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「なあなあ、どうよ?」

「何が?」



少し離れた優の席に連れて行かれた時のこと……



「決まってんだろ、賄さんの隣になってだよ」

「ああ、それか。 別になんてことないけど」

「だあー! 違うって。 なんかこう匂いとかさ、良い匂いとかしそうじゃん賄さんって」

「ううーん、まぁそれなりに」



匂いとかって俺の家に住んでんだから賄さんからもし俺と似たような匂いしたらって考えるとヤバくないか? いやいや考え過ぎか。



「それなりってなんだよ? つまんねぇ答えだな。 じゃあさ、なんかムラムラしてこないか? あんなに美人だと」

「ム、ムラムラ…… !?」



…… それはあるかもしれない、ない方がおかしい。 



「でさ……」



優が小さかった声を更に小さくして言った。



「いいブツあるんだよ、ムラムラをスッキリさせるような。 特別にお前に教えてやろうか?」

「なんだって?」



ま、まさかアダルト的な何かか?!



「いいサイト教えてもらったんだよ隣のクラスの奴から。 もうすっげぇのらしい」

「ふぅん、エロサイトか」

「俺の携帯だとお子様用だから観れないんだよ、お前のなら観れるんじゃね?」

「あーそれじゃあダメだ、俺もそういうの観れないようにされてるし」

「うわー、使えねぇ」

「どっちがだよ」



やっぱそれか。 でもちょっと残念だな、そんなすっげぇのとか言われると。



「パソコンもうちの親のはあるけどバレそうだしなぁ」

「うちもだわ。 まぁでもそんな時のために古典的だけど本も仕入れてるんだわ、何か奢ってくれたら貸してやろうか?」



そんなんあるなら普通に貸して欲しい…… と少し前の俺なら思っただろう、けど今は賄さんが家に居てたまに俺の部屋にも入ってくるようになった。



何かふとしたことでやましい物が目に付くことなんて大いにあるかもしれない、賄さんって結構掃除するし。 いや俺の部屋まではやらないけどそんな爆弾みたいなものを部屋に置いておくのはイヤだし。



「んー、やっぱお金もないしいいわ」

「なんだよノリが悪いぞお前〜! そんなんなしでも俺らの仲なら貸してやるからさ、今日俺の家に寄ってけよ。 それかお前んちに持ってってやるか?」

「いやいやダメだろそれは!」

「え? 何がダメなんだ??」



お前が俺の家に来ると賄さんと鉢合わせしそうだからダメなんだよ! とは言えない。



「俺がお前の家に行くからいいよ。 俺の家は今日客が来るみたいだからさ」

「ほーん。 じゃあ帰りは一緒に帰ろうぜ!」



そうして帰りに優の家に寄るが……



「お、お前絶対これ俺にゴミ処理頼んでるだろ!?」

「んなことないって、俺だけ独り占めって不公平だなって思ってちょうどムラムラしてそうなお前に恵んでやろうって思っただけだよ」

「頼んでないっつの! こんなかさばる物捨て難いだろ! つーかお前元はこれ狙いだったろ!?」

「俺ら健全なポテトボーイにはエロ本があってナンボだろ! 貰ってたら多くなり過ぎちまったんだって。 椿にもお裾分けしてやるからさ」

「だからそういうのは間に合って…… ハッ!!」

「間に合って?」



俺は何を血迷ったことを口走ってるんだ? 賄さんをそういう目で見たらダメだ、せっかく仲良くなってきているのに。 



「なんでもない」

「ふーん、じゃあこれとこれとこれ、お前にあげるからさ」

「貸すんじゃなかったのかよ?」

「友達思いな俺だからやるよ椿に」



と、強引に優から貰ったエロ本を俺は鞄に入れ家路についている。 



重い…… これどっかで捨てられないかな? と周りを見渡していた。



「宮下じゃん、何してんの?」

「は?」



急に背後から声を掛けられた。



「高野に賄さん!?」

「こんなとこで会うなんて奇遇じゃん」

「あ、ああ、優の家に行っててさ」



賄さんと一緒に帰ってたのか高野の奴。 それとも2人で遊んでた? いやいや、そんなのどうでもいい。 早くこの2人の前から消えなければ。



「そういえばこの前スズに何か話があるみたいなこと言ってなかったけ?」

「なんだっけそれ?」

「えー忘れたの? まぁ忘れるくらいなら大した話じゃないみたいだねスズ?」

「うん、そうみたいだね」

「てかなんか鞄の中パンパンじゃん、重くない?」



つっこまれたくないところをつっこんでくるなよ。



高野がそう言うと賄さんも俺の鞄の方を見て俺を見る、無表情だから見て何を思ってるのかはわからないけど。



「こ、これ? 最初からこんなんだったし」

「ふぅん」



うわばばッ、高野にはそうは言ったけど賄さんはそうだっけ? みたいな顔してる……



「いいから行こうよしーちゃん」

「へ? あ、うん。 ばいばーい宮下」

「…… ほらしーちゃん!」

「はいはいッ、押すなって」



ふう、賄さんサンクス。 にしても帰る途中の住宅街じゃ捨てられるわけないよな、捨てるとこどっかで誰かに見られるかもしんないし。



それにどこかに行って捨てて帰って賄さんがその前に帰っててスッキリした鞄を持って帰ってきたとこ見られてもなんか変だろうし仕方ない、ここはあそこにしまうか。



俺は家に着くとベッドの下の収納ケースを開けた。 服とか入れてるわけだが奥の服を引っ張り出して優から貰ったエロ本をそこに突っ込み上に服を被せた。



洗い終わった服は俺が毎回ここに持ってきて入れてるしまさかこんなところなんて迂闊過ぎて逆に大丈夫かもしれない。



だが…… 一回も見ないでさっさと隠してしまったので中身が気になってきて収納ケースを開けてみたところで下から母さんが「おかえりなさい」という声が聴こえて賄さんが帰ってきたと思った俺はまた元に戻し部屋を出たところで自分の部屋に行く賄さんと会った。



「おかえり」

「ただいま…… 宮下君も遊びに行ってたんだね、しーちゃんと一緒に居たとこで会ったからちょっとビックリした」

「学校とかでは毎回そうだしビックリしなくたって。 でも賄さんはそんなに顔に出てなかったし」



そんなこと言って俺もビックリ…… というか冷やりとしたけど。



「そうかな? そういえば何か借りてきたの? 朝そんなになってなかったよね? ゲーム??」



うへー、やっぱ鞄がパンパンだったの気になってたのか。



「へ!? あ、うん、そんなとこ」

「…… あたしもやってみたいな」

「やってみたい? あー! ゲームね!」

「うん、宮下君よくやってるから面白そうだなって。 おばさんおじさんにもなんか適当なこと言ってたし、だから今度教えて?」

「は、はい」



賄さんは知らないしなんとでも誤魔化せるか…… ゲームだと思ってるみたいだし。 



そしてその夜中コッソリと優から貰った本を開いてみた。 



うん、これはいつか処分しよう……







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