37 薬師ギルドのお仕事(1)
光の玉のひとつは、土を盛り上がらせて薬草の引き抜きを簡単に出来るように操作している。
もうひとつは、私が採取した畑の畝の脇に一旦置いといてある薬草をフリフリして土を払っている。
さらにもう一つは、なんと土が払われた薬草をせっせと木箱に運んでいる。
なんかここだけ見ていると、ファンタジーというよりもメルヘンです。
姿形はハッキリとは見えていないけど、なんか可愛らしい姿を勝手に想像してしまう。
相変わらず聞こえてくる声は子供に近いし。
しかし、これは放っといて良いんだろうか・・・?
前回遭遇した、風の妖精?は割とすぐに帰ったから一体どうしたら良いのか全くわかりません。
とりあえず害は無いだろうし、一緒に作業してみるか。
なんか楽しそうにしているから大丈夫でしょう。
妖精さん達と共に作業することしばらく。
既に畑の薬草の採取は終わり、後は畝の横に一旦置いてある物の土を払って、木箱に入れれば完全に終了というところまできた。
最後の一株を木箱に入れ終えたのを確認すると、妖精さん達は静かに土へと帰っていった。
・・・土に帰るんだ・・・。
ってことは、土から来たの・・・?この畑自体が家なの?なんなの?
生態が謎過ぎて・・・。
手伝ってくれたお礼も伝えられなかったなぁ。
個人的にはもう少し居てほしかった。
でも、風の妖精とは全く異なる個性を持っている事だけは確認出来たかな。
ずっと騒がずに黙々と頑張っていたもんね。
時々聞こえてくる『ヨイショ、ヨイショ』『エッホ、エッホ』って声が地味に可愛らしくて和んだもの。
風の妖精達はピアノを弾いている間もキャッキャッと結構騒がしかったのに。
あれも可愛らしい声だったから邪魔には思わなかったけど。
「手伝ってくれてありがとう。おかげで助かりました。ゆっくり休んで下さいね」
一応妖精達が消えていった畑に向かってお礼を述べる私。
傍から見たら地面に向かって独り言を言っている不審者だけど、今は私一人だから気にしない事にする。
採取作業はきっちり終えたので、一旦報告。
「・・・は?え、ぜ、全部?畑に生っているのを全部採取し終えたの・・・?」
「はい、薬草の部分は、ですけど。その奥は毒消し草とかだったので手は付けていないんですが・・・そちらも採取した方が良かったですか?」
てっきり薬草だけで良いと思って勝手に終わりだと判断しちゃった。違ったのか。
「い、いや!薬草だけで大丈夫!納品依頼は初級体力回復薬だから。っていうか、奥まで行ったってことは本当に全部終わったのか・・・」
やっぱり薬草だけで良かったみたい。
そしてそんなに疑わなくとも良いじゃない?さすがにあの量だから結構時間は掛かったけど、妖精さんのお手伝いもあったからね。
あ、普通はお手伝いなんて無いのか・・・。
そりゃ普通にやるよりか大分時間短縮されているわな。
疑って当然だわ。
「はぁ~、アンタ本当に仕事早いなぁ。ちょっと自信なくしそうだよ・・・」
「まぁな・・・でも異人さんはスキル取得が容易だっていうから、そればっかりはどうにも出来ないだろ。俺らは俺らで今まで結構サボってきちまったし・・・。姐さんに拾ってもらえなかったら、もっと出来ない奴等だったぞ、俺らは」
「・・・あんま落ち込んでっと、また姐さんにどやされるぞ。前にも言われたろ、他人の成功を羨むより自分のスキル磨く方が建設的だって」
「「・・・そうだった」」
なんか・・・落ち込ませてしまった・・・?
どうやら彼等にも事情が色々とあるっぽい?
あと姐さんって誰だ?もしかしてレアさんの事かな?
きっと、ここで詳しく事情とかを私から聞けば、何かしらのクエスト開始ってことになるのかな?
