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48 不審人物ではありません

噴水広場にはベンチや石で出来た机などの休憩処っぽいスペースがいくつかある。


昼間はおじいちゃんやおばあちゃんが、そこでのんびりしつつお喋りを楽しむ場所になっているけれど、夜になるとそこは冒険者ばかりで多少騒がしくなる。


最初の3日間くらいはとても静かだったんだけどね。

いつの間にか、夜はそこでプレイヤーもひっくるめた休憩所、改め情報交換所になっていた。




・・・たぶんね。



未だに少しプレイヤーと関わるのを警戒している私はいつもそこを避けていたから、実際にどういった会話が成されているのか詳細はわかっていないのです。


ちょいちょい聞こえてくる会話から判断しているだけで。


会話と言っても話の全容は全く理解出来ないのだけれど。

プレイヤーだけの集団の方は不思議と言葉が聞こえてこないから。


何か喋っている様子は確認出来るけど、声は聞こえてこないから何かの仕様なんだろう。

なんとなくガヤガヤ、ザワザワしてるのが聞こえてくるだけ。



現地の冒険者を交えて会話している集団は会話が聞こえてくるので、これはプレイヤーだけの仕様なんだろうか。

たぶんプライバシー保護目的なんだろう。

そこまで配慮されている事が理解出来ていても尚、プレイヤーと関わるのを避けるのは過剰反応なんだと思う。

頭じゃわかっているけど、中々ね・・・。こう、きっかけが無いと踏み出せないお年頃でもあるのですよ。





そうそう、それに意外と人の会話って離れていても聞こえてくるものね。

全く意に介さず、大声で話している人もよく街中で見かけることがあるけど、あれって結構危険なんだよ。




私の友人の一人は、街中での会話が原因でストーカー被害に合った子が居てですね・・・。

そんなに大声で喋るような子では無かったけれど、たまたま()()()()()()の人に聞かれていたみたい。



被害が出ないうちに解決したから良かったものの、女性・・・特に人目を引くような美人は街中での気苦労がハンパじゃない。




美人は人生イージーモードって、あれ絶対嘘だもん。

常人には理解出来ないほど、あらゆる場面での自衛が求められるなんてただただ可哀想だ。


もちろん、美人なりの恩恵は受けてはいるだろうけど。

個人的にはリスクとメリットのバランスがおかしいと感じる。


何も知らない人達は、恩恵を受けているんだから多少のデメリットくらい受け入れろ。なんて言うけれど。





まぁ、そんな訳で人の執着心の嫌な部分をしっかり見聞きしてしまっている私からすれば、現実でさえ人との距離感にはかなりの神経を使っているのだから、ゲームの中でいきなりフレンドリーに接するというのは無理難題。

