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「いやぁー2人とも悪かったなぁ。 大変な時に長々と家を空けて」

「鈴音ちゃんごめんね、あとはいこれ、2人にお土産。 椿の口には合わないと思うけど」

「なら違うのにしろよ」

「ありがとうございます」



両親が帰ってきた。 うちの家族が帰ってきて少し賄さんはよそよそしい。 と思いきや……



「ねえ、これ宮下君の分もある」

「え? あ、ありがとう」



うちの家族がリビングに行った後俺の服の裾を掴んでお土産の袋を渡された時賄さんと手が触れた。



「こういうお菓子嫌いなの?」

「ううーん、生菓子はちょっと」

「じゃあどんなの好き?」

「どんなの…… ううーん」



考えていると「そんなところにいないでこっちに来なさい」と母さんに呼ばれてしまった。



そしてうちの家族と賄さんは今後のことを話した。 話し終わると少し賄さんは疲れたような表情だった。 まぁ何度かうちの親と会ったことあると言ってもこれから一緒ってのはそれまた別だもんな。



「椿、鈴音ちゃんばっかりに家事とか任せっきりにしてないでしょうね?」

「そうだぞ、今のうちから椿もそういうこと出来てた方が将来役に立ちそうだからな」

「いや別に」

「あ、宮下君はちゃんとしてました。 私の方がお世話になったかもしれないです」



俺が言う前に賄さんはうちの家族に言った。 



ううむ、言うほどちゃんとしてたか? 賄さんテキパキ動くからほとんど賄さんがやってたようなもんだけど。



「へえー、椿もちょっと成長したのか、反抗期でそんなのはしばらく後かと思ってたけど」

「ちょっと前までオネショしてたのにねぇ」




こいつら賄さんの前でなんてことを……



「ん? どうした椿??」

「寝る」



そう言って俺は賄さんを残して部屋に行ってしまった。  



ああ〜!! なんで帰ってくるんだようちの親は!! それに良かったのか? 賄さんを残して部屋に篭って。 今頃もっと恥ずかしい話を賄さんに話しているんじゃないのか? でも寝るって言っちゃったし。



モヤモヤしながらゲームをして時間を過ごしていると階段を駆け上がってくる足音が聴こえた。 もうそろそろお昼だし母さんも帰ってきたし母さんだろうと思っていた。



「宮下君お昼だって」

「賄さん!?」



ドアをコンコンとノックされたけど賄さんだった。



「開けていい?」



俺はゲームの電源を落としてドアを開けると賄さんが俺を見て部屋を見渡していた。



「ゲームしてた?」

「別に……」

「反抗期なの?」

「別に……」



これじゃあ当初のうちに来た時の賄さんじゃないか。



「いいんじゃない?」

「何が?」

「あたしも反抗期あるもん。 パパとママと一緒に行かなかったり、あたしの方が酷いかも」



そうして俺と賄さんの会話が途切れ少し間が開く。 俺は賄さんを見上げ賄さんは俺を見てる…… と。



「ほらほら、2人とも何してんのご飯よ」

「あ、はい」

「はぁ……」

「せっかく鈴音ちゃんを寄越したのに」

「すみません、宮下君がやってたゲームあたしも気になって」

「あらあら、鈴音ちゃんもそういえば椿と同い年だったもんね。 大人っぽいから忘れてたわ」



「早くおいで」と言われ俺は立ち上がりドアのところに立っている賄さんを横切る時……



「おじさんおばさん帰ってきたら宮下君そっけなくなった」

「え?」

「少し寂しい…… かも」

「い、いや、そんなわけじゃ」



実際はそうなんだ。 俺は親に賄さんと普段のやりとりを見せるのが恥ずかしくてそっけなくしていた。 



「俺も賄さんが思うほど大人じゃないし。 さっきも揶揄われたら嫌だなって思って」

「あたしがいるから?」

「…… うん」

「なんで?」

「そりゃガッカリするだろうし」

「ガッカリ……」



俺も変に賄さんを意識しちゃってるから余計にそう思うんだ、いやもうガッカリされてるか?



「宮下君、ガッカリするよりあたしは楽しいよ」

「楽しい?」

「あたしと居ると楽しいって言ったよね、実はあたしも宮下君と居ると楽しい。 それでもって宮下君のこと知るのも楽しいよ、だから」



「まだ来ないの?」と母さんの声がしたのでハッとして俺と賄さんは部屋から出た。



「もう、遅いじゃない。 ラーメン伸びちゃうわよ」

「はいはい」

「どうした鈴音ちゃん、口に合わなかったかな?」

「…… いえ、美味しいなって思って」

「あらま、美味しいだって! 椿」

「あー……」



今の絶対適当に言ったよな賄さん。 



「そうそう、鈴音ちゃんから聞いたわよ。 料理とか椿も手伝ったそうじゃない? やれば出来るのねぇ」

「普段なんか皿洗いもしないのにな椿は」

「いなけりゃやるしかないだろ、まったく」

「あらー、じゃあまたグータラに逆戻りかしら? そんなんじゃ鈴音ちゃんに嫌われちゃうかもよ〜」



ずっとこんな調子なの勘弁してほしいわ。 隣に座って食べていた賄さんをチラッと見るとサッと下を向かれる。



今度は賄さんがそっけないじゃないか。



「ああー疲れた」



夕飯を済ませベッドに寝転んだ。



今まで賄さんと2人きりだったからある意味それはそれで気を遣うとこもあったけどうちの親が居るとこれまた違うな。 何より賄さんと話し難くなってしまった。



そう考えながらしばらく携帯を弄っているとドアの方に気配を感じた。



「お風呂入ったらだって」



ドアの前で賄さんの声が聴こえたと思ったら通り過ぎて行ったようで隣の賄さんの部屋のドアが閉じる音がした。 



なんか慣れてきたとこに急に異物感というかなんというか出来てしまって嫌だな、親なんだけど…… 賄さんも最初は似たような気持ちだったんだろうか? 賄さんとは事情が違うし比べること自体間違ってるけど。


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