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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第一章 道具屋の日常
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1-7 近所に勇者(?)が引っ越してきたようです。

 実際に勇者(?)が橋の向こうに越してきたようだ。


 と言っても街角で遭遇する事は無かった。

 無かったが、数日後に嫌でも会う事になるだろう事は夢にも思わなかったユーキである。

 近所の人の話によると、朝早くに出掛け日が暮れる頃に帰ってくるそうで、「軍施設に入っていくのを見掛けたので、恐らく訓練を受けに通っているのでは」との話だ。

 それに連中(・・)を見た人たちの話では、目付きが悪く容易に近付く事も許さないような雰囲気だったらしい。

 獣の目ではなく、因縁をつけるような思わず避けたくなる目で、近くにいた人たちがザッと道を開けていたという。

 モーゼかよっ!

 若い男二人、女一人だったそうだ。

 一人じゃなく3人か……


 直接会いに行くことは話を聞く限り避けた方が良さそうかな、オトモダチになりたくない人種だねたぶん。

 軍施設に通っているって話だけど、軍関係者に(つて)なんてない。

 いや、無いこともない。

 本店なら軍関係からの受注も少なからずあるって話だけど……必然的にダグロスさんたちにも俺の事(・・・)を話さなければならなくなるし、ケーブさんたちの耳にも入ってしまうだろう。

 騒ぎが大きくなってしましかねない。

 他に誰か詳しい人がいれば良いけど、そんなに都合良くはないのはこの世の常。


 ……あの二人、何か知ってるのかな?


 聞きたいけど、まだ聞けないな。

 少なくとも今は駄目だ、聞く時じゃない気がする。

 それにしてもあの二人って、何の仕事しているんだろ?

 依頼に来た日は上着の下に制服っぽいのを着ていたみたいだけど。

 何処の制服なのだろう、見たことないんだよなぁ。

 ピクニックの時は二人とも動きやすそうな私服で可愛いかったなぁ。

 またピクニック行くときも是非一緒にって誘っておいたけど、次は何時になるか分からないよな。

 あとは仕事、依頼品でのやりとりで話が出来そうだけど、果たしてその話題になるかどうか...ならないだろうなぁ。


 その今回の依頼品だけど、今日はいよいよ肝になる部分の加工だ。

 成功すれば今までの苦労が報われる。

 何せ精密加工が要求された。

 杖状の金属の持ち手部分に、装飾された木の柄を段差が無いように嵌め込んで欲しいという依頼だった。

 いや、杖状ではなく、杖だコレ。

 構造上、どうしても金属部は分離体構造になってしまうのだが、”如何にも繋いでます”候では駄目で衝撃にも強く決して抜けない事が求められた。

 ロウ付けする事も考えたのだが、木でできた柄の部分が燃えてしまいかねない。

 抜け止めのピンでは見えてしまう上に強度不足だそうだ。

 強度不足って…… 何に使うのやら。


「さて、やるか」

「本当にこんなんで出来るのか?」

 ケーブさんが疑念の目を向けてくる。

「実験して見せたでしょ? 大丈夫ですよ。うちの自慢の工作機械で加工してるんだし」

 あらかじめ火を点けておいた炭の中に、既に装飾を施した杖の頭になる部分を入れて、空気をゆっくり送り真っ赤になるまで熱する、じっくりと時間を掛けて。

「さて、そろそろいいかな。ケーブさん、いきますよ。準備は良いですか?」

「おう、いつでも良いぞ」


 真っ赤になった杖の頭部を、固定するために作っておいた木枠にひっくり返した状態で立てて、木の柄が当たる部分だけ先に濡れ雑巾で冷やしておく。

 冷やし過ぎてはいけないし、熱いままだと木の柄が焦げる恐れがある。

 事前に実験で確認しておいた。

 ぶっつけ本番、一発勝負は怖くて出来ない。

 予め木の柄を嵌め込んでおいた杖の下部分を、上から一気に差し込み隙間が無いか確認した後、上から水を掛け急冷させる。

 冷えるまで動かせない(抜けてしまう)ので、この方法を採った。

 十分冷えたのを確認し、そっと持ち上げて確認する。

 そのままストンと頭部分が落ちる事もなく、力いっぱい引っ張っても捻ってもビクともしない。


 焼嵌めだ。


 木の柄部分には嵌める前から濡れ雑巾を巻いておいたので、高温で焼ける事もなかった。

 この工法は今の技術では寸法管理が非常に難しかった。

 事前の実験で適度な寸法を見つけるのにかなりの時間を費やした。

 それを確認する方法も然り。

 加工も細心の注意を払った会心の作である。


 二人で「「おお~~~!!」」と顔を見合わせ感動を分かち合う。

 傍から見たら異様な光景だろう、二人で杖を引っ張ったり捩じったりした後に嬉しがっているのであるから。

 実際、この光景を偶然見てしまったサリが、後ずさりした後ドアに隠れるようにして昼飯時を教えてくれた。


 サリにしては珍しい行動である、あははは。




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