↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/100

97話  もう一つの戦い


「アン姉ェどうしよう!?リョウ兄ィが死んじゃう!」


「………死なせません」


なつめが去り、兵達は周囲を探索する。しかし一方でアンリはもっと大きな敵と対峙していた。六樹の死という敵と


「外傷は軽微、問題は……重度の内出血」


症状を鑑定するアンリ、そこにリベルがこう提案した。


「アン姉ェ!今すぐ教会に運ぼう!手伝って貰えればすぐ治るかも」


「ダメです。今動かすと逆効果です。それに時間も惜しい。ここで最低限の治療をします」


「!!」


するとアンリはリベルが腰につけているナイフを指差した。


「リベル。そのナイフ、貸してください」


「え?いいけど何に使うんだ?」


リベルは腰からナイフを取り出しアンリに手渡しながら聞いた。


「リョウの皮膚を裂きます」


「…え?」


リベルは信じられないと言った様子でアンリに聞き返す。


「これ以上傷付けてどうすんだアン姉ェ!?」


アンリはナイフを綺麗に拭き取り、浄化魔法で消毒しながら答えた。


「リョウの体、特に皮膚は魔法を通しづらい。」


「外傷ならともかく、内出血の場合外から魔法をかけ続けても効率が悪い。だからーー」


「ーーー皮膚を裂いて内側を直接治す」


「!」


アンリのその言葉にリベルは息を呑んだ


そしてアンリは六樹の服をはだけさせ腹にスッとナイフを入れた。



どぷっ!!  と


まるで水袋を切ったかの様に赤黒い血が溢れ出した。

それを見たリベルが真っ青になった。


「うっ……!!」


吐き気が湧き上がったその時



「堪えなさい。患部が汚れます」



アンリはそう言い放った。普段の優しいアンリとは違う。今のアンリはリベルに顔を向けていない。ただ一言そう言った。



「くっ……くぅ〜〜……ん!!ふぅ、ふぅ…」



リベルは必死に堪え、抑えつける。


そしてアンリは六樹の中を覗き込む。


「胃壁に複数の裂傷。脾臓に深い裂傷……肝臓にも損傷あり」


アンリは黙々と六樹の容態を確認していく。


「アン姉ェ、どこでそんな知識を?身体の中ってそんなに分かってんのか?」


「リョウに教えてもらいました。おかげで今こうして役立ってる」


アンリは作業を続けながらそう答えた。そして


「腹腔内出血多量、ここでしたか」


「……しかし、大血管は無事です」


「……アン姉ェ?」


リベルが不安そうな声をだす。するとアンリは少しだけ柔らかい表情でこう言った。


「大丈夫、間に合わせます」


そしてアンリは近くにいた者に指示を出した。


「清潔な布を!!最低でも5枚!出来ればなるべく多く持ってきてください!!」


「リベル、リョウを押さえていて下さい。動かないように」


「分かった」


リベルは六樹の体をギュッと押さえて固定した。


するとアンリは懐から赤い宝石の様なものを取り出した。それはいつか彼女の友人が贈った魔石だった。


「ルーナ、使わせて貰います」


アンリがそう言うと、赤い宝石は砕けた。そしてアンリに多くの魔力が宿る。



「では、治療します」



アンリは人差し指と中指だけを立てて六樹の体内に入れた。さながら触診の様だった。


「アン姉ェ!?」


予想外の行動にリベルが驚いた声を上げる。アンリは手を止めずにこう言った。


「皮膚程ではないにせよ、それでもリョウの体は魔法が効き辛い。だからこそ今生きてるのですが……」


アンリは六樹を守る加護であり、救う為の障壁である体質について苦々しい表情で説明した。


「だから、全体に大雑把にかけるより、必要な箇所に集中して治した方が効率的です」


そしてアンリの指が損傷部にたどり着いた。


「見つけた!!」


アンリはすかさず詠唱を開始した。


「いと慈悲深き我らが神よ!かの者を死から遠ざける祈りを聞き入れよ!回復:上(ヒール)!!」


六樹の体が癒しの魔法が集中的に注がれる。六樹の体が反射的にビクビクと震える。


「リョウ兄ィ〜!大人しくしてろ!!」


リベルがそれを必死に押さえつけた。そして1時間にも感じられる一瞬の時の後


「………ふぅ…これで、最も損傷が激しい部分を治せました」


アンリはそう言って、表情を緩ませた。リベルも少しだけ肩の力を抜く。そしてアンリはすかさずこう続けた。


