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30 武器の相談

あの後ログアウトしてから、サッとシャワーと歯磨きだけしてすぐにベッドに入った。


朝(実際お昼前)起きてから、シリアルだけ食べてまたすぐにゲームにログイン。

一人暮らしだと、毎日洗濯とかしなくて良いのは利点だよね。それでも面倒くさくてたまに業者使ったりするけど。







ゲームの中は夕方過ぎ。

もうほとんど陽が落ちていてだいぶ暗くなってきている。


あまり遅い時間にならないうちに一度ブランドンさんの所へ向かう。相談だけ先にしておきましょう。



「こんにちは、今お時間大丈夫ですか?」


「おう、カケルか。大丈夫だ、こっち座んな。あぁ、そうだ。先に改めてお礼言わせてくれ。おかげで商人連中とのわだかまりが解消されてきてんだ、特にウィリアムのな。ホント、ありがとよ」


「いえ、とんでもない。私は特に何をしたってわけでもありません。どちらかというと女将さんのおかげでしょう?お礼なら女将さんにお願いします」


「ははっ、あぁもちろんだ。真っ先に向かったら、それはそれで説教食らっちまったがな!カケルがクエストを受けていなかったら、もっと状況は悪化していただろうに、先にアタシんとこ来てないでカケルにお礼しな!ってさ。俺としちゃ二人には本当に感謝しっぱなしなんだ。実際に動いてくれた女将さんはもちろん、カケルはウィリアムに偏見無しに接してくれたろ?おかげでアイツ、あれからよく話すようになたんだよ。まだまだつっかえながらだけどよ」


そうか、ウィリアムさん上手くやれてるんなら良かった。

無理させてしまう状況になってしまったのだったら、申し訳ないと思っていたけれど、この様子なら問題はなさそう?



「んで?今日はどうしたんだ?武器でも作りに来たか?」


「いえ、作るよりも先に相談だけさせてもらおうかと。ある程度の金額が手に入ったので、まず揃えるべきは武具だと思ったんですが、如何せん知識も何も無いもので初心者向けのおススメとかがあればご意見伺いたいなと・・・」



「ふむ、なるほどなぁ。お前扱える武器は?長剣とか短剣とか、槍とか弓とか。[剣士]つっても武器スキル1個って訳じゃねぇだろ?もし持ってないなら、何かしらサブで扱えるものは取っといた方が良いぞ?」


「ええと、基本は長剣ですね。スキル的にはあと【棒術】【杖術】【ナイフ術】を持っています。将来的には刀剣系のスキルは取りたいんですが、まだリストに出ていなくて・・・。刀剣自体も見ていませんし」


「なんか[剣士]らしくねぇ構成だな・・・?普通【棒術】は[槍士]だし、【杖術】は[魔術士]か[治癒士]で【ナイフ術】は[シーフ]か[格闘士]なんじゃねぇの?」


「え・・・そうなんですか?」


「いや、別に決まりがあるわけじゃねぇし、どんなスキルを取るかは人の自由だけどよ?単純に珍しいよなって。そんだけだ、俺も詳しいわけじゃねえから気にしないでくれ。あと・・・刀剣な・・・。刀剣・・・ちょっと待ってろ」



そう言って奥のほうへ行ってしまったブランドンさん。

何か心当たりでもあったのかな?それだと嬉しい。どんな小さな情報でも欲しいです。


っていうか、やっぱり私のスキル構成変なのか・・・。

ちょっと落ち込む。意識して取ったものではないにせよ、確かに[剣士]っぽくは無いか・・・。


普通はどんな構成なんだろうか。

ノーランさんは【大剣術】と【長剣術】が専門って言ってたっけ・・・。

でも、あんまり【大剣術】には魅力感じてないんだよなぁ。パワーで薙ぎ払うより、スピードで翻弄する方が好みなんです。盾とかもあんまり使いたくない派。


[シーフ]とか[格闘士]とかのが良かった説。





「おう、待たせた。ウチにある刀剣と呼べるものはこれしかねぇんだけどよ、お前が言ってんのってこういうのか?」


ブランドンさんが持ってきてくれたのは、刃渡りが5、60㎝くらいの長さの片刃で少し反りがある剣。


これは・・・いわゆる小太刀とか脇差って呼ばれる類のものでは!?

形状も明らかに刀っぽい。


「これ、これです!刀です!こういうのが欲しいんです!こちらは売り物ですか!?おいくらですか?っていうかブランドンさん刀、打てるんですか!?」


「お、おい、落ち着けって。これは俺が打ったんじゃねぇんだ。昔に俺の師匠が打った一振りでな?売り物としては扱ってないんだよ。その・・・需要も無いし、俺はメンテナンスできねぇし、性能も特別良くねぇし。いくらなんでも、師匠が打ったとはいえ鋼の試し打ちの為だけに作られたものだから、これは売り物として扱えねぇんだ」


「なんと・・・。そんな・・・。ちなみにブランドンさんは刀を打つ事は無いんですか?」


「・・・打たないってか、打てないだな。まずこの国では鋼が手に入らねぇ。師匠曰く、刀には鉄と鋼が必要らしい。しかもただの鋼じゃねぇみてーだしよ。師匠が打ってた時俺はそばで見ていたから、なんとなく手順は分かるが、それでも打てるとは言い切れない。これに使われている鋼や製法は、閉ざされし島国『倭国』のものだ。そう簡単に再現出来るわけじゃ無い、師匠は運よく奇跡的に倭国へ行けたんだけどな」


