寝坊助ローズ
翌朝、朝食のために5階のDKに行くと、ローズはまだ眠っていた。
というか ローズの部屋の前に 「起こすな 眠い」の張り紙がしてあった。
相変わらずの神聖文字だ。
ウィリアムは 仕方なくエドガーと二人で朝食をとった。
「まいったな。
今日は ローズと一緒に過ごそうと休日にするつもりだったのに」ウィリアム
「目下の所 国王様の予定を把握しているのは、私たち配下の者だけなのだから、休日を明日とふりかえても 本日の午後からにずらしても特に問題はありません」エドガー
「だったら ローズが私と話す気になったのなら 呼びに来てくれ。
どうせ 国王としての仕事などめじろ押しなんだ」
ウィリアムは投げやりにこたえた。
・・
ウィリアムが執務のために塔を出て行った頃、ローズは もぞもぞと起きだした。
エドガーは いつものようにDKを片付けた後は、自分の控室に引っ込んでいた。
そこで ローズはDKのドアにも内鍵を取り付けて、他の者が勝手に侵入できないように施錠した。
それから まずは 契約している精霊達を呼び出した。
というのも 身近に 契約を求める精霊や妖精の気配が迫っているのを感じたからだ。
そこで 現在契約中の精霊以外は 結界の外へと念じたのだ。
そして 朝食を食べながら 現状確認を始めた。
「一体全体 どうなってるの?」
まずは単純な問いかけから。
チグリスは、ローズの入れた紅茶を飲みたがった。
「あなたの魔力はおいしそうなのだ。
だから 人外の多くがあなたに魅かれるのだ。
契約して あなたの求めに応じれば、あなたの魔力に触れることもできる。
もしかしたら あなたから魔力を分けてもらえるかもしれないと期待もできる。」
ビッチビッチと空中で飛び跳ねる青い鯉があとをひきとった。
「実際 私は 偶然あなたから清水と名付けられて形を得た。
それで欲が出て、新しい名前をねだってつけてもらえて 龍になることができた。
私は あなたと出会えた幸運にも、私に力を与えてくれたあなたにも感謝している。」
「しかも あなたは ポセイドンの加護も得た。
ポセイドンとの出会いは、ウィリアムを通してであったが、
ポセイドンがあなたを認め、無償であなたに加護を与えた。
ティンカー率いる光の精達が 無償であなたに愛を注ぐように。
そして あなたは 我ら水の精に 大いなる施しをした。
だから 人外たちが一斉に貴方に注目をし始めたのだ。
あなたが無知で無頓着なこと、そして大きな力をもち、それをやすやすと他者に譲り渡したことが人外たちの間に知れ渡ってしまったから。
ちなみに 私が今 あなたの入れた紅茶を飲みたいと言ったのは
貴方が紅茶を入れるために魔力で湯を沸かすから、
貴方が入れた紅茶にはあなたの魔力が溶け込んでいるのに気付いたからだ。」チグリス
「私の魔力のまざった湯を飲むと あなたにどういうメリットがあるの?」
「私の力が増す。何の条件も付けずにあなたの魔力を与えられれば
私はあなたから得た力を自分の思うように使うことができる。」
「私や人間に害を与えることに使わないでね」
そういって ローズは チグリスに紅茶を出した。
「ありがとう。
あなたは 本当に 素直で優しい善意の人だな」
チグリスは 嬉しそうに紅茶を飲み干した。
しばらく目をつぶって 紅茶の余韻浸っているように見えたチグリス。
「ポセイドンは海の神だ。
この世に多くの神が居た時代を覚えている存在がポセイドンだ。
彼は 海の神だから 海を離れることができない。
しかし ローズ あなたともっと話したがっている。
だから ウィリアムと言ったか?あの若者から依り代となるモノを受け取ってほしいと彼は望んでいるようだ」
「彼ってだれ?」
「もちろんポセイドンだ。」
「なぜ ポセイドンの望みがあなたにわかるの?
なぜ 昨夜会った時にポセイドンが直接私に言わなかったの?」
「私は 水の精であり、ポセイドンにも触れたので、ある程度のつながりができた。
私はすでに あなたの加護を受けていたので、ポセイドンに触れても彼に飲み込まれることなく 自我を保つことができている。
それほど あなたの持つ力は大きい。
あなたが 無意識に私たちに与えた恩恵は大きい。
受け取った私たちにも 予期できなかったほどに。
貴方が警戒心を持てば あなたの結界も変化する。
あなたが 警戒するほど 自由なかかわりはむつかしくなる。
しかし あまりに無防備すぎるあなたを守るには、
ウィリアム王やその配下の者達の強い警戒心が必要だと思う。
それやこれやで 今はもう ポセイドンと私が自由に接触することはできなくなったが、あなたとポセイドンの連絡用に、ウィリアムから依り代を受け取ることを ポセイドンは望んでいると先ほど連絡があった。」
はぁ~とローズはため息をついた。
彼女は よくわからぬ事態に接すると 怒りまくるか
ため息ついて逃げをうつか 傍観するかのいずれかしか対処方が浮かばないのだ。




