29
私は高野雫、スズからはしーちゃんって呼ばれてるスズの数少ない友達だ。
スズは昔から引っ込み思案でそのくせ大きくて目立ってて可愛かったから尚更目立った、その頃は男子からも気になる女の子はちょっかいを出したくなる年頃だったから男子と女子両方からイジられてた、私もそんなスズのオドオドした態度が気に入らなくてよく揶揄ってたっけ。
でもある時小学校の帰りにママとパパから買ってもらったお気に入りのヘアピン無くしちゃって必死に探しても見つからなくて泣きそうになってたそんな時スズが通り掛かって一緒に探してくれて見つけてくれたの。
それからだなぁスズと仲良くなったの。 揶揄ってたことは謝ったらスズは許してくれて私とスズは友達になった。
スズはああ見えて心を開いた相手にはよく喋るしワガママだし子供っぽくて見た目と違ってそんなギャップが可愛い。
でも最近のスズ、夏休み辺りからかなぁ? ちょっと雰囲気変わって少ししっかりしてきたっていうかなんていうか……
それに変だなって思ったこともある、家に遊びに行ってもスズのパパとママいつも居なかったし。
怪しい、そう思ったけどこれといったこともないし大して気にしないようにしてたんだけどスーパーで宮下に会った時宮下に近付くとスズと同じような匂いがした。
一瞬「え?」と思ったけどそんなわけないよねと考え直したけどスーパー出てく時スズの姿が見えたんだよね。
目立たないようにしてたけどあれは絶対スズ、私がスズを見間違えるわけないもん。
だからなんなの? って思うかもしれないけどあの時見たスズは周りを警戒していた、ますます怪しくなってきた。 だから声掛けづらくてそのまま帰っちゃったけど。
宮下が関係してる? ていうか宮下と今まで接点なんてあった? ないよね別に。
…… でもここ最近宮下に会うしなんか引っかかる、宮下の奴前にスズに用事がありそうだったしそれが??
うーん、なんかモヤモヤする。 スズなんか隠し事してるよね、私にも言えないの?
「スズ、あんた柔軟剤かなんか変えた?」
「え? ああ、うん。 わかる?」
「ちょっと違うかなぁって思っただけ。 スズっぽくない匂いがするなって」
「臭いの?」
「ううん、まぁいいや」
気になったのかスズは自分の匂いを嗅ぎ出した。 とまぁこんな感じだったけどモヤモヤするくらいなら直接聞いてみよう。
ある日の学校スズと一緒の帰り道切り出した。
「ねえスズ!」
「何?」
スズが話をしていた途中で私がぶった切ったのでスズは少し驚く。
「私に最近何か隠し事してるでしょ?」
「うえッ!? 隠し事って……」
図星をつかれたようにスズは戸惑い出した、この戸惑い様やっぱり何か隠してる。 けどスズは大きく息を吐いて私を見た。
「今まで黙っててごめん、しーちゃんにはいつか言おうとしてたんだけど……」
「うん、話してみて」
「あたし宮下君の家に住んでるの、夏休みからずっと」
「…… はい??」
スズがそれまでのことを話し始めた、私はあのスズが男の子と、それもクラスメイトの宮下と一緒に住んでるなんてポカンと間が抜けた顔で聞いてたと思う。
「それでね……」
「ちょ、ちょっと待ってスズ! なんか色々ツッコミどころあるんだけどあんたそれマジなの?! 2人きりもそうだし宮下だよ? 男だよ?? 何かされてない!?」
「宮下君は優しいよ?」
「はぁ?」
宮下のことを言うスズはなんだか凄く女の子みたいな顔で(女子だけど……)まるで好きな人のことを恥ずかしながら喋っている様だった。
「あんた宮下のこと好きなの?」
「え!? す…… 好きか嫌いかで言われたら好きな方だけど」
「嫌いかなんて聞いてないけど」
「あ、えっと…… そ、それよりこのことは誰にも言わないでほしいの!」
はぐらかした、これって宮下のこと好きなんじゃん。 スズがまさか恋愛してるなんて……
「そりゃ勿論スズがそう言うなら黙っておくけどさ、宮下ってスズよりずっとチビだしガキっぽい顔してるしどこが良かったの?」
「べ、別にチビとかそんなのあたし気にしないし寧ろあたしが大き過ぎてイヤじゃないか気にな…… じゃなくて! そ、それに宮下君はあたしが不安だった時に凄く気遣ってもらってガキっぽいとかそういうのじゃなくて」
「もうそれ私に宮下のこと好きって告白してるようなもんじゃん」
はあー、なんか友達のスズがそんなことになってたなんてちょっと複雑なんだけど。
「それと宮下の方はどうなの? スズにベタ惚れ? 前にもスズのこと呼び止めてたじゃん」
「わかんない…… 嫌われてないとは思う、というか好きなのかな? 友達なのかな? 宮下君はあたしを友達として好き?? うーん」
言っててスズは悩み出した。
完全に恋する乙女じゃん!! まぁスズが並の中学生男子より大きいこと除けばスズに惚れないわけないと思うけど。 だってスズ普通に男子からは美人美人って評判だし。
「でもさー、宮下に私がなんか言うのは構わないよね? スズのことだもん、スズに何かあったらあいつ許せないし」
「うん、しーちゃんだからいいけど。 宮下君何も悪くないんだからキツく当たるのはちょっと……」
シュンとした顔になってクイクイッと私の肩の制服を摘んで引っ張る。
なんか言うって言ってもキツく当たるなんて言ってないのに。 スズを傷付けたら許さないって意味で。
「それにしても私の家に来れば良かったのに。 スズなら大歓迎よ?」
「あたしも最初はなんで宮下君の家に? って思ったんだけど宮下君の親とうちのパパママ仲良かったみたいで」
「あ、だったら私もスズと仲良いしうちの親にも言っとくから今日から私の家で暮らす?」
そう言った途端スズはブワッと泣き出しそうな顔になってしまう、意地悪な提案だったかなと思って私は慌てて言い直す。
「で、でもスズの家の親と宮下の親が話し合って決めたことだしうちらが口出すとめっちゃややこしくなりそうだしね」
「う、うんッ。 ごめんね、あたしも最初はしーちゃんの家しかないって思ってたし、あたしからしてみたらよく知らない宮下君の家って決まった時は凄く怒ったの」
最初はってことは今は宮下の家で満足してるんだね。
「まー大体わかったわ、それで…… 宮下とキスはしたの?」
「キス…… なんてしてるわけないよッ!!」
「だよねぇー安心した。 まだ中学生なんだし私が許しませんッ!」
はあー、明日から宮下のこと見る目変わっちゃいそ。