「倭国へ行く方法が、ほとんど無いというのは私も聞きました・・・。くぅ・・・やっぱり、倭国へ行く方法をどうにかして見つけなければ!」


「そんなに欲しいのか・・・?うーん・・・。――――じゃあ、お前これ使うか?」


「・・・え?いやいやいやいや、これは売り物じゃないって先程おっしゃていたじゃありませんか!?お師匠さんの大事な一振りなんでしょう?」


「いや?売り物じゃねぇのは、武器として俺が納得いかねぇからだ。もちろん師匠もそうだったろう。これで金は取れないって意味だよ。アフターケアはできねぇから、耐久度が0になったらお終いの使い捨てって事だが、それでも良いならお前に譲ってやる。どうだ?」


「・・・そ、そんな。ほ、本当に宜しいので?この国では貴重な一品である事には変わりないでしょう?どこかに保管とかしなくて大丈夫なんですか?」


「あぁ、珍しいのは確かだが、価値があるわけじゃないんだ。少なくともこの国に刀剣使いはほとんどいないし、需要も無い。王都には倭国の品を集めるのが大好きな貴族達もいるが、そいつ等には知られてねぇし、問題ない。どうせなら、飾るよりかは使ってほしいしな。っていうか、正確には倭国の技術を模倣しただけだから、美術価値も無いと思うぞ」


確かに。言われてみれば一応これは模造品って事になるのか・・・。

これがもしも100年前とか1000年前とかのものだったら、それでも価値はあったのかもしれないけれど、せいぜい十数年前とかだろうから、歴史的価値も無い。


それなら貰っちゃっても良いのかな・・・?

せめて何かしら対価は渡したいところだが。




「いらん。言ったろう?これは俺が売り物とは判断できないものだ。これで金を貰うのは俺のプライドが許さん。ついでに言うなら、俺の師匠も許さん。何か対価を受け取ろうもんなら俺があの世でどやされちまうよ」


くぅ。このカッコイイ職人め!

思わずキュンとしてしまったじゃないか!




「・・・では、ありがたく頂戴します。もしも私が倭国へ行くことが出来たら、その時は材料と製法を持ち帰ってこれるように頑張ります。それを今回のお礼とさせて下さい。いわゆる出世払いというやつですね」


「はっは!そうだな!そうさせてくれ。それなら俺も喜んで受け取るよ、楽しみにしてる」


「ええ、いつか必ず。絶対に行って見せますから」


うん、絶対。絶対行ってみせるんだから!







「んで?サブの武器はそれで良いとして、他にも何か欲しいもんあるか?正直、ここよりもツドル行った方が品ぞろえは良いぞ?まぁ、あっちはあっちで目移りするハメになるだろうがな?」



ツドル・・・。確か、生産の街って言われている所だよね?

ふむ、職人さんが多くいる所っぽいよね。うーん、私がそんな所行ったら破産まっしぐらな気がするなぁ。実用品に関しては結構衝動買いしちゃうタイプ。

装飾品とか、衣服とか食事にはお金掛けない分、そこで爆発させるかんじ。



「そんなに急いで街を移動する気もあまり無いので、出来ればここで揃えておきたいんですよね・・・。正直なところ、自分の戦闘スタイルが確立するまでは、そこそこの性能のもので良いかな、と。あまり選択肢が多くても無駄遣いする可能性が高いですし」


「まぁ、そうだな。最初は無難で行った方が良いだろう。大体、レベル20くらいでオーダーメイドとか効果付きとかの武器に変えるやつが出てくるかな?もちろん速いやつ遅いやつ色々だけどよ。ま、今はまだ買わなくても大丈夫だろ。ここらへんは、あんまり火力無くても問題ない魔物しか出ないからな。目安としては、レベル20かツドルに行く前のフィールドボスに当たるかだろうな。まだそんな予定じゃないんだろ?」


「ええ、全然ですね。ゆっくり慣れていくつもりです」


「そんくらいの方が良いと思うぞ?あんま生き急いでもなぁ。・・・あ、お前ら死なないんだっけか・・・正確には死んでも復活出来るんだったな。だからたまに見かける奴等はあんなにイケイケなのか。ありゃ、あんま見てて良い気分じゃねーな?」



あぁ、なんていうか、血気盛んよね。他のプレイヤー。

私もたまに見かけるけど。まぁ、本気でゲームを楽しんでいるんでしょう、きっと。



「人それぞれですけどね。全員が全員そういう訳でも無いでしょうが、思い切って行動出来るという利点を生かすならば、あれもまた正解かもしれません」


「まぁな、俺も同じ状況なら突っ込んで行って、新しい土地へ鉱物探しとか行っていたかもな。若干の僻み妬みはあるかもしれんな」



「まぁ私はそれでも死にたくは無いので、防具を揃えることにします。ウィリアムさんの所で見れますよね?」


「おう、防具はアイツの専門だ。商業ギルドと問題があったから、あんまり捌けずにストックたんまりあるだろうよ。じっくり見てこい」



それは・・・喜んで良いんだか・・・。

ブランドンさんの工房を後にして、ウィリアムさんの所へ向かおう。




防具って武器以上に知識無いなぁ。

イメージが全く湧いてこない。




とりあえずこちらも相談だけしてみよう。







お読み頂き有難うございます。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。


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