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今考えると賄さんになんて恥ずかしいところを見られたんだ、見つかった時はそれどころじゃなかったから。 



なんかあの時は難なく済んだけど賄さん俺を見る目が変わってないだろうか? 



目を擦りながら寝起きの顔でトイレに行くと洗面所で顔を洗ってる賄さんが居た。



俺が通ると顔を拭きながら賄さんが「おはよ」と声を掛けたので俺も「おはよう」と返す、いつも通りな感じに少し安堵する。



今日は休みだしゆっくりしてよう、けど部屋に篭っていたら賄さんに例の本を読み耽っていると勘違いされるか? いや、既に捨てるように縛った物をまた解いて読むとか面倒すぎるし見つかった後じゃそんな気にもならないし。



ここは変に振る舞うよりもいつも通りにするのが一番だ、賄さんもいつも通りだし。



トイレから出た俺は部屋に戻ろうとすると賄さんが待っていた。



「あ、宮下君」

「何?」

「や、あのね…… えっと、その」



変にごもる賄さん。 何か言い難いことなのだろうか? まさかあのエロ本どうしてる? なんてことか!?



なかなか切り出せなくて「あうあう」してる賄さんはようやく……



「今日お出掛けしたい…… 一緒に」

「お出掛けね、そっか…… え?!」

「ダメだった?」

「ダメっていうか賄さん俺と一緒に出掛けたらマズくない?」

「マズくないよ? だってちょっと遠くにお出掛けだし」

「そうなんだ」



賄さんからどっかいこうなんて初めてのことだったので俺は驚いていた。 というかどこに行くんだろう? 



「じゃあ準備してくるね」

「あ、うん。 それよりうちの父さんと母さんには出掛けるって言ったの?」

「あ、まだだった」

「じゃあ俺から言っとくよ」

「ありがとう」



リビングに居た父さん母さんに一緒に出掛けると言うと「あら仲良しねぇ」とか言われたのでウザかったが。



そして俺は部屋に戻って着替え終わり携帯をいじっているとドアをノックされた。



「お待たせ」

「ま、賄さん??」



いつものどこにでも見かけるような目立たなそうな服装なんだが今日の賄さんは帽子は被らずほんのり薄ーく化粧をしてるみたいだったから。



俺がそんな賄さんを見ていると少し気不味そうにモジモジとしていた。



「思い切った、どうせ少し遠くだし。 ど……ど、どう思う?」

「どう思うって言われても…… いつにも増して美人としか」

「それはどうも…… ううん、そうじゃなかくて宮下君から見て変じゃない?」

「変じゃないよ?」



そう言うと「そっか」と言って安心したような顔になる。 別に遠巻きから見ても賄さんに変なんてことはないと思う、一見さんからすれば賄さんって普通に美人だし。 



わざわざ俺に変? なんて聞いてこられると俺に気に入って欲しいっておも…… え?! まさか今日帽子も被らずに化粧もしたのは俺にそんな風に思われたいから?? 



変と言えば変なの見られてしまって俺に対して軽蔑的な感情を持ったかもしれないと思ったけどもしそうならこんな態度にならないと思うし……



良かった、あのことは賄さんの中ではさして大したことじゃないどころかなんとも思われてない! いやー、良かった良かった…… って調子に乗るな俺、それはあまり考えなくてもいいことってことだけで賄さんは一体どこに出掛けたいんだろう?



「ところでどこに?」

「んーとね、ここ」

「ああ、動物園ね」



と携帯の画面を見せられて呟いたが思わず二度見してしまった。



「ここなの!?」

「うん」



動物園と言えばここら辺にはないのだ、電車で1時間半は掛かる。 少しと言うか結構遠くじゃないか。



「いや俺お金が……」

「お、お金ならあたし持ってるよ? 電車代も宮下君の分だって出せるしその他にも遊べるくらいだって出せる、あんまり使ってなかったから」

「それはありがたいけどいいのそれ?」

「うん、全然いい」

「でもなぁ、結構高そうだし」

「平気」

「賄さんがよくても俺が」

「大丈夫」

「そうは言っても」

「いいから」



あ、これ以上言うと賄さんまた意地になっちゃうし素直に従おう。



「じゃあお言葉に甘えるよ」

「うん」



ふう、久しぶりに賄さんの譲らないとこ見たよ。 にしたって突然そんな遠いとこでしかも動物園なんてせめて前日とかに言って欲しかったけど昨日はエロ本見つかってそんなこと言うタイミングではなかったのかな? と俺の自業自得かもしれないと考える。



それから地元を抜けて電車で賄さんと向かい合いの席に座る。 



賄さんをよく見てる方に入ると思うけどやっぱり美人だよなぁ、今日は化粧もしてるしもう高校生って言われてもそう見えるだろうな。 そんな賄さんと一緒な俺は多分友達とか彼氏以前に弟とかにしか周りには見えてないだろうなきっと。



「楽しみ?」

「まぁ動物園とか滅多に行かないし」

「そっか、なら良かった」



さっきの押し問答の時はあわやまた賄さん超不機嫌モードかと思いきや今は脚をトントンと小さく開いてたり閉じたりでウキウキしている様子だった。


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