配置転換
ローズは ウィリアムに 昼食の連絡を行なった時のエドガーとの一件を話した。
ウィリアムに付き添っていた影の長は、やはりローズの傍付きを女性にかえた方がいいと言った。
とりあえず候補に挙がったのが ウマイイの妻であるフクフクである。
フクフクは エドガーよりは料理ができる。
エドガーと違って 影の者に属する者であるから口が堅く 己の立場を踏み外すこともない。
何よりも女性であるから ローズに横恋慕する心配もない。
「しかし 護衛という点では どうなのだ?」ウィリアム
「ローズ様にとって 必要なのはプライバシーが守られ安眠できることなのではないでしょうか?」影の長
「ピンポーン」ローズ
「我々影の者が、屋上と3階で見張っておれば
4階5階が襲撃されることは まずありません。
それに ローズ様にとっては エドガーが護衛につくよりも、
もっと実践的な情報をお伝えしておく方が重要かつ緊急ではないかと思われます」影の長
「まったく同感
私は門限について、何も知らなかった。
エドガーが護衛につくよりも 緊急脱出路とか 護衛の配置情報を教えてもらっている方が よっぽど役に立つわ。」ローズ
「敵か味方かわからぬものに それを教えるバカがどこに居る?」ウィリアム
「あなたが それを言いますか?
いつだって 私と同じ部屋で生活をしたがっているあなたが!」ローズ
「それとこれとは 話が別だ!」ウィリアム
「私はあなたの妾候補ではないと 何度言えばわかるのですか?」ローズ
「誰もそのようなことを考えていない!」ウィリアム
「嘘おっしゃい。
女性が就寝中の部屋に侵入する自由を求める男が」ローズ
「その件に関しては、ローズ様の言い分が正しいと思います。
たとえ ウィリアム様が そこまで明確に意識しておられなかったとしても」影の長
「ですがまた ウィリアム様が 本気で 神子様の安全を考えておられたことも事実でございます」影の長
「私を彼の敵から守るための安全確保ですよね。」ローズ
「さようでございます」影の長
「なら今は 私を信頼して情報を共有する方がお互いの為だと思う」ローズ
「それと 話をいったんもとにもどすと、
エドガーをこれ以上単独で5階に置く必要はないし、
かえって私にとっては不安材料にしかならないわ。
彼が無意識のうちに発する気配が不安よ。」ローズ
「いくらまじめな若者でも、一般人であるエドガーには、我々影のように己の感情を殺す訓練がなされていませんから。
無意識にうちに ローズ様に異性を感じて反応してしまうのでしょう。」影の長
「だが 傍付きは必要だ。
部屋の掃除や食事の支度をするものが必要であろう?」ウィリアム
「常時でなくても良いわ」ローズ
「保安上の問題から 王と神の愛し子様が召し上がる料理は5階のDKで調理することが望ましいと私は考えております。
ですが 食事の準備と片付けの時以外は フクフクが この部屋にとどまる必要がないとローズ様がお考えなら それはそれで構わないかと。
ただ その場合 ローズ様が 私どもに連絡したいときにどうするかという問題がありますが」影の長
「エドガーは 今まで 取次の役目をどのようにして果たしていたの?」ローズ
「あいつは 俺の近習だから 王宮内を自由に動きまわることができた。
それに 俺のスケジュールも常に把握していたからな」ウィリアム
「朝夕の食事の時以外に あなたに連絡を取る必要ができたときに どうすればいいかは そちらで考えていただけますか?
私としては いざとなれば 扉にでも伝言メモを貼りますが」ローズ
「しかし 神聖文字を読めるのは 私とカゲとほかには誰が居る?」ウィリアム
「我々は読めますよ。エドガーは読めないようですが」影の長
「つまり 影の者は全員 神聖文字が読めるの?」ローズ
「このことは内密に。」影の長
ウィリアムはポカンと口をあけた。
「俺も そのことは知らなかったぞ」
「表の方が 裏のことまでご存じないのは当たり前のことです」影の長
「つまり、神聖文字というのは一般的に使用される文字ではないのですね?」ローズ
「そうだ。
そもそも なぜあなたが知っていたか それを知りたい」ウィリアム
「それは 神の加護です。
それより こちらで一般的に使われている文字や本を見たいです」ローズ
「ああ それは用意しよう。」ウィリアム
「我々としても、ローズ様が 一般的な文字を使用してくださった方が助かります。
神聖文字をむやみに人目にさらしたくありませんから」影の長
「了解」ローズ
というわけで、
・ローズの傍付きはエドガーからフクフクに変更
但し 式典などの場合の 神の愛し子親衛隊隊長としてのエドガーの地位は当面保全
・フクフクを傍付きにする前に まず、ローズがフクフクを面接してその可否を決める
・フクフクの試用期間を1週間ほどとる
・ローズとウィリアムの時間外連絡方法が決まるまでは
内階段の扉の階段側にメモを貼り付けて時間外連絡をする。
その時は ローズが4階の内階段のドアに階段側から鍵をかけないこと。
ローズが一般的な文字を覚えるまでは 神聖文字を使う
・ローズが一般的な読み書き・一般教養を身に着けられるように 書籍・教本を速やかに手配する
ことが決まった。
「あーやれやれ」そう言って ローズは立ち上がった。
ローズとしては、内階段のドアの内鍵二つを外すことに 若干の不安を感じたのだ。
ウィリアムは 4階にひかえさせていたエドガーに 今回の決定を伝えに行き
影の長は フクフクや配下の者への伝達に行った。
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