9話
さて。今日はピクニックにお出掛けです。
嘘です。
エリーナさんが魔獣を石にする所が見たいからって、森より南下して隣国と渡るように聳えている
シルトル山脈の麓で魔獣退治です。
エリーナさんの森は結界張ってるから魔物出ないので出張なのです。
お弁当持ってピクニック気分ですが、沈んだ気持ちになります…。
一番雑魚っぽいガルムという犬っぽい奴も、1,5割の増幅石になりました。
ゴブリンは低レベルのモンスターだけど、群れで来るので厄介なヤツらしいです。
私の掌から銀色の線みたいなのを出したりするのに疲れたりはしないのですが、
そこから熱の中心に力を集めるのには、少し労力が要る様で、多少疲れます。
あと、相手が魔獣なので、容姿が…気持ち悪いのも精神的にキます。
でも、倒す相手が可愛い小動物だと、倒せそうにないので、仕方ないのか、どうなのか。
あまり自分で生物を殺す事なんてしたことないので、悩みます。
魚だったら、捌けるんだけどな~。哺乳類的なのはキッツイわ~。
なんて現代っ子的な悩みでう~んとか唸ってたら、そんなことは気にも関せず
「ねぇねぇ~。も少し強いヤツいってみな~い?」
……。異世界人の人は逞しいです。
「あんまりグロイ容姿のは無理です」
「大丈夫よ~。犬っぽいのが狼っぽくなるだけよ~」
「それって、大丈夫なんですか?」
「大丈夫です!」
エリーナさんはザッカッザカと奥に進んで行ってしまうので、仕方なく付いていきます。
で、止まって
「しっ!」
太い幹の影に隠れたので、私もその後ろへ。
「いたいた~。フレキね。単独だからイケると思う。頑張って~」
「えぇぇぇぇぇえ」
「ほら、頑張って~」
しくしくしくしく。
恐る恐る出て行って、その狼っぽいやつを見たら…。
さっきの犬の何十倍でかいんだろ。
つうか、私の倍あるって!
フレキという狼の魔獣は、銀色と黒っぽい毛に覆われ、四足で立っている。大きさはリトリーバーより一回り大きい。かなりの大型です。立ち上がったら私くらいありそうなんですけど!
鋭い眼は赤色で、正気の沙汰じゃない感じだし、口から覗く牙とかでかくて、
え~と、え~と、こんなん確実に死亡フラグです!
おしっこちびります!
「む、無理!」
思わず叫んでしまったら
「大丈夫!いける!ほらビシュッとやっちゃいな~!」
グルゥゥゥ……
思いっきり威嚇されてるし!
あ~~もう!女は度胸!
殺られる前に殺れ!
「いっけぇ~~~!!!」
途端、熱くなった掌から、飛び出す一本の銀の線が真っ直ぐに狼目掛けて伸びる!
何の抵抗もなく、ストンと熱の塊に突き刺さると、狼は凍りついた様に固まった。
集まれ!集まれ!
熱よ……集まれっ!
力を込めると、掌が更に熱くなり、狼の熱が集まってくる。
体が大きいからか、集めるのに時間が掛る。
集ま…れ!
フッと抵抗力が無くなったと思ったら、コロンと、また石が転がった。
は~~~~~~。疲れた。
そっと石を拾うと、今までより、少し色が濃い。
「エリーナさん!これ!なんか違うヤツ出た!」
「おぉ~~~!見せて~」
エリーナさんに、狼の石を渡すと、エリーナさんは日に透かしたり、ほかの石と比べたりして観察をする
「これ、2割石ね」
「2割?!」
「やっぱり魔獣ランクで出来る石が変わるのね。
ちなみに、2割石は1大銀よ」
1大銀だと、約十万円!
「す、凄い!」
「面白いわ~。もしかしたら、これ、Sランクの魔獣だったら国宝級の石になるんじゃないかしら!」
「Sランク?」
「そう。ドラゴンとかそういうのよ~」
ドラゴン?!
そんなの無理!
エリーナさんはすっごくいい顔で、事も無げに恐ろしい事を言い出しました。
死亡フラグはまだ立ったままかもしんない…。