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明日でうちの家族も帰ってくる。 長いようで短かったかもしれない、賄さんとの2人きりの生活。 



というか夏休みももうほぼ終わりだな、今年の夏休みは色々と緊張したし大変だったけどいい思い出にはなったかも。



そして高野も帰ってきたみたいで賄さんも遊びに行ってたりはしていた。 



「宮下君」

「うわッ!!」



そんな思いにふけっていると後ろからいきなり賄さんの声にビックリして声をあげてしまった。



俺を冷たい目線で見下ろしながらってのも別にそういうわけじゃなくて元々こんなんなだけで賄さん自身にとっては普通に接してるつもりなんだよな。



「そんなに驚かなくても」

「あはは、賄さん気配を消すの上手いから」

「こんな図体してて?」

「自虐やめなよ、ところで何?」

「お茶入れた」



リビングのテーブルに上半身を預けて寛いでいた俺の横にはお茶が置いてあった。



「気付かなかった……」

「変な顔してたしね」

「変な顔って…… まぁ元からだけど」

「嘘だよ、ふふふ」



それにほら、こんな風に笑うようになった。 よく考えてみたら好きとかそういうのって俺よくわかんないし賄さんは気を許せる相手には結構積極的なのかも。



そんな風に考えていると賄さんは俺の隣に座った。



そうそう、これも気を許せる相手にはするんだろう。 そう思ってお茶を飲んでいると膝をついて賄さんはジーッと俺を見てくる。



自慢出来るような顔じゃないからそんな目して睨むように見てくると身体が硬直してしまう。



「あのー…… 賄さん」

「何?」

「なんで見てるの?」

「……」



何も答えてくれない。 



「そんな顔して飲むんだって思って」

「どんな顔?」

「そんな顔」



ちょっと前までは目を合わせてもそっぽ向いたりまともに見なかったのに今はどうしたんだ賄さん……



明日うちの親が帰ってくるんだぞ? これはこれである意味気不味いのではないのだろうか??



「そういえばさ」



賄さんがふと口を開いた。



「今日で終わりだね」

「終わり?? ああ、明日から帰ってくるもんね。 なんかそうなると夏休みもいよいよ終わりだなぁって思えてくるし」

「やだな」

「え?」

「あ、ううん。 宮下君の家族が帰ってくるのはいいけど夏休みが終わるのって嫌だよね。 学校もあるし」

「そうだね、こんだけ休んでると行きたくなくなるよね」

「それもあるけどせっかく…… はぁー、なんでもない」



せっかくこの生活に慣れてきたのにまた学校が始まっちゃうのは嫌とか? それとも俺と2人きりが…… って明日からうちの親も来るのに何考えてんだ。



今日は2人とも出掛けずに静かに過ごした、朝から夜までずっと家の中。 賄さんは高野と遊んだりしてるし最近はずっと家の中は退屈かな? と思ったがそうでもないみたいで……



「クッキー作ってみた」

「へぇ、美味しそう」

「味見して」

「うん」



クッキーとかも作るんだなぁ賄さんは。 結構女子っぽいかも。 ってそりゃ失礼か、普通に料理もするし。



「美味しい」

「そっか、良かった」

「よく作ってたの?」

「ううん、初めて作ってみたの」

「なんでまたいきなりクッキーを?」

「た、食べて喜んでくれたら…… 嬉しいし」



賄さんがジッと見てた俺から視線を落として言った。



ヤバい、好きになりそう…… というか賄さんにそんな風にされたら誰でも好きになるよな、てか俺みたいなチビじゃ釣り合わないって。



いつかちゃんとした賄さんに釣り合うような人でこんな風に打ち解けられたら賄さんもそっちを選ぶに決まってるだろうし。 



変な期待をしちゃダメだ、これは夏休み補正とかも掛かってるんだと思う、いつもの学校の日常になったら賄さんだって自分の行いに冷静になる。



そうなれば傷付くのはこっちだ。 今は俺と四六時中居るけど明日には親も帰ってくるし。



「……」

「うちの親にも食べてもらおう」

「え? うん、いいけど今日焼いたのは宮下君に食べて欲しいなって。 ううん、一緒に食べよう?」



か、可愛い…… 俺より大きいけど可愛い。 そんなこと言われたらそうするしかないじゃないか。



「そうだね」

「うん」



相変わらず賄さんは俺の食べてる姿をジッと見ててほとんど食べてないけど。



そんな時カサカサカサと賄さんのちょっと後ろの壁を這うモノが……



あれはゴキブリ、結構こまめに掃除してたのにどこから湧いて出たんだ!?



「どうかした?」

「あ、あれ…… ゴキブリ」

「ああ」



賄さんは立ち上がり颯爽とスリッパを持って壁の上の方に行きそうなゴキブリを叩き潰した。



「ふう、逃げられなくて良かった」

「ま、賄さん苦手じゃないんだね?」

「前にも言ったよ、ゴキブリは割と平気。 ムカデは無理だけど」



意外と男らしい……



「あ、壁拭かなきゃ」

「俺やっとこうか?」

「届くの?」

「あ……」



確かに届かないやと思っていると賄さんがバツが悪そうな顔して俺のところへ来た。



「あのね、別にあたしより小さいからって気にすることないよ? 良し悪しには大きさとか関係ないから。 小さくても全然大丈夫だよ」



そんは小さい小さい言われるとやっぱ小さいから気にするですけど?



「…… ほら、宮下君はまだ中学生だし伸び代あるし。 今はこうでもあたしより大きくなったりして」



俺が未だ微妙な顔をしていると取り繕うように賄さんは言った。



賄さんだって中学生なんだが……



「でも……」



そう言ってそっと俺の肩に賄さんは手を乗せた。



「今言ったようにあたし背の高さとか本当に気にしないから」

「あ、うん……」



それはそういうあれで言ってるのかな? 変に思ってしまうと本当にそっちの方で考えてしまうからそれ以上は考えないようにした。





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