0-38 稽古の成果
本日夜にもう一話投稿します。
キンッ キンッ キンッ キキンッ キンッ キンッ
毎朝、里の中に響く金属音。
サークヤ達の剣の稽古の音である。
女衆はこの音を聞きながら朝飯を作り、男衆はそれぞれその日の仕事を準備する。
子供たちはこの音で目覚め朝の支度をする。
これが里の朝の光景だ。
稽古には大家のタリオを中心に、テリオ、テリオの弟ハル、長男マサ、次男ナオ、鍛家のテツ、息子のノブ、そしてサークヤの8人が参加している。
鍛家の二人は本格的にではないもののそれなりの腕を持っているが、大家の5人は本格的だ。
これは大家の里での役割が”里を守る”こととなっており、熊や豹等が出ても一人で撃退できる事が求められていた。
タリオはもちろん、テリオもハルもそれはクリアしている。
息子たちハル、ナオはまだまだだが、何れはそこまでの腕になるよう修練を重ねる事になる。
鍛家はそこまで求められてはいないが、大家の連中が不在の時の里を守るという役がある。
里の者は皆、弓や薙刀を習い自己防衛できるようにしているが、時として刀も使えるようにと刀を打つ鍛家の男にも剣技を習わせている。
その稽古の中に入り込んでいるサークヤだが、彼は不安を覚えていた。
「どうした、サークヤ。考え事か?」
気が付いたテリオが声を掛ける。
「いや、僕って強くなっているのかな……と」
ハルやマサの腕が上がっていくのを肌で感じつつ、自分はどうなのかと疑問を持っていたのだ。
「そんな事か。ここに来るまでも俺との稽古で腕を上げていたが、親父と稽古するようになってから更に腕を上げてるぞ?」
「そうでしょうか。あまり実感が湧きませんけど」
「じゃあ、俺と少し剣を交えてみるか」
最近はタリオとばかり稽古をしていたので、久し振りに剣を交える事になったテリオとサークヤ。
キンッ キンッキンッ キキンッ キンッ キキンッ キンッ
徐々にスピードを上げていくテリオにちゃんと食らい付いていくサークヤ。
「じゃあ、これならどうだ」
キンッキンッ キキンッ キンッキンッ キキンッ キンッ
「嘘っ!」
「うわぁ……」
「……すっげぇ」
その様子を見ていた男の子3人組から感嘆の声が上がる。
「ふんっ。お前たちだってこの冬に腕は上がってるんだぞ?」
3人にそう言うタリオ。
そう、サークヤが稽古に参加しタリオが指導に加わった事で、里の者たちも実力が底上げされた。
それはタリオ、テリオ、ハルまでもがそうだった。
サークヤが里に来た当時にタリオが見せた超速の剣技を、当時できなかったであろうテリオがいつの間にか出来るようになっていた。
対するサークヤも、当初のように追いつけない事は無く、対処して見せた。
毎日の鍛錬でどんどん皆のスピードが上がっていたのだ。
「どうだ、実感できたか?」
「え、ええ。今の速度に追いつけるとは思ってませんでした」
「速さだけでなく、筋力も付いてる筈だ。雪掻きを散々やってただろう」
サークヤはそう言われて手を見る。
確かに雪掻きは全身を使ってやるので良い運動になる。
その事に気付かされて漸く実感するサークヤ。
「まったく。言われなきゃ分からんとは面倒な奴だ」
呆れるテリオ達大人組であった。
サークヤが里に来て既に4ヵ月が経っていた。
その間の成果だろう。
里は既に降雪のピークは過ぎ去り、徐々に積雪も減ってきている。
もうじき春へと移り変わるだろう。
サークヤ達は雪が消える頃には里を出る予定である。
それまで稽古は続く。
あとどれだけ腕が磨けるのだろうか。
そんな事を思い、明日からの稽古を楽しみにするサークヤであった。