ましてや若干の匿名性も相まって、現実では有り得ない大胆な行動に移されることもあるかもしれないのだから。


元々他人との距離感が近い人や、こういったオンライン上のやりとりに慣れている人なら問題は無いんだろうけど。



あれです、耐性が無いんです私。




だから広場の端のほうで、ひっそりと一人で隠れるように骨付き肉を食べていてもしょうがないんです。うん。


怪しい人物間違いなしの状態ではあるけれど、まだ誰にも見つかっていないからセーフと思いたい。うんうん。






自分に多少の言い訳をしつつ、視覚情報を主とした情報収集する私。

ついでに鑑定のレベル上げ中。


なんか地味に目が痛くなってきた気もするけど、構わず実行中。

一つ一つ情報を細かく確認していたらキツかったかもだけど、流し見ならなんとか大丈夫。






そうこうしている内に空が明るくなってきてすっかり夜明け。

未だに連絡は来ていないので街の北側を少し散歩。


前にウィリアムさんに紹介された防具屋さんの前を通って場所を確認。

まだ時間が早かったせいか、お店は空いていない様子。


そのまま大通りを進みヘンリーさんがいるお屋敷の周辺で少し小道へ。

小道といってもかなり整えられた道。


さすがに高級住宅街だけあって、南側とは雰囲気が違う。

あっちはのどかな農園地帯っぽいしね。


同じ静かな雰囲気でも、ここまで変わるんだから街並みってどれだけ見ていても飽きないものです。

理解してくれる友人は私の周りにはいないけど。



桜子とかは大自然とかなら興味持ってくれるんだけどね。

建造物やただの街並みには全く興味なしみたい。残念。






ちょいちょい小道に入りつつ、マップ埋めと散歩を楽しむ私。

しばらく室内でじっとしながらの作業が続いていたせいか、とても清々しい気分。


人ごみも無くただ歩く行為は、思っていたよりも良いストレス解消だ。

都心じゃどれだけ時間を選んでも、何だかんだ難しいから。




しばらくのんびりと過ごしていたらブランドンさんから連絡が入った。

レアさんが起きてこれからギルドへ戻るから、空いた時間に向かってほしいとの事。


もう少し休めば良かったのに。

と思うものの、色々と処理が残っているだろうから責任者であるレアさんはまだまだ忙しいんだろう。



とりあえずは私も薬師ギルドへ向かおうかな。

足早に、そして静かに足音を立てずに大通りを目指す私。







別に近くにイチャイチャと憚らないカップルが居たからとかじゃないよ・・・?



まさかこんな明け方に、あんなにピンク色な雰囲気を纏った人達がいるとは思わなかったのは事実。

正直言えばかなりビックリした。




だってキスしているくらいならまだしも、男性が女性の体をまさぐってんだもん。

完全に衣服の中に手が入っている様子まで確認出来ちゃったもんだから、急いで方向転換したわ。


ちょっとまだ心臓がバクバクしている気がする・・・。

思わぬ光景に相当動揺してしまったみたい。


これが真夜中でそういう雰囲気が元々あるような所なら、覚悟も出来ていただろうし完全無視とか出来るんだけど、あまりにも予想外過ぎた。


つい固まってしまってバッチリ目撃状態にはなったものの、とっさに物音を立てずに移動したのはファインプレーだと思う。

見つかったら気まずいなんてもんじゃない。






ふう、と気持ちを落ち着けて、少し歩調を緩めながらも薬師ギルドを目指す。



到着した頃にはすっかり落ち着いたので、自分の中ではもう無かった事とした。

無かったったら、無かった!




自分に言い聞かせた所で扉をノック。





「あ!きたきた。ゴメンねカケル。アタシ達いつの間にか寝落ちしちゃったみたいで・・・。手続きとか出来ない状態で放置しちゃったわよね。ほんとゴメン」


「ふふ、ちょっと驚きましたけど大丈夫ですよ。多少は睡眠取れたみたいで何よりです」


「気付いたら家だったから、起きてかなり驚いたんだけどね・・・」



あんまり私は外出時に寝落ちした事が無いからわからないけど、酒癖の悪い人とかだとしょっちゅうある事らしいけどね。

どうやって自分が帰って来たのか記憶に無いとか、個人的には恐怖でしかないのだけど実際どうなんだろう?繰り返していたら慣れたりするのかね?いや、慣れちゃいかんのだろうけど。



「んじゃ、これが『指名クエスト』の依頼書ね。これ持って行ったら報酬貰えるから。あとそれ以外に何か報酬を考えていたんだけど、何が良いかわかんなくて・・・。アンタは何か希望とか無い?」


「依頼書は確かに。・・・報酬。特には――あぁ、ではたまに依頼でなくともここへ来ても良いですか?【調合】のレベルが上がったら、その時はご指導頂けたりしたらより助かりますね」


