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東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
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5-1

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エイラクマルは月の都基地へ戻っていた。

改めて司令のセドミックへ報告するためだが、その他にも目的があった。


電送室。

ムラサとてゐは出迎えのために来ていた。

「二期生が来るんだって?」

ムラサが興味無さそうに言う。

「師匠の話だと、そうウサ」

てゐはうなずいた。

ようやく一期生のムラサとてゐの後に卒業生が出たのだった。

「授業料なし、食事&部屋無料、できるまでやる、というバカみたいな条件でやっと卒業するヤツが現れるとか幻想郷の連中はぶったるんでるウサ」

「そういうなよ、楽園みたいなとこだからあくせく働くって考えがないんだ」

ムラサは一応擁護に回るが、本音はてゐと同じだった。

命蓮寺では、戒律のある生活をしていた。

といってもかなりユルいが…。

そのお陰で、宇宙軍の規律重視の生活にもついてゆけたのかもしれなかった。

「自堕落なだけウサ」

てゐは健康マニアなので、自然と生活にメリハリがある。

そういう理由もあり、自堕落なヤツが嫌いなのだ。

「それとお守りの補充ウサ」

「あー、私のはてゐにあげちゃったからな」

「ムラサみたいな悪霊が、お守りなしでいるのは危険ウサ」

てゐはニヒヒと笑う。

「あ、ひどいなぁ、こんなに善良なのに」

「善良なら念縛霊とか言われないウサ」


「信号捕捉、来るぞ」

ハープが言った。


ビビビーン


独特の音がして、3人のシルエットが見えてくる。


現れたのは、

巨乳赤髪ツインテ女。

ひんぬー白髪女。


「なんだ、巨乳死神とアホの子か…」

てゐはあからさまに落胆した様子である。

「会うなり随分な言い様だねぇ」

「誰がアホの子だ!」

2人の反応はそれぞれ。


最後の1人は、紅白の巫女装束、頭にデカいリボンをつけた少女だった。

「霊夢じゃんか!」

「あ、霊夢!」

ムラサとてゐは思わず少女の側へ駆け寄った。

「久しぶ…こら、近いって!」

「わー、霊夢だー!」

「霊夢きたー!」

ほとんど抱きつく寸前のムラサとてゐ。

「だから近いってば!」

霊夢はムリヤリ振りほどいた。

「なんだい、この温度差」

「霊夢ばっかり」

小町と布都は面白くない。


博麗霊夢は8代目博麗の巫女だ。

2代目博麗の巫女の直系の子孫で、外見も性格も瓜二つだった。

法力も強く、2代目の再来と言われている。


「はい、お守り持ってきたわよ」

霊夢はポーチからお守りを出した。

全部で5個。

ちなみに小町と布都は装備済である。

「お、ありがとう」

ムラサはお守りを受け取って身につける。

残りは予備として保管。

「せっかく宇宙船に来たんだから、見学してゆくと良いウサよ」

「あー、いいねぇ」

てゐとムラサは顔を見合わせる。

「え、でも悪いわよ。みんなお仕事してるんでしょ」

「実際、みな退屈気味だから大丈夫」

「船長には許可取ってあるし」

「新人2人も来るウサ」

てゐは手持ちぶさたの小町と布都に声をかける。

「どの道案内するんだウサ」

「あ、はい」

「よろしく御頼み申す」

という訳で、5人で船内を回ることになった。


「船長、新人2人と博麗の巫女を連れて行きますウサ」

『分かった、先にブリーフィングルームに行っていてくれ』

通信機から返事がした。

「へー、こんな小さなワッペンで通信できるのね」

霊夢には見るものすべてが珍しく映るらしい、いちいち感心している。

「あ、そうそう、船には青娥と芳香とニトリもいるんだよ」

「あー、青娥が法術専門家として乗船してたんだったね」

歩きながらムラサが言う。

霊夢はある程度知っているらしい、先に霊夢に来た話だからかもしれない。


「あ、霊夢!」

通路を歩いてると、芳香が売店から顔を出した。

さっきと同じ光景が繰り返される。

「はあ、はあ、芳香、少し落ち着きなさい」

「分かったのだー」

芳香はぴょんぴょん飛び跳ねるのを止めた。

「冷やし飴たべるか、なのだ」

「今はいいわ」

「芳香がめっさ懐いてるな」

ムラサがニヤニヤしている。

「嬉しいんだけど、親切の押し売りは止めて」

「むー」

芳香は不満げである。



ブリーフィングルームに到着すると、青娥がいた。

「あら、皆さんお揃いで」


さっ

霊夢は身構える。


「…なにしてるの?」

「え、いや、そのぉ…」

青娥の不審げな視線に、霊夢は居心地悪くてそっぽを向く。

「青娥は随分と冷静なのね」

「…ああ、そういうヤツ」

青娥は察したようだった。


「青娥、今日から配属になる、巨乳死神とアホの子だ」

「なんつー紹介の仕方やねん」

小町は突っ込みを入れる。

「だから、アホの子ではないと言うに」

布都は半ば諦めて、席に着いた。

他の面々も着席する。


「遅れてすまん」

すぐにパープルが入ってきた。


「エイラクマル船長のルナ・パープルだ、よろしく」

自己紹介などをしてから、簡単にエイラクマルの任務についてを説明する。

連盟の文化圏内では、小町はコマチ・オノヅカ、布都はフト・モノノベというように名乗る。

西洋文化を基本とするため、音が分かりにくい漢字は避けるのだった。


(まあ、気分の問題でもあるよな)

ムラサは思った。


基本的な心得を教わった後、現場に入る。

2人とも航海士としてブリッジに配属の予定だ。

アズマが迎えにきて、2人はブリーフィングルームから退出した。


ムラサは副長としての仕事があるので、霊夢の案内は青娥にバトンタッチとなった。

てゐも医務室にいなければならない。

いくら暇でもいざってときに居ないと困る類いのお仕事だから。

ここで一旦、お別れだ。

「じゃあ、いきましょうか」

「はいはい」

霊夢は青娥の後について行く。


ムラサはブリッジへ戻って、席に着いた。

このところ、パープルは船長室にいる事が多くなってきた。

主に軍本部との連絡などを行っているのだが、ブリッジに来てもイズマックの隣に座ったりしている。


交代が近いのかもしれない。

ムラサはなんとなく感じていた。

今日新たに隊員2人が配属された。

軍本部が現地人を採用したがっているのは明白で、それにより派遣している外の世界出身の隊員を戻すつもりなのだ。


ブリッジの人員は大勢いる必要はないが、交代要員が多いに越した事はない。

通常のローテーション、事故で乗組員が動けない時など。

先の戦闘でもパープルが倒れるアクシデントがあったばかりだ。


「じゃー、私帰るねー」

霊夢が挨拶しに来た。

「気をつけてな」

「気をつけるウサ」

「気をつけて帰るのだー」

「気をつけてね、盟友」

「気をつけて帰るのよ」

「気をつけてなー」

「気をつけて帰るのじゃ」

ムラサをはじめとする幻想郷出身者が総出で見送りにくる。

「あー、もう!恥ずかしいからみんなで集まらないでよ!」

霊夢はそんなことをいいながら電送で帰って行った。


「そういや、妖怪とか電送オッケーになったの?」

「なしくずし的にね」

技術者のハープが肩をすくめた。


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