18
日差しが眩しくて起きるともう10時半、今日はなんだかゆっくりで夏休みらしい。
賄さんも起きてないみたいだ、起きてたらドアノックして「ご飯出来た」と言って起こしてくるのがいつもだから。
昨日のことを思い出し俺は自分にとって賄さんあんな風にしてもらって喜ばしいことしかないじゃないかと言い聞かせていた。
そんな時コンコンとドアをノックされた。
「宮下君あたし」
噂をすれば賄さん。 賄さんのことだから「昨日のことは忘れて」とか「どうかしてたかも」と昨日のことを思い出しながら恥ずかしそうに言って終わりだなと考えながらドアを開けた。
賄さんはキョロキョロと俺の部屋を見ると俺の服を掴んで小さく呟く。
「お…… はよ」
「?? おは…… よう?」
目は合わせてくれない。
え? 寝たら元に戻ると思ったのに賄さんは現在進行形でこれ??
「ゆっくり寝れた?」
「あんまり……」
テンションはいつにも増して低い。 というか最初家に来た時よりも落ちてる気がするんだけど。
「宮下君」
「うわッ」
掴んでいた服をグイッと引っ張られて賄さんの方へ身体が言ったと思ったら両肩を掴まれる。
「…… おはよう」
「え? ああ、おはよう」
つい今「おはよう」と言ったばかりなのにこれ如何に?
肩を掴まれたままどうしたらいいかわからずに俺を見下ろす賄さんを見るとやはり顔をそらされる。
「ご飯食べよ?」
「そうだね」
「そうだね」と答えたがしばらくこの謎の状態のままだった。
「ええと…… 何作ろうかな。 何か食べたいものある?」
「パンでいいよ、簡単だし」
「うん」
焼き上がると「はいどうぞ」と渡された。 キッチンのテーブルに座ってボーッとしながら食べていると向かいに賄さんが座ってジーッと俺を見てくる。
昨日から様子が変だ、変すぎて俺でも察してしまう。
俺…… 賄さんから好かれていると。 何がキッカケだとかどうしてとかそんなことを考えるがそれよりも感じていたことは「どうしよう」ということだった。
産まれてこの方初めて異性から好意を持たれているというとてつもないラッキーなことで賄さんが来た当初心の何処かでもしかしたらこんなこともあったりして? とか思っていたこともあった。
けどそういう場面にいざ向き合ってみるとただただどうしようだ。
嬉しい、勿論嬉しいけど賄さんはうちの親が友達だから信用して賄さんを預けたはずだ。 なのにうちの親もいないから2人きりでそんな関係になっていたら顔向けが出来ないんじゃないか? と今更ながら考える。
第一小学校から一緒だった連中に「お前付き合ってんの!?」とか言われるのも恥ずかしいが親に彼女出来たなんて言うのも恥ずかしい。
いやいや、話を飛躍させ過ぎか? 大体好きとも言われてないし。 でも昨日といい賄さんの態度もそれというしか言いようがない態度だったし……
「美味しくなさそう」
「え?」
「不味そうな顔して食べてる」
「そ、そんなことないって! 寝起きだったからボーッとしてただけ。 それより賄さんは食べないの?」
「うん、お腹空いてない」
気付けばパンを置かれたのは俺だけで賄さんは何も食べてないで俺をずっと見てる。
「もしかして具合悪い?」
「そんなんじゃないよ」
俺が訊ねるとムスッとしてそう答えられた。 そんなに見られながらだといくらなんでも食べ辛い。
「ゴホゴホッ!」
「はいお水」
「ありがとう、ふぅー……」
食べ終わると賄さんは家の掃除をやり出した。 俺もそこら辺を片付けてソファに座って携帯を弄っていると横に賄さんが座った。
「はあ……」
溜め息を吐いた賄さんは俺に肩を当てたので俺はビクッとして少し横に移動すると賄さんもこっちに来た。
「…… もしかして避けてる?」
「避けてない」
賄さんのそんな質問に速攻で答えてしまった、そう言うと賄さんは俺にもっと寄る。
「嫌だなとかって…… 思ってない?」
俺の顔を伺いながらそう言った。
「思うわけないじゃん」
そう答えるしかない。 だってどうしようかと思っている一方でモブ的存在でクラスでも大して目立つ方ではない俺に賄さんにこんなに急接近されているのだから。
「…… じゃあいいよね?」
「な、何が?」
「こうしてると疲れが取れるの。 最近気付いた」
「あ…… ああ、なるほど」
別に好きとは言われてない、だから恋愛未経験な俺は声が裏返り身体が硬直する。
いっそ賄さんに俺も寄り掛かってみようか? いやそんなことするのは恥ずかしい、でも俺よりも恥ずかしがり屋そうな賄さんがこんなことをやっている。
ええいままよと思い俺のも賄さんに体重を掛けると賄さんはピクッと動いて俺の頭は無常にもソファの上に……
あれ?
「きゅ…… 休憩終わり。 続きやらなきゃ」
終わったんじゃないの? と思って身体を起こすと賄さんは後ろを向いていた。




