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賄さん…… 俺の親が帰ってきてから俺の態度のせいなのかまた前みたくそっけなくなりあまり話すこともなくなっていた。
自分が親に揶揄われるのが嫌だからこういうことになってるのに賄さんと微妙な感じになってしまうのも嫌ってなんて勝手な奴なんだとは思うんだけど。
前に賄さんの友達とか俺が友達と遊んでいて都合合わせのために交換したLINEを見る。
通話と要件とただの返事くらいしか賄さんとやり取りしてないけど送ってみたりしてもいいかな? 部屋を挟んですぐ隣に行けばなんて思うけどもう賄さんの部屋だし女の子の部屋に入るなんて男子が女子トイレに入って行くのと一緒で出来そうにないし。
にしてもなんて送ればいいんだ? 『寂しかった?』なんて如何にもイケメンが送りそうなことなんて書けそうにない。 何よりこんな俺に愛想をつかしてそうだから寂しいとか思うわけない。
隣から賄さんが動く音は聴こえるんだけどこうして迷っているうちに寝ちゃいそうだし……
時間を見ると21時半、賄さんは何もなければ結構早くに寝ちゃうから。
『最近元気なさそうだけど大丈夫?』…… いやいや、それもなんだかなぁ。 文字を消しながら迷っているとベッドに寝転びながら打っていたので手が滑って顔面に携帯が直撃する。
「いっ!!」
角が鼻に当たり鼻に手を当てて携帯を取ると……
『最近元気なさそうだ』なんて送っちゃってる。
うわわわ、なんで決めつけみたいな文章になってるんだよ!? つーかこれはなしだ、消去しないとと思うと既読がついてしまう。
慌てて賄さんの方の壁に耳を当てる。 こんなことしても無駄だけど。
するとガチャリと俺の部屋のドアが開いて壁際に耳を当ててる俺を賄さんが見ていた。
ノックもなしに入ってこられた、というよりこれはキモい…… 俺ストーカーみたいじゃん。
「あ、えっとこれは、その……」
「うん、あたしも元気ないよ」
へ?
てっきりこの光景にツッコミが入るかと思ったら全然違うことだったので一瞬思考停止する。
元気ない? あ! さっきのメッセージ……
「宮下君も元気ないんだ?」
「う、うん」
それに流されるまま「うん」と言ってしまう。
そんなことを思っていると賄さんはドアを閉めてベッドに座ってる俺の前の床にペタンと座り俺を見上げた。
「「…………」」
何故か賄さんは喋らずに俺を見上げたまま止まり俺もそんな賄さんを見て何も言えないでいた。
「椿ー、鈴音ちゃん! ケーキあるけど食べる?」
そんな時すぐ近くで母さんの声が聴こえたので俺はギョッとした。 賄さんも肩をビクッとさせていた。
「え? わわッ」
マズい、これは普通に入っちゃってくるパターンだと思った俺は賄さんの両脇を抱えてベッドに乗せた。 一瞬何が起きたか理解不能な賄さんは声をあげる。
「あ、あたし重いのにッ」
「静かに」
賄さんはコクコクと頷くと俺は賄さんを自分のベッドに寝かそうと肩を押した…… が賄さんは踏ん張っているのかなかなか倒れない。
た、体重差か!? いくら女の子でも身長もあるし俺より確実に賄さんの方が重い…… なんてこと絶対に言っちゃいけない、とか思ってる場合じゃなくてッ!
「あら??」
そんなことをしているともう母さんは部屋のドアを開けていた。
「なんで鈴音ちゃんが椿のとこに?」
「や、こ…… これは」
「あたしがゲームやりたいって言ったら宮下君が俺がやってるからダメだって言って」
いつの間にか賄さんの手には俺のベッドの枕の方に置いてたゲーム機があった。
ナ、ナイス賄さん…… なのか?
「んもぉー、椿ったらいつもゲームばかりなんだから。 たまには鈴音ちゃんに息抜きさせてあげなさいよ?」
「わかったって。 それよりケーキだっけ?」
「そうそう、食べるよね?」
「そのう…… 賄さん食べる?」
「食べる。 宮下君も食べようよ?」
賄さんは少し屈んで俺の顔を覗き込んで言った。
ち、近い、母さんに怪しまれる!
「うふふ、なんだかこうしてみると姉弟みたいねぇ。 出しとくから降りてきてね」
そう言って母さんは出て行った。
怪しまれなかった、良かった。 俺がそうホッとしていると賄さんに肩をツンツンと人差し指で突かれた。
相変わらず近い…… 賄さんの髪の毛が俺の座っている脚に当たってるし。
「姉弟みたいだって」
「そ…… そうだね、親が居ると俺そうなっちゃうみたいで。 見損なった?」
「ううん、あたしもそんな感じだと思うし。 でも拗ねてる宮下君も面白いし」
「面白い…… かな?」
「うん。 てか宮下君結構力持ち」
そう言われて俺は賄さんの両脇を抱えたことを思い出した。
「い、いやあれは咄嗟で」
「うん、わかってる」
賄さんはニコッと笑った、俺に近いままで。
「それよりベッドの中に賄さんを隠そうとしたのになんで踏ん張ったの?」
「だって逆ならまだしもあたしが隠れても大きいからバレそうだなって思って」
「あ、なんかごめん」
「いいよ別に」
賄さんはコテンと俺のベッドにうつ伏せで寝転んで言った。
「でも緊張した」
「俺も」
賄さんが俺の枕に顔を埋めている…… く、臭くないよな!? 小まめに洗濯してるんだし。
「このベッド」
「え?」
「寝心地良さそうだね」
「そう…… かな?」
枕に顔を埋めて賄さんは「うん」と呟いた。
「あ、ケーキあるんだった。 下に行こう?」
「そうだね、遅いとまた母さん来るかもしれないし」




