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第1話
少女は、胸を躍らせていた。
朝の淡い日差しに照らされ、誰も居ない廊下を早足で歩きながら。
上靴が廊下の床と触れる感覚、校庭から聞こえる陸上部の声、かけがえのない時間…。
2年3組の扉を勢いよく開け、目を閉じて、一番乗りの教室の空気を思いっきり吸い込む。
そのとき、教室から廊下へ、風が抜けた。
(窓が開いている?)
少女は、静かに目を開いた。
窓から吹き込む風で、教室のカーテンが左右に勢いよく広がっていた。
そのカーテンの真ん中、窓際の席に、先客が座っていた。
教室に先についていた彼女は、少女を認めると不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
「待ってたよ、るい」
少女は、教室の入口で驚いた表情を浮かべていたが、やがてつられるように口角を上げた。
「始めよう、もう一度。私達の…」