撤退
「っと。……うん、こんな物かな」
大きな瓦礫を魔法で浮かせ、角に移動させた。未だに小さい破片なんかは転がっているが、問題はないだろう。
少し片付けていて気が付いたのだが、元々瓦礫は左右に寄っていたり、大きいものは少し動かしたような跡があった。
これが魔物なのか、はたまた過去の文明の人物が動かしたのか、それとも僕らが来る前に発見していた冒険者がやったのかはわからないが、過去の文明の人物や冒険者の場合はめぼしいものは残っていないだろうし、魔物であれば壊されていたり他の場所に移動されている可能性が高く、更に遭遇の警戒をする必要がある。
そのことを共有してから作業に戻ったのだが、意外な事に幾つかの小さな遺物が瓦礫の山に埋まっていた。
僕が見つけたものは小さい空の小瓶と鍵のような形の石で、他にレアが僕見つけたものと同じような見た目の、中に水色の液体が入った小瓶を、グレンとジウが細部の異なる小さい剣の様な形の石を、リーシェが小さいポーチをそれぞれ見つけていた。
「一つ目の部屋だけど、結構見つかったね」
「はい!」
「取り敢えず分けてしまって、先に進みましょうか」
危険なものの可能性もあるため、普段使い用ではない異次元収納に分けて収納する。
過去には急に爆発したものや、落とした拍子に棘が飛び出してきたものなんかもあるらしいしね。
「……どっちから行く?」
正面は進めないから、右の通路か左の通路の二択。
「二又の方が早く探索し終わりそうですし、右がいいと思います!」
「他の意見は?」
真っ先に自分の意見を述べたグレンの案に対して反対する理由もないようで、全員が首を振った。
僕としても断る理由もない。
「じゃあ、右の……右の方行こうか」
右の二又の通路を右に慎重に進む事数分、二つ変化があった。
一つは、床の材質か何かが変わったこと。音が響きにくくなり、静かになった。
もう一つは、奥から微かに腐乱臭や鉄のような匂いが漂ってきていること。とは言っても、気をつけなければ気が付かない程度で、気にしようとしなければ不快感もない。
実際、気がついたのは僕、レア、リューク、エントル、アリア、リーシェだけで、グレンとジウは言われて初めて言われてみれば、となっていた。
「血の匂い……かな」
単純に食べ物が腐っている可能性もあるが、人や生き物の死体があってもおかしくない。
「そうね。気を引き締めましょう」
レアがそう言って全員が改めて覚悟した時、僕の探知にも変化があった。
少し奥から、両側の壁に微妙な凹凸が現れた。本当に少ない凹凸で、奥の方の大雑把な把握では反応できず、気がつくのに少し時間がかかった。
「……多分、扉、かな」
鍵穴があるわけでもないが、正面の扉に見た目が似ている。ただ、こちらには模様などはなく、薄い長方形の出っ張りがあるだけだ。
それが、等間隔にいくつも並んでいる。
因みに、こちらも開かなかった。
「…………あ」
「……何かあった?」
現在広げているギリギリの所で、空いている扉を発見した。
そして、その中には大小様々な骨や肉片が放り込まれたように乱雑に散らばっており、床にはよくわからない液体が垂れている。
やはり凹んでいる壁は扉になっているようで、中は個室になっているらしい。
「何かの死体。この奥に空いてる扉があって……その中に」
「……行きましょ」
警戒しつつもそのまま進み、空いている扉の部屋をそっと覗き込むと、そこには凄惨な光景が広がっていた。
床には黒い液体が死体……人の骨や魔物の頭蓋、肉塊、肉片の山の下に溜まっていて、元々は白かったであろう壁には大量の血が飛び散り、赤黒く染めている。
「うっ……」
その光景に、後ろから覗き込んだアリアが口を押さえ顔を青くする。
人の死体は全て骨になっていて相当前のものであると考えられるが、魔物の骨にはいまだに腐った肉がついていたり、そこまで時間のたっていないようなものも見受けられる。
更に、生きてはいないのだが、脈打っている肉塊もあるのだ。多少血や死体に耐性があっても、気分が悪くなるのは仕方ないだろう。
(気になるのは……どう見てもここで戦闘があったにしては死体が一箇所に固まり過ぎていることだ)
勿論部屋中に散らばっているものもあるが、殆ど一箇所に山積みになっている。
まるで、誰かが態々集めたように。
しかし、その割には山から遠い壁や天井にも血が多く付着している事が不自然に感じる。
「アリア、大丈夫か?」
「アリアさん、大丈夫ですか?」
そんな声が聞こえ振り向くと、アリアが蹲っており、グレンとリーシェが看護していた。
エントルとジウは二人が即座に駆け寄ったのを見て、周囲の警戒に回ったようだ。
レアはそちらをチラリと確認し、そのまま部屋の観察に戻っている。リュークは少し気分が悪そうだが、アリアに時々視線を投げつつ中の確認に加わった。
「……大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」
そう言って、ゆっくりと立ち上がる。
二人に笑顔を向けているし、動けなくはないだろうが、万全とは言い難い。
「少しでも影響が出そうなら無理しちゃ駄目だよ。直ぐに帰ろう」
気丈に振る舞うアリアに、言葉を投げる。
いつでもは無理だろうが、生きていればまた探索には来れるのだ。
「そうね。命なければ宝も無価値とも言うし……辛ければ遠慮なく言って頂戴」
レアも賛成し、他のメンバーも反対意見はないようだ。
「よし、帰りも警戒は怠らずにね」
冒険者の予定が狂うことは日常茶飯事ではあるし、もう少し探索したくはあるが命にはかえられない。
成果0ではないし、生きて帰れば成功だ。
自分で妥協できるラインの文章が書けずに流石に止まり過ぎたので妥協ラインを下げます。遅れてすみません。更新頻度上げます。完結させてから加筆修正します。




