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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-37 大地は生きている?

「で? 懐刀の出来はどうなんだい?」

「ああ、俺が知る刀の中でも最高の出来だ。これまででも最上級に値するかもしれんな」

「ほう、それほどなのかい」


 タカエとタリオのやり取りを聞いていたサークヤが、えっ! と声を上げる。

「なんだ、サークヤはあれに何も感じなかったのか?」

「い、いや。打ってるうちに何となく凄いなとは思いましたけど、此処ではこれが普通なのかと」

「ふむ、何かを感じてはいたという事かい。テリオたちは本当に良い巡り会わせをしたんだな。そう思わないかい、タリオ」

 タカエとタリオがうんうんと頷くが、サークヤはえっ!? っと目を白黒させる。

 しかし、よく考えればそうだ。

 たまたま偶然、異世界に転移して早々に熊に襲われそうになった所を助けられたのが、遙か昔に異世界転移してきた同郷の者の末裔だったというのだから。

 それも初めて刀鍛冶を手伝わせれば、打った懐刀が最高の出来だと言う。

 これだけの巡り会わせが他にあるだろうか。


「でも、何か感じたという事は、アンタもこの地に歓迎されているのかもしれないねぇ」

 サークヤが、その言葉の意味がよく分からず首を傾げる。

 里の者には認められたと言うのに、この地に歓迎されているかもしれない(・・・・・・)とは何とも妙な……と思っているとタカエが続ける。

「我ら里の者はこの地の恩恵を得ている。この地と共存していると言って良いか」

 サークヤは何となくニュアンスは分かるが、よく分からないという顔をする。

「ふむ、まだ伝わらんか。ではこれでどうだ? この地は生きていて意志がある、と言えば伝わらんかの」


「意志が……ある? それってどういう……」

「この地を大切に扱えば恩恵を受け、ないがしろにすれば罰が与えられる。当り前な事ではあるが、それに対する大地の恵みというものは自然現象というには大き過ぎるのだ。余所では殆どの場所では年に一度しか採れない作物も、この里では二度取れるからな。里の周囲も含めて手入れは手間を掛けて行う必要はあるが、おかげで飢える事は無い」

 日本にいた頃にも大地は生きていると聞いた事はあるが、それとは何かが違うようにその言葉から感じた。

「それに、そういった力が強く働く時、大地に光が舞うんだよ」

「光? そういえば、シーナさんに光る鉱石があると聞いた事があります」

「ああ。それも似たようなものだが、大地の力とはまた少し違うのではないかな。あれはなんともよく分からん代物だよ」

 何となく分かりつつもまた分からなくなるサークヤは、異世界であるからと無理やり納得するしかないのであった。

「子供の頃はよく見たものだがな、年を取るにしたがって見えなくなってしまったよ。まあ、運が良ければアンタも光を見れるかもしれんな」

「僕にも見られますかね。見てみたいなぁ」

 まだ見た事のない光景を想像し、外に目を向けるサークヤだった。


「あら、サークヤ君。お婆ちゃんとの話は終わったの?」

「あ、はい。今終わりました」

「お茶でもしていく?」

「あ、はい。ありがとうございます」

 声を掛けたシーナの姉レイはサークヤの堅苦しい返事に苦笑しながら奥の部屋へ促した。

 が、そこには……


「あ~! 外の人だ~!」

「「ホントだ~!」」

 勉強が終わった元気娘三人が、お菓子を焼いて食べながら話をしていたようだ。

 紬家の次女キヨは鍛家へ遊びに行ったらしい。

「お邪魔だったかな?」

 と、サークヤが言うや否や……

「丁度良かった! サークヤ兄ちゃん、ここに座って!」

 トントンと空いた席に座るよう急かすチナに、サークヤがハイッと素早く正座した。

 条件反射のようなその動きに、レイは思わず噴き出した。

「クスクス。サークヤ君、お茶煎れるから待っててね。あなたたちも煎れ直す?」

「「「うん!」」」


 この里には日本茶に似たものがあった。

 先祖が里に自生していた木をコツコツ増やしたようだ。

 そういった日本に馴染みのある物は、この里に多々見受けられる。

 これも先ほど聞いた大地の恵みのお陰かと思い至るサークヤ。

「で、タカ婆ちゃんと何話してたの?」

「ああ、この里は大地の力に恵まれているって話を聞いてたんだよ」

 サキの問いに答えるサークヤだが……。

「「「へ~」」」

 何かパッとしない返事の三人。

「あれ? 光が舞うって聞いたんだけど……違うの?」

「あ~、時々ピカピカとする時あるね~」

「うん、あれがそうなの?」

「そういえば、何年も前にその光がすごくたくさん見えた時があったなぁ。何時だったっけ?」

 サークヤの問いにサキとチナが答えた後、ユナがそんな風に答えるが……

「知らないな~」

「小さな頃に見たような?」

 8歳組はそう答えた。


「ああ、あの時かな? 修家のオサムさんとハーファさんが里に帰ってきた年。確か6~7年前の事ね」

 お茶を持って入って来たレイがそう答える。

「私がマーヴィーと一緒に里へ帰ってきた時も結構光が溢れた年だったわね。もう10年近く前の話だけど」

「6~7年前だと、わたしたちまだ1~2歳か…… 覚えてない訳だ~」

 うんうんと頷く8歳組み。

「私は6歳か7歳の頃って事か。あの後ってそれ程光が溢れた事ってないよね」

 ユナの言葉に皆がそうね~と同意する。

「あれほどの光はこの里でしか見れないかもね。あれを見たらこの里から出たくなくなっちゃうかもね。私がそうだし」

 レイがそんな風に言うから、何れ里から離れるであろうチナやユナは残念そうに口を尖らせた。


「へぇ~、そんなにハッキリと見えるんですね。いよいよ見たくなってきました」

 サークヤは春には出て行くので、その機会は無いのかもしれないなと思いながらも、期待に胸をふくらますのであった。




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