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バチン!! と音がして「いッ」と隣の部屋から聴こえた。 



何してんだろ賄さん? 



「はあー」と溜め息が聴こえてきた壁を見ても仕方がないのでゲームの画面に視線を戻した。 



学校が始まって数日問題なくやれてると思う、賄さんは相変わらず学校では沈黙してるし。 高野とはどう話してるかはわかんないけど帰りの時も自分の家にわざわざ行ってからここに来てるし。



案外なんとかなるもんだなと思って時計を見ると0時を過ぎていたのでゲームの電源を落としてベッドに入るとすぐに朝になった。



「…… 賄さんそのほっぺ」

「蚊に刺された、しかも2匹に」

「腫れてるよ?」

「思い切り掻いちゃったから」

「あははは、鈴音ちゃんも案外鈍臭いところあるのねぇ、椿と一緒ね」



母さんがそう言うと賄さんは刺されたところを髪でサッと隠した。 



両方のほっぺ刺されるなんて結構間が抜けてるとこあるんだな賄さんって。



「見えない?」

「うん、見えなくなったよ」

「はぁ、良かった」



と刺されたところを掻きながら賄さんは朝食のパンを食べていたところ賄さんの携帯が鳴った。



「ふぁッ!? ゲホゴホッ!!」



賄さんの真向かいにいた俺の顔に盛大にパンの食いカスが飛んできたがスルーしよう。



「大丈夫鈴音ちゃん?」

「どうしたの?」

「ゴホゴホッ! んあ、す、すいません。 あたしこれから出ますんで」

「鈴音ちゃん?! パンは?」

「あ、後で食べます!」



そう言って賄さんは慌てて歯を磨いて出て行った。



「後で食べるって言っても…… ねぇ?」

「知らんし」



大方予想はつくけどな、多分高野からだろうな。 そんでもって慌てて行かなきゃいけなくなったってことだろ。



「椿、それ食べちゃったら?」

「え?」



食べかけのパンを指して母さんが俺に言った。



こ、これは間接なんちゃらとか言うやつでは?? こんなあっさりといいのか? うちの親はそれでいいのか? 



「私もうお腹いっぱいだし」

「…… 仕方ないな」



渋々なフリをして賄さんの食べかけのパンをかじった。



してしまった、思わぬ形で親に見られながら賄さんと間接キス…… これは不可抗力だ。



それから学校に着くといつも通りの風景、賄さんも居て他の奴らも居て。 



「おっす椿」

「おーす」



優と何人かの男子と話していると急にヒソヒソ話になる。



「最近さ、賄さんの視線たまに感じね?」

「そうか? ううーん」

「気のせいだって、お前が見るからじゃねぇの?」

「うーん…… あ、今目が合った! しかも顔赤くしてた、もしかして俺」

「バカじゃね、鏡見ろよお前」



顔赤いのは賄さんが頬っぺた掻き過ぎなだけだって。 バカだなこいつらなんて思ったりする。



「椿ぃー、次移動教室だろ? 行くぞ」

「あ、俺トイレ行ってくる」

「ウンコか!?」

「んなわけないだろ」



トイレに行こうと廊下を歩いていると前園らがいつものメンバーでペチャクチャと話していた。 



何気なく通り過ぎた時前園達から賄さんの名前が出たので思わず聞き耳を立てた。



「あー、あいつウゼェ。 さっきもせっかく話しかけてやったのにシカトよ?」

「授業もあいつの図体無駄にデカいせいで黒板見えねっつの!」

「てゆかそれ以前見てないっしょ」

「あはははッ」



なんだいつもの陰口か。 けどなんかムカつく……



「ん? 宮下うちらになんか用?」



げ、スルーするつもりだったのに。



「いや用はないけど何話してんだって思ってさ」

「あ〜、宮下も興味あんの?」



前園は不敵な笑みを浮かべるがチラッと聞いたので別に興味はない。



「あいつよあいつ」



が、前園は指を刺して言った方向にはトイレから出て来た賄さんだった。 



な、なんてタイミングの悪い…… しかも出て来た時俺と目が合ってしまった。



賄さんはこっちを見てすぐに視線をそらして向こうに行ってしまった。 



ヤバい、これは俺も前園達と一緒になって賄さんの文句を言ってるんじゃないかと勘違いされるパターンかもしれない。 こいつらなんかやっぱスルーしとくべきだった。



「あいつちょっと顔がいいからって図体デカ過ぎだし性格も陰険で見ててマジムカつくよねって話してたのよ、あんなのが居ると場の雰囲気を乱す的な?」



お前みたいなのが乱してるんだろ! なんて言ってる場合じゃない。



「あ、ちょっと宮下! お前もシカトかよ!?」



バカ前園は放っておいて俺は賄さんの行った方向に向かった。 賄さんの誤解を解かなきゃと思ってようやく後ろ姿が見えたと思うと賄さんの正面には高野が居た。



「宮下じゃん、なんか用?」

「あ、ええと……」



ついさっきまで賄さんだけだったので高野も居るなんて想定してなかった俺は言葉に詰まる。



「行こう、しーちゃん」

「ん? うん」



学校ではその他大勢と同じに冷たい感じの態度なんだけど今の今だと賄さんはさっきのことで俺が前園達と一緒になって陰口を言っていたんだと誤解してるんじゃないかと俺に思わせるには十分で……



「ま、賄さん!」

「呼んでるけどスズ?」

「…… 後でにして」



そう言って賄さんは行ってしまった。 その後賄さんとも話が出来ずに学校が終わり帰ると賄さんはもう帰って来てるようだった。 顔が合わせ辛いなと思ったけど合わせないわけにもいかずに夕飯を食べ風呂に入って部屋に戻ろうとしたら部屋の前に賄さんが居た。



ガッカリした、失望した、最低…… とか言われると思ったがそれより先に俺は誤解を解かなないとと思い賄さんに近付くと賄さんに腕を掴まれて俺の部屋ではなく賄さんの部屋の方に引っ張られた。



「あ、あの賄さん? …… じゃなくてあのさ、今日のことなんだけど俺前園達と話してたのは別に賄さんの悪口とか俺は言ってなくて」

「うん、わかってた」

「へ? わかってた??」

「宮下君とずっと居て宮下君はそんなこと言う人じゃないってあたしもわかってたんだけどそれでもあの時はよくわからないけどなんかイヤで…… 頭の中では違うって思ってたのにあたし今日ずっと変な気持ちで宮下君をまともに見れなくてなんか…… ごめん」



そう言われると俺は肩の辺りの服をギュッと掴まれた。



「ごめんは俺の方だよ」

「…… ふふッ、宮下君は何も悪いことしてないのに何がごめんなの?」

「え? あ、いやええと誤解…… させたから?」

「あたしが勝手にグチャグチャしてただけだよ、あたしこそ誤解させるようなことしたね。 ごめんなさい」



俺の右肩に賄さんはコツンと頭を当てた。 



「…… 賄さん?」

「手置いて…… 欲しい」

「え?」

「あたしの頭に。 宮下君の手冷たそうだから頭冷やしたい」



風呂に入ったばっかだからホカホカなんだけど? と思ったけど賄さんの頭に手を乗せるととても熱かったので……



「ね、熱あるんじゃ? 顔も真っ赤だったし」

「顔は蚊に刺されたから」

「あ……」



俺は何を思うでもなくこの時は賄さんを傷付けてないとわかってとにかく安心した。


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