「・・・それ報酬になるの?全然構わないわよ、そんなの。いつでも遊びに来て頂戴。他に希望は無いの?」


「うーん・・・?今のところは特に思い浮かばないんですよねぇ?まぁ後々困った事とかがあったら相談に乗って頂けたらとは思いますが・・・」


「さっきと言ってること変わんないじゃないの・・・。まぁ良いわ。何かあったら遠慮せず相談して?出来るだけ協力するから」


「えぇ是非。その時は宜しくお願いします」


「ん、OK」




レアさんから署名済みの依頼書も受け取ったので、薬師ギルドを後にする。

彼女にはこれから後処理が待っているから私が居ても仕方ないし、むしろ邪魔だし。


ちなみに3馬鹿こと、パナッシュさんケイガ―さんイアンさんは未だに寝ていた。

レアさんに怒られないといいけど。





そのまま冒険者ギルドへ報酬の受け取りをする為に向かう。


幸いもう夜が明けていたからか、あの妖艶美女ローザさんは居なかった。

それなら、と思ってカウンターへ向かい、あのピンクブロンドの受付嬢に手続きをお願いした。



「カケル様、今回の指名クエストの達成でランクアップ条件を満たしました。ランクアップなさいますか?」


ランクアップ?


聞けば、どうやら一番下のGランクから上がるには、街中クエストを3回とそれ以外のクエストを1回達成すればランクアップ出来るのだそう。

そもそも今回のレアさんからの依頼が指名クエストになっていた事すら、ついさっき知ったばかりだったのだけれど・・・。



まぁ、貰えるものは貰っておいて良いか。特に試験が有るわけでもないらしいので。



「お願いします」


「はい、かしこまりました。少々お待ちください」



大した時間もかからずに手続きはすぐに終わったっぽい。


「こちらが新しいギルドカードになります」



受け取ったカードはランクがFと記載されていた所が変化しているだけのようだ。

それでもちょっと何か嬉しい。


レベルを上げるのも楽しいし、これからはランクを上げることも視野に入れていくのも良いかも。

ここで何度も実感している事だけれども、頑張った成果が目に見えるってやっぱ良いよね。




「それにしても、必須の街中クエスト以外に1つクエストを達成するだけでランクアップするという事は、Gランクというのはギルドの仮登録的な扱いなのですか?」


やろうと思えば2,3日でランクアップ出来るって事だもんね。



「ふふ、実際そういった面もありますね。ギルドカードは身分証明書にもなりますから、実際に冒険者活動している者と区別する為でもあるんです。多少のお小遣い稼ぎもGランクで事足りますから」



登録するだけしてカードを手に入れた者や、副業的な小銭を稼いでいる者はGランク。

実際に冒険者活動をしている者、これからしていこうという者はランクアップを受け入れるので、Fランクになる。という事らしい。


「Fランクからの討伐クエストには多少の戦闘技術が必要なモンスターが多くなってきますから、今まで以上に注意なさって下さいね?」


「ええ、承知しました。とはいえ、まだ一度も街から出ていないので油断出来るような状態ではないんですけどね・・・」


「あら?・・・そういえばそうでしたね?ふふ、Gランクで指名クエストを達成するなんて異例ですよ。今後も活躍が期待されますね」


「ご期待に沿えるよう努力はします・・・が、期待し過ぎないようにお願いします」



くすくすと笑う表情が可愛すぎて、少し視線をずらして会話する私。

微笑むだけでもズッキュンくる感じなのに、面と向かってこの表情は耐えきれぬ。


可愛い女の子は癒しだが、可愛すぎる女の子は目の毒になるんだなぁ。

ひとつ勉強になりました。




少し心臓と目にダメージを喰らうと同時に背中の方から多数の視線が感じられてきたので、そのまま足早に資料室へと逃げ込む私。




ちょっと怖くて振り向けなかったけど、絶対あれプレイヤーの嫉妬の視線だろう。

自意識過剰かもしれないけれど、そんな気がした。





「やぁ、いらっしゃい」


紳士スマイルで私を出迎えてくれるノートを見てほっと一息つく。




男性の笑顔には滅法強い私です。







お読み頂き有難うございます。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。


感想、評価、レビューお待ちしております。


ご協力お願い致します。




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