が言う。

「私には前世の記憶があります」

 空気が変わる。

「我々は――元は神でした」

「神……?」

「吉備団子は鍵です。命の力を解放し、“本来の姿”へ戻す」

 神庭が笑う。

「オレ様が神様ぁ?」

「ただし――記憶は封じられる」

「なぜだ」

「この地上は――神の牢獄ろうごくだからです」

 沈黙。

「自由を奪われた世界。だから記憶も奪われる」

 神庭は肩をすくめる。

「……どうでもいいな」

 立ち上がる。

「メシ探してくる」

 森へ消える。

 そして――

「いやぁ、食った食った!」

 満足げに戻る。

「何食ってきた?」

 桃太郎が聞く。

 神庭は笑った。

「――イノシシの丸焼きだ」

神庭

白い髪をすべて逆立てた短髪の戦士。ロックバンドのようにツンツンと鋭く逆立ったヘアスタイルで、前髪も後ろ髪も完全に立ち上がっている。髪は純白だが、生え際のみ深紅に染まっている。

顔立ちは若々しく韓流スターのように整った美形で、シャープで洗練された輪郭。細く鋭い眉毛と、相手を射抜くような強い眼光。緋色の瞳。余裕と自信を感じさせる大きめの唇と、わずかな笑み。

上半身は破れた黒い和服を羽織っているが、袖はなく、鍛え上げられた筋肉質な体が露出している。両腕には黒い布が巻かれている。画像生成。


これでChatGPTで画像生成できます。

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