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「なんかさー、面白そうなことねぇかな?」

「例えば?」



休み時間優のとこに行くとポツリと優がそう言った。



「例えば…… ん〜、なんか事件でも起きて欲しいっつーか? それか誰か俺に告ってくる女子が居たりとか?」

「んなことあるわけないだろ、言ってたじゃんお前。 俺らみたいなポテトボーイになんかって」

「まぁそうだけどさ」



ん? 待てよ、あるぞ!



「優、面白そうなことあるかも」

「え? なんだなんだ!?」



優は食い付いた。 そう、この前化学室でイチャコラしていたバカップル。 前は途中で終わったようだけどもしかしたらまた懲りずに来ているかもしれない。 俺も男だしそういうのには興味があった。



コソコソと優に賄さんと高野のことは伏せてこの前のことを話した。 優は興奮した様子でその話を聞く。



「マジか!? 大事件じゃねぇかそれ! 学校で、しかも昼休み中堂々とそんなこと」

「マジマジ、こっそり覗いてみないか? 今日来るかは保証できないけどな」

「げへへ、いいなぁそれ」



よし、この前の消化不良をきっちり精算しよう。



そして昼休みになった、優は「弁当なんか食ってる場合じゃねぇ!」と気合いたっぷりで俺と優は弁当も食べずに化学室の外の死角に張り込む。



今思えばここって廊下側から見える窓もないし外の窓には分厚いカーテンがあるからちょうどいいのかな? ここの廊下の通りも滅多に誰も通らないし。



あれからそんなに日が経ってないし来ないかもしれないとも思ったけどここをそういう場所に利用している奴らが他にも居たりして? という考えもあった、めっちゃ望み薄だが。



「おい椿、本当に来るんだろうな? 腹減ったんだけど」

「来るかどうかはわからないって言っただろ」

「いやいや、そしたら骨折り損だし!」

「こういうのはさ、今日来なくても明日明後日、それか来週も何日も続けないとダメかもしれないって言ったよな?」

「だってよぉー…… お!」

「ん?」



優が何かに反応したので俺達は身を隠した。 



「ねぇ〜、ここって大丈夫なの?」

「ああ、誰も居ないしな」

「帰ってからでいいのに今じゃなきゃダメなの〜?」

「こっちのが興奮すんだろ?」



おお、ホントに来た!! この会話の内容だとこの前のバカップルとは違う奴らみたいだがここって昼休みはそういうことするための場所なのか!?



「聞いたか椿!? マジで来やがった、お前神じゃん!」

「だろ、それよりもっと静かに喋れよ。 バレたらヤバいんだからな」

「だ、だな! ヤベェ緊張する」



カップルが化学室に入ったのを見計らうと扉を細心の注意を持ってそっと開く。 



「お。おお!」



優が歓喜の声を漏らす。 



俺に感謝しろよ? と思いつつ俺もそのカップルの情事を観察すると……



「え?!」

「どした?」

「い、いや、なんでもない」



知ってる奴だった……



この前会った流石先輩じゃねぇーか! 流石だ先輩、モテるっていうのは本当なんだな。 それに相手も凄く可愛い。



「ねえ、あッ、あッ」



優の息が荒くなってきた、見ればもう目が血走っている。 俺もこの間はそんな顔してたのかな?



「あ、あれはまさか手、手……」

「おい、お前ドア開きすぎだって」



徐々にドアを開いていった優を諌めようとしていると……



「何してんの?」

「「げ……」」

「きゃあッ!! 何こいつら!? もしかして覗いてたの??」

「みたいだな」

「サイテーッ!」



流石先輩と一緒に居た女子は流石先輩の頬をひっぱたくと俺達のところに来てギロリと睨み走り去っていった。 そして邪魔された怒りか流石先輩からも睨まれる。



「つ、椿…… どーする?」

「どーするって…… 逃げるか?」



優はコクリと頷いて俺と優は二手に別れてダッシュした。 だが走ってすぐに後ろを向くと流石先輩は俺を追いかけてきた。



嘘だろぉー! そりゃ提案したのは俺だけどさ!



