0-61 すれ違い
本日夜にもう一話投稿します。
「ほう、4人を相手にするってか。おもしれえ兄ちゃんだなぁ。姉ちゃんはちょっと待ってろよ? 直ぐに済ますからな?」
げへへへ、と品の無い笑いでゆっくりと近付いてくる男たち。
男たちはずっと暗闇にいたから此方が良く見えるのだろうが、此方も暗闇に目を慣らすには充分な時間が取れた。
問題ないとサークヤが頷くと同時に後ろの男がサークヤを目掛けて襲い掛かってきた。
が、サークヤは落ち着いて振り落としてきた剣を、自分の剣で絡め取って横へ弾き飛ばし、剣道の小手の要領で手の平を剣の腹で叩いた。
「ぐわっ!」
膝をつく男、一人目。
「なっ! この野郎!」
今度は正面にいた男だ。
しかし、サミヤを軸にくるっと回り込んでその剣をキンッと弾く。
今度はその横の男が剣を振るって来たが、サークヤにとってはとてもゆっくりとした剣だ。
絡め取って遠くへ飛ばした後、剣の腹でその腕をはたくと、男は堪らず蹲った。
もしかしたら骨折はしているかも知れないが問題ない、二人目。
今度はサミヤの向こう、対角にいた男が剣ではなく腕を伸ばす。
サミヤを人質に捕ろうと言うのだろう、だがサークヤはサミヤの回りを踊る様にクルリと回り、剣の腹で頬を叩いた。
「ふぶげっ!」
正面にいる男の方へ吹っ飛ぶが、手加減されているので命に別状は無い筈だ、これで3人。
「ぐっ! 此奴めっ!」
そう言って先程剣を弾かれた正面の男が向かってくるが、既にサークヤの敵ではない事は明らかだ。
呆気なく剣を飛ばされ、サークヤの剣の柄頭で脇腹を小突かれて最後の1人が倒れ込んだ。
「さて。どうしよう、此奴ら」
蹲っている男たち4人を見下ろすサークヤ。
「……」
サミヤもへたり込んでしまい、苦笑するしかないサークヤだった。
「大丈夫?」
手を出すサークヤに引き起こされたサミヤは、溜息をついた。
「あなた、本当に駆け出しなの? 絶対嘘でしょ!」
「い、いや。本当だって。冒険者になる前は、普通に働きに行ってたし」
*
「……此奴らか、夜道を襲ってたのは」
詰所を知らないサークヤは、襲ってきた男達を一所に集め見張りをし、サミヤが保安隊を呼びに行っていた。
サミヤが見張るには力不足だったし、サークヤは詰所を知らなかったので当然と言えば当然な選択肢である。
どうやら月の昇っていない月替わり前後にのみこうして悪事を働いていた輩だったようで、保安隊が来ても闇夜に紛れて隠れてしまい、なかなか捕まえる事が出来なかったらしい。
「協力、感謝する。一度詰所まで同行願いたいのだが……今からでも良いか?」
保安隊の小隊長だと言う男が、少し時間を気にして言う。
「サミヤさん、どうしよう」
「う~ん、そうね。明日も仕事は遅くからだから私は良いわよ?」
「……じゃあ、今から行きます」
「そうか、感謝する」
そう言って詰所に案内する小隊長に付いて行く二人だった。
「ふむ、なるほど。いきさつはよく分かった。あの暗闇の中、あの程度の怪我で済ましてくれたのは僥倖だろう。問題になる事は無いな」
もちろんサークヤに罪は掛からない。
襲われた側であり多人数相手なのだから、充分正当防衛だろう。
街中で剣を振るうと言う禁忌は、相手が先に破ったので問題ない。
「ふぅ、そうですか。良かった。サミヤさんにも怪我は無かったし」
沙汰を言われ漸く緊張を解くサークヤ。
「お前さん、腕が立つんだな。保安隊に入る気は無いか?」
「い、いえ。仲間と旅をしているんで……」
「そうか、残念だ。断られるのは二人目だな、今日は。全く、なんて日だ」
そう小隊長が愚痴る。
「何かあったんでしょうか、隊長さん」
「俺は小隊長な、お嬢さん。昼にも騒動があって、女性が闇組織の連中に囚われそうになったのを返り討ちにしたんだよ。その女性にも断られてな」
残念そうな表情で説明を続ける小隊長。
「変わった武器を持っててな、槍の様だったが刃先が黒光りしていた」
「ええっ! それってもしかして……僕のような服を着ていませんでした?」
「お? ど、どうしたんだ? ……そうだな、似た感じの服だったな」
「シーナさんだ!! シーナさんが此処に来てたんだ! ええと、その人たちは今何処へ?」
その剣幕に気圧される小隊長。
「ええと…… この人、仲間と逸れたそうなの」
「ああ、そう言う事か。と言っても一人だけだったぞ。その女性も人を捜すって言って、行き先は言わなかったな」
「そ、そんなぁ…… シーナさんまで一人だなんて」
ガックリと項垂れるサークヤ。
「お嬢さんは其処の鍛冶屋の娘さんだったな。今日は其処へ?」
「ええ、そうですね。元々、鍛冶屋に用があったみたいだし」
すっかり耳を垂らした仔犬モードのサークヤを余所に、話を終わらせる二人であった。




