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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-49 内定?

「出発は少し待ってください」


 賊たちを捕縛し町に戻ろうとした保安隊に、そう切り出したのはユリだった。

「お馬さんたちが疲れていて辛そうです」

 そう言われて初めて、ここまでほぼ全力疾走だったと気付くミヴァリィ隊長。

「ゆっくりでも駄目か?」

「少し休憩させてあげないと。日陰でお水や草を食べさせてあげてください」

 酪家で育ったユリは、世話をしていた家畜たちの言いたい事がなんとなく分かる。

 毎日動物と触れ合ってたのだから、ユリの言葉には説得力があった。

 言われた隊長はその迫力に負け、隊員に水を汲みに行かせ近くの草のある木陰のところまで馬を移動させた。

 ユリがブラッシングをしてやると、喜ぶように鳴き声を上げ草を食べる馬たち。


「……あんた、保安隊に来て馬の世話をしないか?」

「ええっ! 私、町では他のお仕事を考えてたんですが……」

「いや、無理にとは言わん。受付や会計をやりながらでも良いんだが……」

「……考えさせてください」

 家業である酪農以外の仕事をしてみたいと漠然と考えていたユリ。

 もちろん具体的な仕事は決めていなかったので、魅力的な仕事内容に真剣に悩む事になる。

「あら、それは良いわね。職場での警護が必要ないわ」

「ええっ! 少しは考えさせてっ!」


「ところで、住む所は確保できているのか?」

「ええ、それなら親戚の家に……」

「町の北の方にあるセレルムって家だ」

 横からテリオが口を出した。

 警邏してもらうなら家は知ってもらわないと、と考えてだ。

「おお、それなら知ってるぞ。隊の詰所にも近いからな」

「良かったじゃない。これで安心ね」

「ええっ!」

 あっという間に話が進んでしまい、戸惑うユリだった。


 一行は隊の馬に乗せて貰って町へと入った。

「功労者を歩かせる訳にいかんだろ」とは隊長ミヴァリィの言葉だ。

 それまでの旅程に加え今回の事件により、疲労がピークを迎えていたユリには助けに船だった。

「ここがケラテシーだ。良い町だろ」

 と隊長が声を掛けるが、ユリは里以外を知らない為、人が溢れ建物がひしめく町並みは目が回るほどの光景だった。


「どうした? ユリ」

 世話になるセレルム家の前で馬から降りたユリは、その場でへたり込んでしまった。

 馬にではなく、人や建物に酔ってしまったようだ。

「大丈夫? ユリさん」

「ちょっと刺激が強すぎたのかしら」

「酔い止めの薬でも出したろうかや?」

「い、いえ。大丈夫よ。少し休めば良くなるわ」


「あらあら、何故ウチに保安隊が? と思ったらユリちゃんじゃない。テリオたちが何かやらかしたの?」

「……キク、いくらなんでも、そりゃないだろ」

 中から出てきた女性がユリに声を掛けると、テリオが反論した。

「いや、テリオ君たちなら何を仕出かしてもおかしくは無いだろ」

 更に中から出てきた男性がテリオに声を掛けた。

「リビウスまで…… そんなに俺たちを悪人にしたいのか?」

 そう言い争った後、お互いに相変わらずだな、と笑い合う。


「ふむ、もう陽も傾いてきた。詰所に寄って貰おうと思ったのだが、明日また来てくれ」

 と隊長が声を掛け、詰所へと帰って行った。

「……やっぱり何かやったんでしょ?」

 ジト目でテリオを見やるキク。

「まあ、良いわ。こんな所で立ち話も何だから、中に入りましょ」

 そう言って一同を家の中に招き入れた。


「あっ! シーナさんだ! テリオのおっちゃんとタークのおっちゃんもいる~!」

 きゃ~とシーナに群がる二人の少女。

「カスミちゃんもスミレちゃんも元気だった?」

 そう少女たちと挨拶を交わすシーナだったが……

「「おっちゃん……」」

 壁に手をつき、どよ~んとしている男が二人。

「ああ、テリオはキクの1つ上だから。この子たちから見たら充分おっちゃんなのよ」

 サークヤとユリに種明かしをするシーナ。


「キクは絡家の出身だから、ユリの叔母ね。そして旦那さんのリビウス。カスミちゃんとスミレちゃんはユリと従姉妹になるわね」

 そうサークヤとユリに紹介する。

 ユリもキク以外は初対面だった。

「ユリ・ホゥスカーです。これから暫くお世話になります」

 ペコリとお辞儀するユリに皆がよろしく~と答える。

 随分とアットホームな雰囲気だったので、ホッと安心した。


 チラッと見ると、壁際のテリオがまだ復活してなかったので、続けて紹介をするシーナ。

「こっちはサークヤ。半年とちょっと前に森の中で保護してね、一緒に行動する内に里まで連れ込んだらウチのお婆ちゃんに気に入られちゃって。里に永住しないかって誘われてる所よ」

「ええっ!! そんな事が!? あのタカ婆ちゃんに気に入られるって相当じゃない!」

「詳しくは聞いてないけど、どうやら私たちの先祖と故郷が同じらしいわ」

「ええっ!!! 初代の故郷って分からないって話だったじゃない!」

 目を剥いてサークヤを見るキクは、里の事なのでそれ以上は聞き出そうとはしなかった。


 その日の夜は、里を出て以来の布団で寝る事が出来たので、翌朝はとても遅い起床となる五人だった。





ユリの就職先を迷ったまま書き出したのに、あれよあれよと話が進み...。

書きながら、あれ? このまま決まっちゃいそうなんだけど? と(笑)


初めは書店の売り子あたりを考えていたのに、びっくりですね。

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『カースブレイカー』シリーズ
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