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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第4章:オタクの夏休み大改造

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第24話:夏の終わり、評価の行方

 夏祭りの喧騒が遠ざかり、私たちは最寄り駅へと続く夜道を歩いていた。少しだけ秋の気配を含んだ夜風が心地いい。


 前を歩く結城、須藤、美咲の三人が、屋台の感想や二学期の話題で楽しそうに笑い声を上げている。


 私と拓実は、その数歩後ろを並んで……いや、正確には、拓実が私よりも半歩だけ前を歩いていた。



「いやー、最後の射的、アツかったな。須藤、マジで凄かったぞ」


「的が小さいからな。意外と難しかったけどな」


「なあなあ、俺も最後の一発、惜しかっただろ?」


「いや佐藤、お前のは完全に明後日の方向飛んでたから!」


 前を歩く結城たちの会話に、拓実がごく自然なトーンで混ざって笑い合っている。


 いっちょ前に会話のパス回しに参加できるようになったわね。さっきの迷子への対応も、悪くはなかったし。



 半歩前を歩く幼馴染の後ろ姿をぼんやりと眺めていると、街灯のオレンジ色の光が、その姿をふいに浮き彫りにした。



 ……あれ?



 こいつ、いつの間にか健康的に日焼けしてるわね。それに、少しだけ筋肉もついたような……。

 毎朝のトレーニングのおかげかしら。


 極端だった猫背も、真っ直ぐに伸びたし、なんだか背中がちょっとだけ広くなった気もするのよね。


 一ヶ月前までは、スライム以下のヒョロガリだったはずなのに……。



 ……って、そりゃそうよね。



 この夏休みの間、あいつはブツブツ文句を言いながらも、なんだかんだで一日も特訓をサボらなかったんだから。


 朝は須藤のトレーニングでしごかれ、日中は私や結城と図書館で中一レベルからの勉強をやり直し、夕方には美咲の外見チェックでボロクソに怒られる日々。


 言い訳で逃げるのをやめて、自分の低スペックさと向き合ってきた結果が、今の拓実なのよね。


 マイナス面が埋まってきたのも、当然のことかもしれないわ。



 せめて『無害で普通の人間』にしなきゃと始めた計画だったけど、順調に目標へと近づいて……。



 ふいに、拓実が振り返って私を見た。不思議そうに首を傾げている。



「……な、なによ」


「いや、さっきから凛子が大人しいから。どうしたのかなって」


「なっ……」


 考え事をしてたせいで会話からフェードアウトしてたからって、拓実なんかに気付かれて気遣われるなんて……腹立つわね。



「なんでもないわよ。前向いて歩きなさい」


「なんだよ、理不尽だな。暗いから、足元元気をつけろよ」


 文句を言いながらも前を向いた拓実の横顔に、卑屈でキモい面影はもう見当たらない。


 『あんたに気遣われるなんて一万年早いわよ』と、いつものように切り捨ててやろうとしたのに、なぜか言葉にならなかった。


 

 マイナスがゼロになった。

 ただ、それだけのことなのに。



 ……なんか調子狂うわね。



 ふと、佐藤のおばさんに言われた言葉が頭をよぎった。



『凛子ちゃんにふさわしい男になろうとして、あの子なりに必死に頑張っているんでしょ?』



 いやいや、そんなわけないでしょ。

 あいつはただ、私に見捨てられないように必死に『普通』を目指してるだけ。それ以外に理由なんてあるはずないわ。



 とはいえ、動機が何であれ、この夏、一度も逃げ出さなかったのは紛れもない事実なのよね。



 計画を主導した私も、フラットに評価をしないといけないんじゃないの?



 私は小さく息を吐いた。


 あいつの成長は、都合のいいラノベみたいな奇跡や主人公補正なんかじゃない。

 全部、あいつ自身が現実リアルで積み上げてきた『結果』だ。


 まだまだ、外見は安定しないし、学力も体力もコミュ力だって、普通とは言えない。



 だけど……私の中の、佐藤拓実という人間に対する評価だけは、ほんの少しだけ『プラス』に動いたんだと……認めざるを得なかった。



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