30
「ごめんッ! しーちゃんにあたしが宮下君の家に住んでること言っちゃった」
家に帰って来たら賄さんが慌てて出て来て首根っこ掴まれて部屋に連れてかれていきなりそう言われた。
「あ、うーん。 そっか、でもいつか言わないとって賄さんも言ってたじゃん」
「うん…… でもまさか今日言うとかあたしも思ってなかったから」
「それって高野にどっかでバレたってことなの?」
「そうみたい。 でもどこでバレたかって聞いてなかった、どこでだろう? まさか女の勘で?」
「賄さんもその勘を働かせてみたら?」
てかどこでバレたかなんてもう問題じゃなくて高野が黙ってるかが心配なんだけど。 余計なお節介してこないといいけどな。
◇◇◇
次の日学校に行くと賄さんはいつも通りもう着いていて高野もそこに居た。
賄さんと隣だからモロにきそうだな……
俺はそのまま席に行かずに優のところに行った。 少し高野が気になって目線だけ高野の方に持って行くとめっちゃ見られてる。
「おっす椿」
「ああ、おっす」
「どしたんだ、高野の奴ずっと椿見てんぞ?」
「そっか? 賄さんに席近いから警戒されてたりして」
と適当なことを言ってみた。
「あいつも心配性だよな、いくら賄さんと席隣だからって賄さんが椿なんか気にするわけないのにな」
「なんかムカつくけどそうだよな!」
そう思ってもらえて構わないけどハッキリ言うなよな。
少し優と話して自分の席に行くと相変わらず居る高野から妙な圧力的視線を感じてチラッと見る。
「何よ?」
「そっちが何?」
「しーちゃん」
賄さんが高野の服をグイッと引っ張る。
「たっくもぉ、はーい。 …… 宮下、そういえばあんたって何か私に言うことない?」
なんか言われると思ったらストレートに聞かれた。 でもみんなが居るところじゃ何も言えないだろ。
「言うこと? おはよう?」
「うん、おはよう。 って違うしッ」
「それってここじゃマズくないか?」
「まぁそうだねぇ。 じゃあお昼食べたら化学室来てよ、あそこ誰も居ないと思うし」
「ええ〜……」
「文句言うなし」
ああ、なんか言われること今からでも想像がつく。
高野が自分の席に戻って行って俺は溜め息を吐いて賄さんをチラッと見ると目が合う。
「ごめん」
ボソッと賄さんが呟いてすぐ前を向いた。
まぁいつかはこうなるってわかってたことだしそれが今日だったってことだ。 ああ、しんどい。
◇◇◇
バン!!
「ひえッ!!」
バン!! と勢いよくテーブルが叩かれてそうくるだろうなと覚悟していた俺とは別に賄さんが驚いた声を出す。
「なんでこんなことになってんのよ!?」
「うひゃッ」
再度テーブルが叩かれてまた賄さんがビックリする。 うひゃッって……
「あのさ、なんでこんなことになってるかってのは俺も思ってることだしさ、それにそう声を荒げたら外から誰か聴いてるかもしんないしもうちょっと落ち着けよ」
「これが落ち着いてられるかっての! 私んとこにスズが来るならまだしもなんであんたみたいな奴のとこにこんな純情で彼氏もいたことないスズを預けなくちゃいけないのよ!? 中学生だよ!! わかってんの?」
「それは俺と賄さんの両親に言ってくれよ、俺だって知らなかったんだしさ」
「あんた…… スズに変な感情抱いてんじゃないでしょうね!?」
「変な感情? 例えば?」
「た、例えば…… す、すす……」
高野がたじろぐ。
好きって言いたいのか? いやまぁ賄さんは好きか嫌いかと言われたら圧倒的に好きな方だけど。
「ね、ねぇしーちゃん言ったよね? 宮下君に変に突っかからないでって」
「突っかかってないよ、でもこいつがスズのことを変な目で見てたら私のキャパじゃ抑えきれないわ!」
「宮下君はそんな人じゃないよ、ね? 宮下君」
「あ、うん……」
まぁ普通に考えたらいきなりそんなこと聞かされた高野のこの反応もわからなくもないけど。
「んー? なんか声聴こえなかった?」
「そうか? 気のせいじゃね?? こここの時間人いねぇし」
廊下の方から声が聴こえて俺達3人はハッと顔を合わせる。 別に普通にしてれば良かったんじゃね? と思ったが賄さんと高野がここに居るのは問題じゃないが俺が居ると何かマズい気がして教団の下に俺が真ん中になり3人ギュウギュウ詰めで隠れると化学室の扉が開いた。
「ちょっと! あんたスズから離れなさいよ」
「あ、う、動かないでしーちゃん、いたッ」
「高野お前少し詰めろよ」
「どこ触ってんのよ変態!」
「し、静かにしろ」
足音が聴こえると3人とも静かになった。
「ほら、誰もいねぇだろ?」
「うーん…… みたいだね」
「じゃあいいだろ?」
「あ、ちょっといきなり…… ん、んんッ」
は?! なんだよそれ?? も、もしかしてここで乳くり合おうってのか? 誰だか知らないがこの状況わかってんのか!?
賄さんの方にチラリと目線だけ移動させると真っ赤な顔になっていた。 そして今度は高野の方に目線を移すと口を押さえてこれまた真っ赤に……
「あんッ…… んふッ」
こうなると耳に神経が集中していてこの科学室の中でどっかのバカップルが何をしているか聞き慣れない音で想像してしまう。
そうすると突如脇腹に衝撃が走る、高野に肘打ちをされた。
お前…… これで俺が声出したらどうすんだよ? てか狭ぇ。
なんとも口にし難い音が聴こえる中少しすると……
「ここで最後までする気? 流石にヤバくない??」
「スリルあっていいだろ?」
「イヤ! 誰か来たらどうすんのよ?」
「誰も来ないって」
居るんだよバカヤロウ!
「ひゃうッ!」
その時賄さんが変な声を出した。 気がつけばこのキツい態勢を変えようと俺の肘が賄さんの胸に当たっていたのだ。
「「え?」」
ヤバッ!
「誰かいんのか?」
「はぁ!? 誰かいるの? だから言ったじゃん!!」
「ちょッ!? おい待てって」
女子の方が出て行って男子は追いかけて行ったようだ。 また静まりが戻ったのを確認すると……
「「「はぁー」」」
俺達はやっと教団の下から出れた。 だが……
「マジで勘弁してよねぇこんなとこで。 ってあんたスズに変なことしたでしょ!?」
「んなこと考えてる余裕ないって」
「余裕があるとかないとかじゃないでしょ変態! スズ、やっぱこいつとは…… ってスズ?」
賄さんはボーッとした顔で教団から顔を半分出して2人が居なくなった場所を見ていた。
「さっきの人達何してたんだろ?」
「な、何ってええと…… なんだろねぇー?」
何ってそりゃナニしてたんだろ…… なんて言えるわけないよな。
「と、とりあえず教室戻ろ? また変なの来るかもしれないしさ」
「うん」
高野は賄さんを引っ張っていそいそと化学室から出て行った。
にしてもまったく…… 思い出したらムラムラするじゃねーか!




