表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
PR
21/38

4-5

4-5


医療班が到着したが、揺れが酷くて担架を運べなかった。


『警告!一部の電気系統が停止してます!』

コンソール盤にハザードランプが点き始める。

「副長!反重力シールドの波長を乱数調整しましょう!」

砲手のハープ(姉)が叫んだ。

「防御に回すエネルギーは増えますが、ヤツを阻めるはずです!」

「よし、任せた!」

ムラサは即決。

「コンピューター、反重力シールドの波長を乱数調整!」

『反重力シールドの波長を乱数調整します』

コンピューターが反重力シールドの波長を変え始めると、


キシャアアアッ


再び怪獣じみた声が響いた。

鉱物生命体がシールドに弾かれたのか、船尾から離れる。


「それ、いまウサ!」

「よしきた!」

医療班の面々が急いで担架を運び出す。

パープルは医務室へ運ばれていった。


『乱数調整には通常の5~6倍のエネルギーを使用します。敵の攻撃を受け続ければ、パワーリザーバーかすぐ空になる可能性があります』

コンピューターは説明した。

「どのくらい耐えられる!?」

ハープ(姉)が聞いた。

『30秒程度と推測されます』


(30秒で対処か!)

(30秒で対処しな!)

ムラサは愕然としつつも考えた。あと余計な邪念も浮かんでくるが、出来るだけシャットアウトした。

頭脳をフル回転させる。


(なにか良い案は!?)


(時には目的達成のために…)(非合理的だ…)(ワームホール…)(基地に戻って…)(退屈なのは勘弁…)(たいていはどこかに見落としが…)

隊員達のセリフが脳裏に蘇る。


(見落とし…そうか、見落としがないか?!)


ムラサは思い出した。

鉱物生命体を見つける直前まで何をしていたか。


(星図だ!)



時を同じくして、イズマックも頭脳をフル回転させていた。


(鉱物生命体のデータを持たない私達に為す術は…)

(いや!それでは全滅する!)

(考えろ!)

イズマックの額に冷や汗が浮かぶ。

(こんな時、青娥ならどう考える?)

(数ある選択肢の中から正解を当てる…私にはムリだ)

(だが、何度も思索を重ねてそれに近い結果を引き当てる、いわば引き鉄のようなものは分かってきている)

(何か象徴的だったり、印象的だったり、特徴的だったり、したものはないか?)

イズマックは鉱物生命体が現れる前に起きた事を思い出しそうとした。


「ん?リマークになにかついてるのか?」


ムラサのセリフが浮かんでくる。


(リマーク!!)


イズマックはムラサとコンピューターの会話を思い出した。

フログ商会の星図だ。


『宇宙クジラ、燃料食い』


と記載がある。


ちょうどその時、

「イズマック少佐、星図を!」

ムラサが叫んだ。

「確認済みだ、ヤツは燃料食いだ!」

イズマックはほぼ同時に返した。

「了解!機関部!ニトリいるか!?」

ムラサは機関銃のようにしゃべった。

『こちらニトリ』

通信機から返事がする。

「すぐに燃料のデューテリウムを排出しろ!」

『はあ!?そんなことしたら…』

「文句は後だ!やれ!すぐにだ!」

『わ、分かったよ!』

ニトリは剣幕に圧されたようだ。

『退いた、退いたぁっ!』

ドタバタと走り出す。

「副長、もうシールドがもちません!!」

ハープが叫んだ。

「シールドを解除!」

ムラサは即座に指示を下す。

「了解!コンピューター、シールド解除だ!」

『シールドを解除します。総員、衝撃に備えてください』


ガガガッ


再び衝撃が襲ってくる。


「ジャンプドライブ解除!」

続けてアズマへ指示する。

「コ、コンピューター、ジャンプドライブ解除!」

『ジャンプドライブ解除します。ですが、敵の攻撃圏内から逃げる事が…』

「コンピューター、その警告は不要だ!」

ムラサが叫ぶと、

『……』

コンピューターは説明を途中で止めた。

『デューテリウム排出したよ!』

ニトリが通信機で言った。

「よし!よくやった!」

ムラサは拳をバシッと自分の掌にぶつけた。


モニターの映像では、デューテリウムの入った容器が射出されたのが見えた。

それに気づいた鉱物生命体が容器を追ってエイラクマルから離れる。


「核魚雷を発射!標的は鉱物生命体!」

ムラサは命令を下した。

「核魚雷を発射します、標的は鉱物生命体」

ハープ(姉)が手動で核魚雷を発射する。


光の塊がヒューッと飛んでゆき、鉱物生命体に命中した。

核魚雷は文字通り核分裂を利用した爆弾である。

放射能による汚染があるので宇宙空間でしか使えない。

大昔に存在したシューティングゲームでいうボムに相当する武器だ。


ヒュバッ


光が瞬く。


ゴガーン!


