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「「はあ〜」」

「2人ともどうしたの? 一緒に溜め息なんかして」

「あッ」



被っちゃったよ、俺は夏休みが今日で終わりだからだけど賄さんもそんな感じだよな?



「夏休みも今日で終わるのでつい……」

「いいわよねぇ夏休み、私もまた学生の頃に戻りたいわ」

「学生の頃があったなんて想像つかないし」

「椿!!」



お昼が過ぎて午後になると明日が学校ってことで何もやる気起きないなと思って母さんが買い物に出掛けてソファに横になっていた。



「はい」



目の前のテーブルにジュースが置かれた。



「ありがと」

「うん」



体を起こしてソファの隣が開くと賄さんが座った。 少し賄さんの方に意識が行くが置かれたジュースを一気に飲み干した。



「そんなに喉渇いてた?」

「暑いしね」

「変わらず暑いのにもう夏休み終わりだね」

「そうだね、ずっとこのまま止まって夏休みだったらいいのになぁ」



そう言うと賄さんはソファに足を乗せて体を丸めた。



あ、俺って今無神経なこと言わなかったか? このまま止まってなんて言ったら賄さんの両親も帰って来ないし。



「今のは冗談で……」

「あたしも」

「え?」

「あたしも思ったことあるよ。 宮下君はなんでそう思ったの? 休みたいから? 何か楽しいこととかあるから?」



賄さんが顔を上げて少し近付いたので反射的に後退る俺に前のめりになって聞いてきた。



「あ、うーん…… どうなんだろ? よくわかんないけど終わってほしくないじゃん?」

「はあ、そう」



賄さんはちょっと不機嫌になったみたいに前を向いた。



休みだとなんの口実もなしに賄さんと四六時中居れるからこのまま終わってほしくないなんて言ったら賄さんはどんな反応するんだろう? 俺に対してなんの感情も持ってなかったらドン引き必至だろうけど。



「ね、学校行ったらどうする?」

「どうするって…… どうしよう? このまま前と変わらず今まで通りでいいんじゃない? みんなにバレるのはイヤでしょ?」

「それはイヤだけど。  しーちゃんにはバレそう」

「高野か。 俺あいつとあんまり喋ったこともないしなぁ」

「しーちゃんは優しいよ」



それは賄さんに対してだろ? 俺の場合は違うかもしれない、高野は賄さんの世話焼きおばさん的なイメージあるし。



「ねえ宮下君」

「何?」

「あ…… ううん、なんでもない。 なんでもないけど」



コテンと賄さんの頭が俺の肩にくっ付いた。



「ま、賄さん?」

「なんか少し…… 憂鬱だから。 ごめん」

「あ、ああ、そんな時あるよね」



そんな時あるからと言ってそこまでの奴じゃなきゃこんなことしない。 明確な好きかは聞かない限りわからないけどここまでしてくれるような関係になったんだっていうことは確かなんだよな? こうしてられるのはうちの親が居なくて2人きりってのも大きいけど。



「ってあれ?」



そんなこんなしていると小さな寝息みたいなのが聴こえてきて肩に掛かる重さもさっきより加わる。



賄さんもしかして寝ちゃってる? なんて不用心なんだ、うちの親がいきなり帰ってくるかもしれないのに。



起こした方がいいよなと思って賄さんの肩に手を回そうとしたが賄さんの寝顔を見ていたら俺の手は賄さんの前髪に行っていた。



そして賄さんの前髪に触れてそっと上げてみる。 尚も寝ていてその顔をよく見てみた。



凄く綺麗な寝顔だな。 鼻筋もしっかりしてて長いまつ毛に気難しそうなつり目気味な目付きも寝ている時は優しめで……



前髪を下ろすと今度は顔に直接触りたくなった。 触ったら流石に起きそうと思ったけどこんな近くで寝ていてこんな機会は今以外来るだろうか? という心が勝りほっぺたにそっと触れた。



「んむ……」



少し賄さんの寝顔が歪んだのでドキッとしたがそのまま目を瞑っているので大丈夫だったかと思って手を当てたまま。 下手に動くと起きるかもしれないと思って動けなくなる。



なんか同じ家で同じ物食べて同じように生活してるのに賄さんから良い匂いがする、小学生の低学年頃は女子にも気軽に触ってたりしたけど

今じゃそんなことないもんな。



それからしばらく賄さんの頭を肩に乗せていてズシリとした重みの重心を変えようと少し動くと……



「…… あ、あたし寝ちゃってた。 ごめん」

「いや全然」

「重かったでしょ?」

「そんなことないって」

「はぁ……」



賄さんが目を擦りながら大きな溜め息を吐いた。



「どしたの?」

「身長また伸びてた」

「え? どれくらい?」

「174センチ」

「いいなぁ」

「え?」



あ、俺は純粋に身長高いの羨ましいからいいなぁなんて言ったけど賄さんには悩みのタネだったんだ。



「い、いや別に賄さんの身長高いのなんて気にならないよ。 賄さんはえっと…… スタイルいいし!」

「気にならない? 宮下君は気にならないの?」

「う、うん!」



こっちは身長156センチしかないから。 成長期来てるんだよな一応?



「そっか。 ならいいかな」



賄さんがソファから立ち上がるとちょうど玄関のドアが開いた音がした。 どうやら母さんが帰ってきたみたいだ。



そうして夏休み最後の日は終わり次の日になり学校が始まった。


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