しばし休息:サラマンダー
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ローズが戻った時、城内のウィリアムとローズが暮らす別棟は静まり返っていた。
というのもローズの出立後、ウィリアムも国内巡行に出かけたからだ。
留守番役のカゲとエドガーは宮中の国王執務室の手前の秘書室に陣取って国王代理の仕事をしていた。
サラマンダーは一人さみしく、塔の5階でお湯につかっていた。
これはローズが 自分の湯船に水を満たして行ったので、
その水に含まれる魔力を使ってサラマンダーが保温しつつ自分も温まっていたのである。
そこに ひょっこりとローズが返って来たものだから、
「えっ えっ えっ 貴方誰? どういうこと??」
ローズはびっくり仰天。
「お帰りなさい。僕 カゲと仲良しのサラマンダーだよ。
僕に 名前を付けてほしいな」サラマンダー
「えっ? あなた カゲと契約しているんじゃないの?」ローズ
「僕は すでに解放してもらったから。
なんならカゲに尋ねてくれてもいいよ。」サラマンダー
「わかった。
ところで 私としては ゆっくり一休みしたいんだけど」ローズ
ピンポンピンポン
鍵っこ妖精からのお知らせが入った。
「カゲさんが 入室許可を求めておられまーす。
ローズ様が いらっしゃるって言ってもいいですかぁ」
「しかたないわね、DKへお通しして」ローズ
「了解でーす」鍵っこ妖精
DKにて カゲと対面するローズ。
「おかえりなさいませ」DKに入ったカゲはうやうやしくお辞儀した。
「ただいま」
「さきほど ローズ様がお帰りなったとサラマンダーからの知らせを受けて 飛んでまいりました。
なお ローズ様のご帰還の知らせについては 私からはまだ 誰にも申しておりません」カゲ
「ゆっくりと休息をとりたいので
私の帰還は内密に。
また すぐ出立するかもしれないし。
でも 食料確保は気になるわ」ローズ
「お食事の手配と 内密の警備はお任せください」カゲ
「それと サラマンダーとあなたの関係はどうなっているの?」ローズ
「私とサラマンダーの間には 魔法契約により結ばれております。
私が依頼したことをサラマンダーが引き受ける
サラマンダーが 私との契約破棄を望めば 私との関係はそれで終わり
と言う契約でした。
そして あの者は 自分の力が尽きようとしたときに
あの者は 私との契約を解消したいと言いました。
愚かな私は、あの者が弱ったのは、老衰のせいだと勘違いしたのです。
それで あの者を一人で死なせるのが嫌で契約破棄を断って
あの者を引き留めてしまいました。
そして 私なりに 滋養のつくものを食べさせたり努力はしたのですが
それは見当違いも甚だしく
あの者にとっては迷惑行為であったようです。
そんな時に ローズ様がいらっしゃいまして、あの者を癒してくださいました。
おかげであの者は元気を取り戻し、ローズ様出立後
あらためて契約破棄して欲しい、私にこれ以上使役されるのは嫌だと申しまして
私も これまでの己の過ちの数々に気づかされまして・・
私は、あの者との契約破棄に同意いたしました。
といっても 私の立場上 ここに無関係な精霊を放置しておくことはできませんから、
一応 私とサラマンダーとは今でも協力関係にあるということになっています。
その内容は あいまいですが。
私としては これ以上 あの者に迷惑をかけたりあの者を苦しめたりしたくありません。」カゲ
「じゃあ 私が あのサラマンダーの契約者となれば」ローズ
「どうか あの者のことをよろしくお願い致します。
私とあの者との関係がきっぱり切れておりますが、
私があの者に感謝していることに変わりはありません。
また ローズ様が あの者の命を救ってくださった御恩への感謝の念に変わりはありません」カゲ
「わかりました」ローズ
カゲが退出したあと、ローズは DKに浮かんでいたサラマンダーに目を向けた。
「カゲには サラマンダーが見えなかったみたいだね。
気配は感じていたみたいだけど」ティンカー
「つまり 僕は フリーの妖精なんだ。
名前を付けてほしい
もう これ以上人間に使役されたくない。
でも 一人で暮らすのもさみしいから 契約者が欲しい」サラマンダー
「サラ」ローズはサラマンダーに呼び掛けた。
一瞬赤い髪の女の子の幻が浮かんだがすぐに消えた。
「ありがとう。
ねえ 僕は自由な妖精でいたいから 火トカゲの姿のままでもいいかな?
それと カゲの前に火トカゲの姿であらわれてもいい?」サラ
「私の不利になることを一切しないこと!
カゲの要求にこたえないこと!
私以外の者の命令やお願いに従わないこと!
自然の摂理を守ること!
約束しなさい」ローズ
「約束します」サラ
「なら カゲとおしゃべりすることを許すけど、ほだされないでね」ローズ
「君って ほんとクールだね」サラ
「相対的に大きな力を持てば そうならざるを得ないですよ。
善良であろうと心掛けるならば」ローズ
「才能のある者は ねたまれたり、責任だけを押し付けられて、大変だね。
君の悩みや苦しみを分かち合えるだけの力のある人間と巡り合えなくて」ティンカー
「認めたくない真実を言わないでよ。」ローズはぼやいた。
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