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「どうかな?」

「うん、バッチリかも」

「お、ちゃんと点いた」



蛍光灯が切れたので賄さんに交換してもらっていた。 例の通り俺は届かないけど賄さんは届く……



「でかッ…… 」



「デカいだけあって余裕だね」と思わず言いそうになりかけた。



「ん?」

「あ、ありがとうって言おうとした」

「でかって聴こえたけど? どうせデクだし」



ムスッとしてしまう。 怒らせちゃった……



「なんてね」

「え?」

「冗談だし」



冗談…… 賄さんって冗談言うキャラだったんだ?



「だから冗談だよ、怒った?」

「いや全然。 というより賄さんでも冗談とか言うんだなって」

「言うよ、家族とかしーちゃんには」

「それって……」

「ほ、ほら! だって宮下君が自然でいろって」

「あ、ああ……」



そうは言ったけど賄さんって家とか高野の前ではこんな感じなのか、普通の女子みたいだ。



「やっぱり変?」

「ううん、逆だよ。 その方がいい」

「そ、そうかな?…… 宮下君は知ってると思うけどあたし結構ワガママだし子供だし他人嫌いだしみんなあたしのこと勘違いしてるんだよ」

「もっと賄さんのこういうとこ見て貰えば…… ってそれが性に合わないならする必要ないよ」

「うん、でも宮下君にはもういいんだ」

「もういいとは?」

「だってもうあたしがそんなんだってわかってるし。 最初あたしはここを受け入れたくなくて卑屈になってた時もいじけた時もワガママ言った時もずっと優しかったから。 自分勝手な理由だよねって思うけどあたしメンタル弱いからそれはただ単に都合の良いように甘えてるだけかも。 幻滅するよね」

「そ、それは……」



俺が言おうとすると顔の前に手をかざされた。



「ごめん、やっぱりこういうことって言ってると恥ずかしくなる、慣れないから。 これくらいにしよう? 夕飯も作らないとだし」

「手伝おうか? あんま役に立つとは思えないけど」

「うん、手伝ってくれたら嬉しい。 役に立たなくてもいいから」

「それ一言だけ余計なんだけど?」

「冗談」



「えへへ」と笑った賄さんはまったく雰囲気が変わっていた。 そっか、やっぱりこれが賄さんの素なんだ。 



心を許せる存在…… いやまぁ俺にはそこまでだろうけどこれから暮らしていくならこの方がいい、絶対いい。



「あ、宮下君そういえばご飯粒付いてるよ。 なんで後ろ髪に付いてるのか意味がわからないけど」

「マジで? いつから付いてたんだ??」

「さあ? 面白かったから言わないでおいても良かったんだけどなんか真面目な話してる前から付いてたし雰囲気的にツッコミ辛くて話し終わった後もまだ付いてるって思ったし」



うげ…… 雰囲気台無しじゃないかそれ。 面白いから言わないってそれってなかなか意地悪だぞ賄さん。 でもそういう一面があるんだな賄さんって。



「どこ?」

「取ってあげる、後ろ向いて」



俺が後ろを向くと賄さんの手が俺の髪の毛に触れた。 ファサッと自分の髪の毛が揺れる感触がする。



「取れた?」

「まだ」

「もしかしてへばり付いて固まってる?」

「うん、抜いた方が早いかも」

「じゃあそうしてくれる?」

「ちょっと待って。 じゃあ抜くね」



ポンと頭の上に手を置かれもう片方の手で髪の毛をプチンと抜かれた。



「はい終わり」

「どれどれ」



俺が賄さんに振り返る。 というか頭の上に手を置かれたままなんだけど? 



「ひえ……」

「へ?」



一瞬キョドッたような賄さんはパッと手を離して後退りする。 



「違うんだよ!? 思ったより普通に宮下君に接してられるから自分でも少しビックリしたっていうか…… 嫌がってってわけじゃないからね」

「あー…… そ、そういうことか」



ドン引きしたようにリアクションするから思わず俺もどうしたのかと思ったじゃないか。 でも賄さんだし。



「嫌がってってわけじゃないからね」

「何故2回も……」



それから賄さんはお風呂に入りに行った。 



部屋も綺麗だし何もすることないな今のところ。 



テレビを付けてソファに寝転んで携帯を弄っていたらいつの間にか寝てたみたいで風呂上がりの賄さんに起こされた。



「ふあ…… 宮下君の寝顔見たらあたしも眠たくなってきた」



欠伸をしている賄さんなんて今まで見たことないから新鮮だなぁと思って見ていると……



「ん?」

「欠伸したと思って」

「え? あ…… 別にあたしだって欠伸くらいするもん」

「あはは、なんか気兼ねなくしてもらってあの賄さんがなぁって思った」

「お、おかしい??」

「ううん、可愛いんじゃないかな」



ハッ! 自称フツメンかそれ以下の俺がそんなこと言ったら大爆死確実みたいなセリフを言ってしまった。



賄さんは言われた瞬間クルッと後ろを向いて肩を震わせている。 キンモーッ!! とか嘲笑っているだろうか? と不安になってソファの背もたれから身を乗り出して賄さんの顔を伺い覗く。



「や、ちょっと……」



顔を背けてられてしまう。



「流石に…… 今のは自分で言っててキモ過ぎた、ごめん」

「そ、そう…… ですか」



何故に敬語?



「お風呂、お風呂入ってきなよ」

「え? ああ、うん」



賄さんは自分の髪に巻いていたタオルを俺の背中に当てグイグイと風呂場の方へ押される。



「押さなくても入るから」



ろくに顔を見せないで賄さんは風呂場へ俺を誘導すると扉を閉めた。



そんなに顔を合わせたくないくらいキモかったのか? これからは気を付けよう……




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