ウィリアムさんの時とかと同じく。
だが、私は聞かぬぞ。
なぜならば、そんな時間がもったいないから。
今の私の最優先はこの人達を含め、レアさんの休みを確保することなので。
10日間を乗り切ったら聞くかもしれないけれどね。それまではおあずけです。ごめんね。
私から話を聞かなければ特に会話も続くことは無く、彼らは彼らの作業を続けるようだし。問題なさそう。強制じゃないんだね、こういうの。
「んじゃ、軽く休憩でもしてもらって、そしたらビン詰めお願い出来るか?確か前に来た時やってたよな?」
「ええ、あちらの部屋ですよね?承知しました」
「そうそう、昨日レアさんがストックしていった分があるから、それを頼む」
お言葉に甘えて、キッチンを借りお茶を淹れて少し休憩。
ちなみに茶葉は自前ですよ。地味に色々買ってるんです、ヘンリーさんに教えてもらってから。
今日はアポルティーなるものに挑戦。香りからしてアップルティーだね。こちらではリンゴをアポルと言うらしい。まだ現物を見た事は無いけど。
・・・そういえば、まだこの街で果物を見た事ないな。
街の南側はこの薬草畑を含め、農業関係の色が強い地域のようだけど、果樹園も見当たらないし。
単純に気候とかが向いていないのかな?少なくともこのアポルなるものがあるなら、ゲーム自体には果物はあるんだろうけど。
まぁ、そこらへんは私には関係ないか。あるなら[ファーマー]だろう。
サクッと休憩を済ませて、奥の部屋へ移動。
相変わらず、たくさんの鍋とビンとで埋まっている。3人組がいる大部屋と同じくらいの広さなんだろうけど、少し狭く感じるのは物や器具が溢れかえっているからなんだろうな。
ビン詰め作業はそれなりに神経使うから、他の作業に比べて集中度が高くなる。
部屋に一人だと余計に。
前回は後ろで作業しているレアさんが居たから、多少物音がしていたけれど今は静寂。
集中しているから脳内で音楽を奏でる余裕も無い。
―スキル【指さばき】がレベルアップしました―
―スキル【道具鑑定】がレベルアップしました―
―スキル【精密作業】がレベルアップしました―
なんかゾーンにでも入ったのかな?っていうくらい変化が起こったのは、スキルのアナウンスが流れた頃。
今まではビンに薬液を入れる際、ちょいちょい微調整しながら流し込んで満タンにしていたけれど、その微調整する回数が明らかに減ってきた。
トリガーを引くと薬液が出てくる仕組みの器具なんだけど、なんせ薬液がサラサラだから気を抜くと入れ過ぎちゃう恐れがあるのよな。
こぼれないように細かく小刻みに入れていたけど、さっきから1回トリガー引いて8割くらい注いで微調整でもう1回引くと、ちょうど満タンのところでビタっと止まる。
今までトリガー3、4回引いていたのに。
1本にかける時間が少なくなると、そりゃ全体的にスピードも上がってくるわけで。
スピードが上がるともちろん回数も増える。
回数が増えるとスキルも上がる。
スキルが上がると更に1本にかける時間も少なくなって・・・。
またしても上昇スパイラル。
こうやって物事が上手くいくと当然テンションも上がってくる。
テンションが上がるという事は、作業そのものが楽しくなるわけで。
要は作業の止め時がわからなくなるのです。楽しくてハイになっちゃているのよな。
やっている事はものすごく地味なんだけど。
さっきからスキルのアナウンスが度々鳴ってはいるけど、ハイになっている私には聞こえていないも同然。
私の手が止まったのは突然だった。
ピンポーン
ガチャン!
≪お知らせします。プレイヤー源三によって〈ビーディル湖〉のレア魚『ゴールデンバス』が釣り上げられました≫
・・・ビン割れた。
あぁぁぁぁ・・・。
割っちゃった、ついに割っちゃったぁ・・・。
アナウンスの音にビックリして、つい手が滑ってしまった・・・。
やってしまった。
さっきまであんなにテンション上がって高揚感マックスだったのに、急に萎んでいくのがわかるほど落ち込む私。
ミスしてしまった事が、というよりビンを割ってしまった事に落ち込む。
これは私だけかもしれないけれど、ガラス製のものとか陶器とかを割ってしまうとすごく悪いことした気分になるのです。
なんか心臓がバクバクしていて手が震えてくるのよな。
コンコン。
扉がノックされて思わずビクッっとなってしまう私。
「入るぞー。なんかビンが割れた音がしたから様子を見に・・・って、そこまで落ち込まなくても・・・」
落ち込んでしゃがみこんでいた私を見て、困ったように笑う男性。今日最初に案内してくれた男性だ。
思わずしゃがんだまま男性の足元まで移動する。
「気持ち悪っ!なにそのヌルっとした動き」
「ゴメンなさい、ビン割ってしまいました・・・本当にごめんなさい」
男性が着ているローブの裾を持ちながら頭を下げる私。たぶん傍から見たら中々気持ち悪かったと思う、大の大人が子供のような仕草で謝っているから。
当の私は罪悪感で何も気付けなかったけど。
「いや、ちょっ・・・そんな落ち込まなくって良いって!頭上げてくれって!っていうか立ってくれよ、なんか変な気分に・・・。って違う、ほら!立ってくれってば」
男性に腕を引かれて立ち上がるけど、いまだうなだれている私に男性の表情を見る事は出来ない。
「ん、う゛ん。・・・え、えっとな、ビンを割っちゃったのはしょうがねぇ事だから気にしなくて良い。俺らも結構な数割ったことあるから大丈夫だ。そこらへん加味して仕入れてるから何の問題もない。ほら、そこらへんに割っちまった形跡あるだろ?日常茶飯事だから。な?頭上げてくれって」
「・・・はい、でも本当にすみませんでした。以後気を付けます」
「だぁから大丈夫だって、割れるのが当たり前だから。だからそこに破片を入れる為の箱が用意されてんだから。しょっちゅう割れるから、まとめて処分する為にあるんだぞ、あれ。だから本当に気にしなくて良いんだって。だからその顔ヤメテくれよ・・・」
顔?顔が変なの、今の私?