運動神経が良い流石先輩はいとも容易く俺に追い付いて肩を掴まれた。



「すみません! 別に覗こうとかしていたわけではなくて声が聴こえたからなんだろうって思っただけで」

「ああ、やっぱり。 君はこの前のみ…… みや、宮下君!」

「へ?」



さっきまで流石先輩怖い顔してたのに今はカラッとした顔で微笑んで肩に腕を回された。



「いやー、また会うなんてね! しかも俺がプレイしてる最中に」

「ほ…… ほんとすいません」

「まあいいか、俺も君の告白邪魔したもんな」

「あれは…… 告白ではなくて」

「はははッ、フラれちゃったかぁー。 それは本当に悪かったね、でもこれでおあいこだ」

「は、はあ……」



先輩の中では俺が高野にフラれたことになってしまったらしい。 でもそれで覗いてたのをチャラに出来るならいいかもしれない。



「流石先輩ってやっぱり凄くモテるんですね」

「んー、まあね。 自分の売りどころを最大限に活用すればね」

「なるほど」



どんなこと言ったってこういう最初から容姿端麗な奴ならさほど苦労しなそうだもんな。

 


「良いこと教えてあげるよ、俺の経験則だけど女子ってカッコいいのは勿論好きなんだけど本当にキュンとくるのは可愛いなんだよ」

「可愛い?」

「そう可愛いだ。 これは何も外見が可愛いとかそういうことだけじゃなくて、強面の人が実は小動物好きだったり強そうな人が意外な弱点が見えたりとかそういうのだよ」

「勉強になります」



そうか、そういうものなのか。 けど俺って別にそんなところあったか? と思い返してみても顔は別に平凡だしイカつくもないしおまけにチビだし…… 当てはまらないぞ!? ガビーン!!



「まぁ俺には関係ないけどさ、可愛いとこなんて見せずにもほら! 例えばこっちに向かってくるあのかなり美人な子」



先輩が俺の肩に回した手でチョンチョンと指差す方向には……



賄さん!! なんでここを通り掛かるんだよ!?



そんな賄さんは俺と目が合うと他人モード全開だ、多分俺が先輩と居るから。 



「あの子に俺が声を掛けてみよう、それでもし良かったら宮下君と仲良くしてもらうように言ってあげるよ。 なーに、優しい先輩からのプレゼントだと思ってくれていいよ、俺は他の女の子いっぱい居るから忙しくてさ」



なんつーありがた迷惑、いや本来だったらなんて良い人なんだと感激するレベルなんだけど賄さんとはもう仲は良いっちゃ良い方だと思うし。



そんなことを思ってるうちに賄さんが俺と先輩のところを通り過ぎようとした時……



「ちょっと君」

「………」



賄さんは呼び止められたのが自分のことだと思わずにスルー。



「あれ? 待ってよ」



先輩が賄さんの肩を掴むと賄さんの肩がビクッと跳ねた。



「…… はい?」



振り向いて自分より大きい男子の先輩を見上げていつもと同じく冷たい返事、でも少し俺を見て戸惑っているのがなんとなくわかった。



「君って前から思ってたんだけど綺麗だなって思っててさ」

「そうなんですか…… どうも」



こうして見ると先輩と賄さんって美男美女で釣り合ってて傍から見ると凄くお似合いという感じがして自分の場違い感というかなんというかそんな風に感じて、ペラペラといまだ喋る先輩から目をそらして俺に視線をやるが俺はそんな2人を見たくなくて下を向いた時だった。



「あの!」



賄さんがいきなり大きい声で先輩の話をぶった切ったので俺がビックリした。



「ん? なんだい?」

「よくわかんないですけど…… 迷惑なので」

「…… んんッ!?」



賄さんの言うことに流石先輩は固まった、それを見て賄さんはその場から居なくなった。 



賄さんが居なくなると硬直していた流石先輩はクルッと俺に向き直り「フッ」と笑った。



「こんな時もあるさ」



ポンポンと俺の肩を叩いて流石先輩は爽やかに去っていった。 なんか気不味いシーンだったけどさすが流石先輩……



もう昼休みも終わるので教室に戻ろうと階段を登っていると階段の踊り場の角から賄さんがひょっこりと顔を出した。



「ええと…… 宮下君」



キョロキョロと辺りを見回して賄さんは俺に近付いてきた。



「賄さん、さっきはごめん」

「ううん。 ていうよりいきなりなんだったのかな? あたしになんて声掛けてもしょうがないのにね、あはは……」

「そりゃ賄さん綺麗だから」



ってあれ!? 俺先輩と同じようなこと言ってるじゃん!! うわ〜、賄さんもそう思ったかなぁと思っていると……



「あ、ああッ…… りがと。 そ、そういう宮下君も」

「え? 何?」



賄さんがゴニョゴニョと話すのと被って休み時間が終わるチャイムが鳴り聴こえなかった。 



俺と賄さんは急いで教室に戻ったが賄さんの脚がかなり速くて俺は大幅に離されたけど。


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