「では、次にいきます」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぁ〜〜!!!」


六樹が飛び起きた。そこは真っ暗な場所だった。しかし見覚えがある。この街の教会の医務室だ。


真夜中の医務室に六樹はいた。


「はぁ……はぁ……はっ!はっ!………生きてる」


六樹は信じられないと言った様子でいまだに動いている自身の心音を確かめる。


六樹は腹部に手を当てた。


「……なんだ、これ」


痛い、まるで腹の内側のあちこちを切りつけられた様な痛み


だが、あの時ほどの激痛ではなかった。

それよりも、身体の中を無理やり繋ぎ直されたような奇妙な感覚が残っている。



「……俺、どうなったんだ?」



あの時感じたのは身体の中が爆ぜる感覚、そこからは悶え苦しんだ以外の記憶が曖昧だ。


いや、一つだけ鮮明に覚えている。


突然苦しそうにしたなつめの事だ


「……………………なっちゃん」


なつめがなぜ急に攻撃してきたのかは分からない。だが薄れゆく意識の中で聞こえたのは彼女の懺悔と後悔だった。


ふと足元に違和感を感じた。そちらを見ると、アンリが六樹の寝ていたベッドにもたれかかった状態で静かに寝息を立てていた。


六樹は静かに近くの毛布をアンリにかけた。

聞かなくても分かる。彼女が何をしてしてくれたのか。それだけは分かる。



「アンリ、ごめん……………でも、本当にありがとう」



よく見ると、病室の隅のソファにリベルが寝ていた。


「お前にも心配かけたな…」


六樹は起こさない様に静かに声をかけた。


「あれが、死ぬ時の感覚か……初めてだな」


「あんな感じなのか……」


六樹が静かにそう呟いていると内側から声をかけられた。


エスタ(起きたか、今回はやばかったな相棒。流石に死ぬかと思ったぜ)


「エスタか…悪い、俺の我儘で迷惑かけたな」


エスタ(俺たちは一蓮托生だ、構わないさ。どうせ俺は余生を過ごしてるつもりだしな)


エスタはあっけらかんとした声色でそう言った。エスタが精霊であるためか、はたまた単なる性格なのか、とにかく今はこのドライさが有難い。



「………俺の耐性を踏まえて、内側から壊した。なつめはそう言ってたな」


六樹は自分の腹部を気にしながらそう確認した。


エスタ(まぁ内臓を直接攻撃出来れば誰でも死んじまう。問題はどうやってそんな事が出来たかだな)


六樹はなつめとの一連の流れを思い出していた。そして


「ポイントシフト………座標攻撃か」


そう答えに辿り着いた。


エスタ(なるほどな、俺たちのいた場所に魔法を発動する様に仕組んだのか、考えたな)


「なつめの手札は主に4つ、魔力を圧縮して直接ぶつけてくる攻撃魔法(アサルト)、広範囲に撒き散らす衝界(インパルス)。おそらく防御貫通技の穿界魔法(ペネトレーター)。そして物を操る操作魔法(マニュピレーション)。攻撃方法は見た限りだとこの4つだった」


エスタ(まぁシンプルっちゃシンプルだな?あの爺さんみたいに派手な感じじゃねぇ)


エスタはヴェルフ翁を引き合いに出してそう言った。


「そうだな、でもここに連射とか魔法陣の即時展開、回転や、何より座標指定なんかが入ってくる」


エスタ(シンプルだが、とことん洗練されてるな。そういう奴は強い)


エスタはそう静かに言い切った。


「動きに無駄がなかった。速攻で攻略を組まれた感じだった」


エスタ(まぁそうだな、で?黙って受け入れる弾でもねーだろ?相棒)


エスタはそう発破ををかけた。六樹は少し笑いこう言った。


「当たり前だ、次はこうはいかない」


エスタ(それでこそ百足ってなもんだ!)


そして、六樹は話を変えた。


「……でも分からない」


エスタ(なんの事だ?)


「なつめの事だ………」


そして六樹は本題に入った。


「なぁエスタ………ア(・)レ(・)、誰(・)だ(・)と(・)思(・)う(・)?」


今回はアンリの活躍がメインです。

彼女は本気の仕事になると逆に凄く冷静になります。

対してリベルは分からないながらも健気に手伝ってます。ルーナの誕生日プレゼントも役に立ちました。


設定としてはこの世界の治療行為は基本魔法で「何とかなれ〜」なので外科とかの概念があまり無いです。だからリベルは治療の為に刃を入れる事に驚いてました。アンリは六樹から色々教えてもらってたのが役立ちましたね。


何も解決してないですが紅なつめ編終了です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。