指摘されたし、気分を切り替える為にも顔を手で覆いながらマッサージ。
「ふぅ、よし、俺は大丈夫、大丈夫。俺は正常、ノーマルだから。俺に野郎を愛でる趣味なんか無い、無いぞ・・・」
なんか小声でブツブツ言っている彼は大丈夫だろうか?
失態を見せてしまった私としては機嫌を損ねてしまったのなら申し訳ないのだが・・・。
「よし!もう大丈夫だな!俺もお前も!気持ち切り替えていこうぜ!」
「はい、ミスを引きずるのはよくありませんもんね。ちゃんと切り替えます」
「おう、それなら大丈夫そうだな。ちょうど良いから進捗確認させてもらえるか?アンタの仕事が丁寧なのは前回でわかっているんだけど、一応な」
「ええ、もちろんです。お願いします」
この人もレアさんと同じく良い上司になりそうだな。世間一般の良い上司像なんて知らないけど。
「・・・なぁ、俺の目がおかしくなけりゃ、あと一鍋で終わりに見えるんだけど・・・?」
「ええ、そのようです。つい楽しくって張り切りましたから」
その分ミスった時の反動が凄かった訳ですけど。
あれだ、ドミノの終盤でミスって全部パアになる感覚に近い。あれって絶望感ハンパないよね。
今回は別にミスっても、今までの作業が無駄になるわけじゃ無いから、そこまでひどくはなかったけど。
「・・・もうお前、ここでずっと働かねぇ?」
そんなキラキラした目で見ないで・・・。
さすがにお断りなので。
ゲームでずっと薬作りは違うと思うの。
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名前:カケル
種族:人族
レベル:1
メイン職業:剣士
サブ職業:薬士
HP:100
MP:35
STR(腕力):12
VIT(体力):11
INT(知力):6
MID(精神):10
DEX(器用):11
AGI(敏捷):10
LUK(運) :10
LP:0P
SP:0P
≪称号≫
【人との縁を結ぶ者】【研鑚する者】【異変に気付く者】
≪スキル≫
戦闘:(戦闘技術・さばき)
【長剣術 Lv4】【杖術 Lv2】
【棒術 Lv1】【体術 Lv1】
【ナイフ術 Lv2】
戦闘:(技・強化)
【回避 Lv3】【器用強化 Lv4】
【ブレイク】【剣速 Lv1】
技能:(鑑定・隠蔽)
【植物鑑定 Lv15】【生物鑑定 Lv3】
【道具鑑定 Lv11】【気配察知 Lv1】
【観察】
技能:(生産・収集)
【調合 Lv5】【採取 Lv7】
【解体 Lv1】
技能:(思考・感覚)
【集中 Lv9】【鍛錬 Lv5】
【リズム感 Lv4】【流れ作業 Lv8】
【精密作業 Lv7】【根性】
技能:(抵抗・耐性)
【抵抗:閉所】【抵抗:暗所】
【抵抗:孤独】
その他
【生活魔法】【愛嬌】
【習得率上昇(小)】【説得】
【指さばき Lv12】【しゃがみ移動 Lv3】
≪加護≫
【妖精の気まぐれ:風】
【妖精の気まぐれ:土】
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