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セドミックと永琳は帰って行った。
セドミックは電送で月の都へ。
永琳はシャトルで幻想郷へ。
青娥は意識を取り戻した。
最初はぼーっとしていたが、すぐにいつもの状態に戻る。
てゐの説明を受けて何があったか理解したようだった。
「申し訳ありません」
回復してすぐイズマックが見舞いに来た。
「私の勝手な行動で、青娥さんにご迷惑をお掛けしました」
「あら、私は結構楽しかったわよ」
青娥はニコニコしている。
「精神感応で融合するのは初めてだけど、面白い体験でしたわ。トライアイ人の考え方が垣間見れましたし」
「そう言って頂けるのはありがたいのですが、私には罪があります。私にできる償いがあれば言ってください」
イズマックが言うと、
「そうねぇ…」
青娥はちょっと考えて、
「トライアイ人のことをもっと知りたいわね。あなた方は論理教を成立させる前はもっと奔放な種族だったんでしょう?」
「その程度のことでよろしければ」
イズマックはトライアイ文化の成り立ちを話して聞かせたのだった。
*
ムラサは突然副長に抜擢されて戸惑ったが、いつも通りの席でいつも通りの仕事を任されたので、名ばかり副長という感じだった。
「いや、イズマック少佐の仕事をする必要はないさ」
パープルは言った。
「ムラサ中尉は自分の仕事プラス副長の責務と言うことだ。私が不在の時に代わりに指揮を取ったりする、分からない事は私かイズマック少佐に聞いてくれれば良い」
「そう、私が補佐するから大丈夫」
イズマックは生真面目な顔で言う。
いつもの調子を取り戻したようである。
「はい、分かりました 」
ムラサはちょっと安心した。
イズマックは情報分析等を行う役割を担っているが、専門的知識がいるので、ムラサがそう簡単にできる仕事ではない。
ちなみにパープルは中佐である。
エイラクマルが小サイズの船であり、また辺境の探査任務ということもあってのことだ。
月の都基地司令のセドミックは大佐である。
土星探査を終えたので、引き続き天王星、海王星、冥王星の探査を行ったが、どの星も生命は見つけられなかった。
ムラサとてゐが着任する前に、水星、金星は調査済みだというから、太陽系の星は調査完了した訳だ。
「今後の方針が決まるまでは定期調査だ」
パープルはブリーフィングルームに主だった乗組員を集め、今後の方針を検討し始めた。
もちろん、副長のムラサはブリッジに残っている。
基本的には太陽系外の星々を探査する事になるのだが、どこを探査すべきか。
連盟には外の世界の星図があるので、どこにどんな星があるかは網羅している。
それがこの幻想世界の宇宙と同じか否かは不明だ。
太陽系の星は同じだったが、この先探査する宇宙域が同じとは限らないかもしれない。
「コンピューター、星図を複製して探索結果を記入してゆくことは可能か?」
パープルはコンピューターに質問する。
『はい、可能です』
コンピューターはすぐに返答した。
「できれば、既に探索済みの星図が手に入ればいいが…」
「もってそうな連中はいますね」
技術士官のハープが言った。
「アンフィビア人か」
「しかし、彼らに何かを求めると対価が必要になる」
イズマックが指摘した。
「それに我々が喉から手が出るほど欲しいのは、亜空間トンネル式ジャンプ技術の方だが、それに釣り合う対価を用意できてない」
「青娥さん、彼らの欲しがっているものは何かね?」
パープルが青娥に聞いた。
「古代中国の書籍ですわね」
青娥は答える。
「ミンとタオが最も興味を持っているのは『三五歴記』『述異記』『山海経』『ワイ南子』など天地開闢や人類の起源の神話が記載されたものと『詩経』『楚辞』『孔雀東南飛』『唐詩三百選』『文選』などの詩集ですね」
「そ、そうか…」
パープルはうなずいたが、その顔には「さっぱり分からん」と書いてあった。
「彼らの興味は龍祖とのつながりのあるもの、それから文学としての詩歌に集中しています」
「では軍本部に言って取り寄せよう」
パープルは気軽に言ったが、
「写本や複製器でコピーしたものは価値が下がりますから、本物もしくは博物館級の写本にしてください」
青娥は注文をつけた。
「仮にも外交の一端を担うのですから、ほいっとコピーしたものなどはいけませんわ」
「あ、そうだな。軍本部に進言する」
パープルは慌てて付け加えた。
「他にも彼らが興味を示したものがあります」
イズマックが提案した。
「VR技術です」
「ふむ、VRルームか」
「当船にはサイズ的な問題でVRルームはありませんが、隊員達が個人的に使用する携帯用VR体験器があります」
「自室で使用するヤツだったな、確か」
「はい、そうです。彼らはこれに興味を持っていました」
イズマックは説明する。
「彼らにはVRというアイディアは生まれなかったようです」
「ふむ、なるほど」
パープルはうなずく。
「我々のVR技術に価値があるということか」
「そうです」
会議は続いたが、これ以上の案は出てこなかった。
対価として用意できるのは、古代中国の書籍、VR技術の2つであった。
(4へ続く)