ちょっと遅れて爆発音が響いてきた。



パープルは医務室で治療を受けた。

「感電によるショックで気絶しただけですね」

医療班の隊員が言った。

「よかった」

ムラサはホッとした。

「しばらく安静にしていれば治るウサ」

ポン

てゐがムラサの肩を叩く。


「イズマック少佐、さっきはアドバイス助かりました」

ムラサはブリッジに戻ると言った。

「いや、ムラサの指揮が良かったんだ」

イズマックは無表情のまま答える。

「初めての宇宙船級の戦闘で、あんな理不尽な怪物が出てくるとは思わなかったが、よく立ち回ってくれた」

「誉めすぎですよ、少佐」

アズマが笑いながら言う。

「そーそー、私の砲手技術があってこそだよ?」

ハープ(姉)も笑いながら言う。

「うん、みんなの協力があったからだよ」

ムラサはちょっと照れぎみである。


燃料のデューテリウムを全部排出してしまったので、これを補充しなければならない。

既に投入した燃料が尽きるまで、十数時間というところか。

燃料がなければ基地へ帰投できないし、またどこで鉱物生命体のようなものに会うとも限らない。

なので、燃料のデューテリウムの入手が最優先だ。

『それならムラサ副長の指示でリマークした場所に…』

コンピューターがすぐに答える。


(そういや、航行途中でデューテリウムを発見したっけ)


ムラサは思い出した。


すぐに来た道を戻り、デューテリウム補充した。


(あと、フログ商会の星図をよく確認して、リマークがあればその内容をコピーしておかないと)


ムラサは思い付いた事をこなして行く。


「コンピューター、フログ商会の星図のリマーク欄に書き込みがあれば、改めて今使用中の星図へコピーしてくれ」

『分かりました、フログ商会の星図よりリマーク欄の書き込みをコピーします』

数秒でコピーが完了する。

(これでよしと)

ムラサはやっと一息ついた。



「みんな、心配かけてすまん」

パープルが意識を回復したので、ブリッジへ復帰した。


「何事もなくて良かったです」

ムラサをはじめとする乗組員達はホッとした。

ブリッジに漂っていた緊張感が和らぐ。


「あの化け物への対策を考えないとな」

パープルは言った。

「船長、あの鉱物生命体はデューテリウムのような物質を好物としてるようです」

イズマックが言うと、

「大昔、水素水ってのが流行ったそうですね」

ハープ(姉)が口をはさんだが、イズマックは無表情のままだった。


発見したらジャンプ10で急速離脱。

これが理想。

振り切れず、交戦状態に陥ったら、デューテリウムを囮にして核魚雷で仕留める。

パルスレーザー、反重力シールドなどのエネルギー兵器は波長を合わされて無効化される。

パルスレーザー1発では死なない可能性がある。

エネルギー消費が激しいが反重力シールドを乱数調整するのも効果あり。


まとめると、このようになった。


「では、軍本部へ報告しよう」

パープルはデータを本部へ送った。



「クトゥルフ神話にでてくる邪神みたいなヤツだった」

「幻想宇宙は我々の常識が通用しない場合が多い」

等々、

上がってきた報告に、軍本部はやはり驚愕するしかなかった。


「幻想宇宙の探索は、幻想世界の住人に任せた方がいいのでは?」

「出来るだけ現地で人員を採用しよう。こちらから派遣するとコストがかさむ」

「宇宙船も現地で製造したい。技術は流出するが、こちらから船を送り込むのは割に合わない」

「それから幾つかの星に中継基地を作らないと」

「今のままでは効率が悪い」



「本部のお偉いさん達は身勝手な事ばかり言う」

バシッ

パープルは腹立ちまぎれにデスクを叩いた。

機密の問題もあるので、ブリッジを離れて船長室にいる。

「現場の苦労をもっと考えろ!クソが!」

悪態をつくその姿は、とても部下たちに見せられる光景ではない。

慢性的な人員不足、船の性能不足等々。

隊員達は一人で何人分かの仕事をこなしている。

既に切り詰めた状態なのだ。


しかし、本部の意向には逆らい難い。


「ルナ・パープル個人日誌、連盟歴○○○○年○月○日、

 軍のお偉いさんどもはクソだ。

 掃き溜めだ。

 コスト、コスト、コスト。

 手間を省く事しか考えてない。

 愚痴の二つや三つ言いたくなる。

 …だが、隊員達の頑張りをみるとその努力には報いたくなる。

 任務で死ぬのはいつも現場の者だ。

 作戦ルームでぬくぬくとしている幹部連中はそれを自覚しているのか甚だ疑問だ」


『船長、その内容を記録するのですか?』

コンピューターが確認してくる。

内容が過激だと判断したのだ。

「航海日誌とは別につけてる個人的な日誌だ、問題ないだろう?」

『理屈の上ではそうですが、いささか使用している言葉が…』

「フン、私もたまには汚い言葉を使いたくなるさ」

パープルはプンスカと言ってそっぽを向いた。

「それよりコーヒーをくれ」

『…了解しました』

コンピューターが少し呆れたように思えたのは気のせいだろう。

パープルはコーヒーをがぶ飲みしてストレス発散した。

ていうか、船長特権とはいえ、物質複製器の無駄遣いである。


(5へ続く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