0-41 大猟
旅は順調に始まった。
いや、順調ではあるのだが……。
「ほら、そっち行ったぞ!」
「はいっ! ……あれ? まだいますね」
テリオが指示を出し、サークヤが走り回る。
後方からはユリがタークとシーナに守られながらゆっくりと歩いてくる。
狩るは鹿の群れ。
一昨日からの五人のパターンになっていた。
「これで20頭目か…… 結構増えているな」
「でも、だんだん遭遇する数は減ってきてますね」
「こんなぎょうさん倒しちゃ捌き切れへんがや」
「そうね。食べて残りを燻製にしても持ちきれなくなりそうだわ。ユリは大丈夫? 歩き慣れてないでしょ」
「ええ。ゆっくり進んでくれているから、まだまだ大丈夫ですよ」
「まだこれからぎょうさん歩かにゃあかんでな。何かありゃ早めに言やあな」
「そうだな、ちょっと早いがここで休憩するか」
「皆さん、いつもこんな感じなんですか? 何と言うか……」
少々呆れたような顔で質問するユリ。
「え? そうだね。以前は僕がユリさんのように守られてたけどね」
「そうなの? でも、あんな大きな鹿を簡単に……それもこの数。里に出たら大騒ぎよ?」
「いや、里に近付けさせない為にも、周囲で見掛けた害獣は狩ってしまうんだ。この辺りもまだいるかも知れないから、もう少し回るぞ」
「あ、やっぱり。里に入る前も、もう少しって言いながら回ってたんですね?」
サークヤがジト目でした質問に、テリオはニヤリとする。
「まあ、俺たちが里に自由に出入りしても咎められない条件の一つだからな」
「へえ~。じゃあ他の条件って何ですか?」
「ああ、今回のユリのように里を出入りする者の警護、里出身者の無事の確認や情報のやり取り、鉄鉱石の収集とかだ。お陰で国中を回る事になるがな」
サークヤの質問に答えて肩を竦めるテリオ。
言わば里の中と外との連絡役というところか。
「ああ、やっぱり鉱石収集は里の為だったのね。直接聞いた事なかったからスッキリしたわ」
「いや、それはついでだな。里に不要な鉱石の換金でずいぶん懐が温かくなったんで、今ではそっち目的の方が主体になってるぞ」
「「「ぶっちゃけた!!」」」
テリオの暴露に、シーナとターク、サークヤが白目を剥いた。
「ぶふっ! あはははは」
そのやり取りで、ユリが思わず噴き出した。
それをきっかけに五人が笑い合う。
一通り笑い合った後、テリオがユリに靴の状態を確認する。
「はい、直してもらってからずいぶん楽になって疲れにくくなりました」
「ああ、僕も最初の日に調整してもらったよ。とても動き易くなるんだよね」
うんうん頷く二人。
「靴擦れはあらへんかや?」
「はい、大丈夫ですね。全然平気です」
「僕なんて、靴を直してもらう前に靴擦れしまくって酷い状態だったよ」
「まあ! そんなになる前に言えば良かったのに」
「出会って早々だったから言い難かったんだろ。まあ、今でもそうかもしれんがな」
違いないとサークヤ以外がうんうん頷くのを見て、口を尖らせるサークヤ。
「そんな事ないですよ~」
「ぷっ! あははははは」
随分と賑やかなパーティーになったものだ。
「おっと、まだいるな」
「ちょっと遠いから私がやるわ」
そう言いながら弓を構えるシーナ。
シュッ!
随分な距離があったにも係わらず一発で仕留めた。
「はぁ~、どうやったらそんなに巧く弓が撃てるんですか? 私なんて全然飛ばないのに」
「シーナのは参考にならんぞ? 腕力が違いすぎるからな」
「ちょっ! 失礼ねテリオ!! コツよ、コツ!!」
あははと笑う一同、やはり賑やかだ。
休憩している間にも、倒した鹿の肉を捌いて焼いたり燻製にした物を包んで仕舞い込む。
予備に持ってきていた袋も既にパンパンに膨らんでいた。
燻製へと下処理した物は乾燥させる為の籠に並べてぶら下げる。
こういった燻製に必要な道具は冒険者には必需品だが、今回は確実に容量過多だ。
「流石にこれ以上は持ち歩けないな。美味くない部分を捨てて良い所だけ持ってっても直ぐにいっぱいになるぞ」
既に売れるであろう毛皮や角は諦めている。
「じゃあ、これからどうするんですか? まだ遭遇しそうですよね」
「焼いて埋めるしかないわね。ちょっと手間だけど」
「うへぇ。また掘るんかいな。わや言いよる」
「だが、ほったらかしには出来んぞ。他の害獣を呼び寄せてしまう」
「あの~。私、荷物少なめなので少しくらい持っても良いんですが……」
ユリが手を挙げて申し出るのだが……
「却下。歩き慣れていないユリの荷物は増やせられん」
結局、良い案が出なかったので埋める事にした。
こうして旅は、飢えに困らない程の肉を確保したものの、重労働を強いるスタートとなった。




